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 前回、日本企業の設備投資がほとんど伸びていないということを指摘しました。前回の記事は下をご覧ください。

 しかし、2022年は、上向きとなっています。その中身をみてみましょう!

経済産業白書より

 その内容をみてみると、2022 年は、はん用・生産用機械や電気機械、自動車・同付属品、情報通信機械、鉄鋼業及びその他輸送用機械を中心に増加しています(下参照)。


経済産業白書より

 企業が設備投資を行う判断基準として、「好況である」(業況判断)ということと「設備投資が不足している」(設備判断)というものがあります。 下の製造業の調査では、2020年より21年に業況判断が良かったことが分かります。実際の投資は、判断の後に行われますので、時間のずれが生じます。設備判断も2020年より過剰感がなくなっています。


経済産業白書より

 設備投資で何が増えているか、見てみましょう(下)。人材育成とIT投資が増えています。これは日本企業が欧米に比べて弱かった部分です。

経済産業白書より

 次に大企業と中小企業の有形資産投資と無形資産投資の「有無」をみてみましょう(2022年

)。中小企業での無形資産投資の少なさが分かります。無形資産当地とは、知識・技術や人的資本などの「見えない資産」への投資のことであり、革新的資産投資(研究開発投資等)、情報化資産投資(ソフトウェア投資等)、経済的競争力投資(人材投資、経営組織改革投資等)から構成されます。

経済産業白書より

 無形資産投資が、総資産営業利益率へ好影響をもたらしているデータです。総資産に対してどれだけ利益が出ているかを示す総資産営業利益率(ROA:Return on Assets)が高い企業群を抽出して、全製造事業者と比較したもです。2019 年度と、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響があった2020 年度ともにROA 上位10%に属する製造業の企業は、2020 年度は2015 年度比で無形固定資産当期取得額が約8 割増加しているのに対して、全製造事業者では約2 割の増加にとどまっています(下)。

経済産業白書より

 以下は、無形資産投資の必要性を述べた内閣府の文章です。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/esr/esr_report/esr_037/esr_037_f.pdf

 最後に有形資産投資の内容をみてみましょう。2022年の対2020年比です。「老朽設備の更新・補強」、「生産設備の更新」といった設
備の維持更新が多くなっていますね。2022 年は 2020 年と比べて、システム化や DX 関連の設備投資に該当する「旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンス」、「DX 関連(工場の IoT 化等)」に加え、GX 関連の設備投資に該当する「脱炭素関連」が大きく伸びています。

経済産業白書より

 上で、企業が設備投資をする理由として「業況判断」「設備判断」を上げました。そのほか、利益を生む技術(DX)、新しい技術の登場(GX)なども挙げられるかもしれません。また、経営・幹部陣の若返りもあるかもしれません。現在の50代半ばより若い世代は、20代半ば前にパソコンを仕事で使い始めた世代です。情報技術に関する付き合い方が、上の世代とは根本的に違う可能性があります(またファミコン世代でもあります)。
 日本の企業の経営がドラスチックに変化する可能性も考えられます(続く)。

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