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 岡山県奈義町を視察させていただきました。奈義町は2019年の出生率が2.95となり、子育て支援策で注目を集めている町です。2005 年の出生率は1.4でしたので、奇跡の上昇ともいわれています(上の写真は奈義町HPより)。
 奈義町については、まず今回の文章では、奈義町のデータや少子化対策の年表的整理を紹介したいと思います。
 奈義町は面積が69.52平方キロ、人口が5751人、世帯数が2533(2023.1現在)のまちです。特色として、自衛隊の演習場があります。面積はまちの約2割です。那岐山という1200メートルの山のふもとにあり、江戸時代から伝わる横仙歌舞伎という芝居芸能も行われています。

 視察でレクチャーをしてくださった町の職員の方Kさんは、慣れた様子でした。90分以上、話を聞いていましたが、かなりキレる印象で、かつ親しみやすい方でした。
 Kさんはまず、「奈義町はだいたい年間90~100人が死亡し、50人出まれている。自然に人口減少している」と述べ、人口減少の課題の大きさを指摘しました。奈義町の年間の死亡、出生数は、ふじみ野市で月の数(平均)とほぼ同じです。

 奈義町の方がおっしゃるには、まちの転換点は、平成14(2002)年12月、隣接自治体との合併の意思を問う住民投票を行い、合併しないことを選択したこととされます。当時、人口減少高齢化のすうせいにどう立ち向かうか、ということが課題で、住民で話し合う機会をつくり、そこで、「まちにはこどもが必要だ」とのコンセンサスを得たということでした。


奈義町レクチャー資料より

そして2003年に施策、事業を企画、予算案化し、2004年4月から、①乳幼児及び児童への医療給付事業の拡充、②出産祝金交付事業、をそれぞれ開始します。

 この後は、奈義町が約20年間、行ってきた子育て支援の施策を年表形式で紹介します。施策の特徴について、視察でレクチャーしてくださったKさんは「どこにでもある施策ですが、あえて挙げれば、生まれてから大学まで、コンセプトは切れ目なく」とのこと。支援事業は、長く、広く継続するという考えだそうです。町は、子育て支援策で、国や県の補助金に頼らない単町事業が多く行っていますが、当初、1.5億円の予算枠を絞り出し、支援策にあてているそうです(町の年間予算は約50億円)。

 2004年から始まった、乳幼児及び児童への医療給付は、最初は小学生の入院費についてでしたが、段階的に拡充し、2012年には、高校卒業までの医療費が無料となっています(単町事業:これは国や県の補助金なし事業ということです)。出産祝い金は2004年の当初、第3子以降に10万円の給付でしたが、2016年から第1子に10万円、第2子に20万円、第3子30万円となりました(単町事業)。
 2006年4月には、不妊治療助成事業を始めます。これは、県の助成をひいたものの二分の一以内で上限5万円を通算5年間、支給しました。その後、上限額は20万円となっています(単町事業)。
 2007年4月、保育料多子軽減等事業を開始しました。保育料を軽減するもので、現在、第1子は国基準の55%、第3子は無料となっています(単町事業)。
 同月、高等学校等就学支援金交付事業を開始しました。学校入学時に5万円が支給されました。2012年に一年に6万円が3年間、現在は年24万円が3年間となっています。これは、高校への通学バス代に相当する額です(単町事業)。
 同月、なぎチャイルドホームを開設します。なぎチャイルドホームというのは、子育て等支援施設というくくりで、主に就園前のこどもと親御さんを対象にしているとされていますが、誰でも、いつでも、これる場所で、子育ての悩みなどが相談できたり地域の情報が集まる場所です。子育て世帯と地域の方の交流の場としても運営されています。

 2008年、合計特殊出生率が2.03となりました。その後、2以下となりますが、2012年に2.11、2014年に2.81、2017年からは2以上となり、2019年は2.95となりました。
 2012年4月、町は子育て応援宣言をおこないました。

 条例のように拘束性はありませんが、町民や町職員の意識には影響があるものと考えられます。大きな看板、庁舎の垂れ幕、ポスターなどの視覚効果が期待されます。
 

奈義町HPより


 同月、妊娠はするけれど、流産を繰り返す不育症に対する不育治療助成事業が開始されました。1年間の治療費で上限30万円を、通算5年間支給します。 
 2014年4月、奨学育英金を開始しました。経済的に就学が困難な大学生等に対して、年額36万円を無利子で貸与します。返還にあたっては奈義町に居住している間は返還義務が停止となります(単町事業)。
 2016年4月、家庭保育を支援する制度として、全国でも珍しい在宅育児支援金事業が開始されました。満7か月から4歳までが対象で、保育園を利用せず、自宅で子どもの世話をされている世帯には月1.5万円が給付されます。
  2017年4月、奈義版ワークシェアリングと言えるしごとコンビニ事業が開始されました。主に、お母さん方が、ちょっとだけ働く、働けるサービス「しごとコンビニ」は、社団法人が運営しています。法人が、企業、個人、行政のちょっとした仕事を集約し、登録した条件の合う個人がそれぞれ働くという仕組みです。かつてあったシルバー人材センターは、しごとコンビニに集約されたそうです。現在、登録者は約250人です。この財源は、地方創生交付金が活用されたそうです。なお、しごとコンビニの事業は、財務省の下のレポートでも紹介されています。
https://lfb.mof.go.jp/kyusyu/content/000281566.pdf




  2020年4月、子育て家庭食育支援事業が開始されました。これは、国のコロナ対策費を使ったもので、給食費の負担がおおむね半額となりました。
  2022年4月、子育て家庭学校教育等支援事業が開始されました。小中学校の教材費が無償となりました(コロナ対策費)。

 代表的なものを挙げましたが、詳しくは、奈岐町の資料(国の地方創生本部より)をご覧くださいませ(下のURL)。次回は、具体的な施策に迫ってみます!

https://www.chisou.go.jp/sousei/about/chiikiapproach/onlinemeeting/r04/pdf/221216_0202_nagi.pdf
 


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