【質問主意書と政府答弁書】いわゆる「AV新法」におけるAVの法律的な位置付け等に関する質問主意書 浜田 聡

質問主意書


質問第六号

いわゆる「AV新法」におけるAVの法律的な位置付け等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年十月四日

浜田 聡

       参議院議長 尾辻 秀久 殿



   いわゆる「AV新法」におけるAVの法律的な位置付け等に関する質問主意書

 令和四年六月二十三日に「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(以下「AV新法」という。)が施行されたが、同法の運用に不明確な点が多く、現在同法に関連する事業を営む者の事業継続に深刻な影響が出ている。

 そこで同法の運用及び同法第二条第二項に定めるところの「性行為映像制作物」(以下「AV」という。)の法律的な位置付けについて、以下質問する。

一 そもそもAVを制作、販売する事業は合法な事業となりうる事業か。

 適切なプロセス・合意形成を経てAVを制作、販売する事業は、合法な事業と考えるが、政府の見解如何。

二 AVを制作、販売する事業は日本標準産業分類上、どの分類に該当するか。

三 AV新法第七条第一項では、出演者のAVへの出演に係る撮影について、「当該出演者が出演契約書等の交付若しくは提供を受けた日又は説明書面等の交付若しくは提供を受けた日のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない」としている。この「一月」という期間はどのような合理的な根拠によって算定されたものか、根拠を示されたい。

 なお、仮に政府として合理的な算定根拠を把握していないのであれば、算定根拠が特段無い旨答弁されたい。

四 AV新法第九条では、出演者のAVの公表について、「当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない」としている。この「四月」という期間はどのような合理的な根拠によって算定されたものか示されたい。

 なお、仮に政府として合理的な算定根拠を把握していないのであれば、算定根拠が特段無い旨答弁されたい。

五 AV新法はいわゆる議員立法によって立案、制定された法律であるが、同法の条文案作成作業に政府職員が職務として関与した事実はあるか。

六 いわゆる「カップルAV」など出演者全員が出演と制作公表業務を兼ねて共同の事業としてAVを制作、販売した場合、原理的に出演者と制作公表者との間で出演契約を締結することは不可能となる。この場合、AV新法第四条の適用関係はどうなるのか。

七 AV新法に基づく契約に係る各種義務を全て満たして出演者と制作公表者が出演契約を締結した後に、出演者及び制作公表者等が双方合意の下で契約内容を変更し、出演契約後一か月以内の撮影や撮影後四か月以内の制作公表を行った場合、当該合意に基づく契約変更、撮影及び公表行為にはAV新法に基づく刑事罰が適用されるか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。


答弁書


内閣参質二一〇第六号
  令和四年十月十四日
内閣総理大臣 岸田 文雄

       参議院議長 尾辻 秀久 殿

参議院議員浜田聡君提出いわゆる「AV新法」におけるAVの法律的な位置付け等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出いわゆる「AV新法」におけるAVの法律的な位置付け等に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「AVを制作、販売する事業」、「合法な事業となりうる事業」及び「適切なプロセス・合意形成」の意味するところが必ずしも明らかではないが、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号。以下「法」という。)第三条第三項においては法のいかなる規定も「法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈してはならない」とされており、同条第四項においては「法令において禁止され又は制限されている性行為その他の行為を行うことができることとなるものではない」とされている。

二について

 お尋ねの「AVを制作、販売する事業」の意味するところが必ずしも明らかではないが、性行為映像制作物(法第二条第二項に規定する性行為映像制作物をいう。以下同じ。)の「制作」が主として映画(アニメーションを除く。)の制作を行う事業又は制作及び配給の両者を行う事業並びに記録物、創作物などのビデオ制作(アニメーションの制作を除く。)を行う事業に含まれる事業であるとすれば、統計法(平成十九年法律第五十三号)第二条第九項に規定する統計基準として定められた日本標準産業分類(平成二十五年総務省告示第四百五号)における大分類「情報通信業」の中の中分類「映像・音声・文字情報制作業」の中の小分類「映像情報制作・配給業」の中の細分類「映画・ビデオ制作業(テレビジョン番組制作業,アニメーション制作業を除く)」に、性行為映像制作物の「販売」が有体的商品を購入して販売する事業に含まれる事業であるとすれば、日本標準産業分類における大分類「卸売業,小売業」の中の中分類「その他の卸売業」の中の小分類「他に分類されない卸売業」の中の細分類「他に分類されないその他の卸売業」又は大分類「卸売業,小売業」の中の中分類「その他の小売業」の中の小分類「他に分類されない小売業」の中の細分類「他に分類されないその他の小売業」にそれぞれ分類されると考えられる。

三について

 お尋ねの「合理的な根拠によって算定された」期間の意味するところが必ずしも明らかではないが、性行為映像制作物の撮影が出演者の心身及び私生活に重大な影響を与え得るものであることに鑑み、出演者が撮影の対象となることについて検討するとともに、法第十七条の規定により整備した体制における相談に応じる機関(以下「相談機関」という。)を含め、他者に相談するために必要な期間として定められたものと認識している。

四について

 お尋ねの「合理的な根拠によって算定された」期間の意味するところが必ずしも明らかではないが、性行為映像制作物の公表が出演者の心身及び私生活に重大な影響を与え得るものであることに鑑み、出演者が当該性行為映像制作物を公表されることについて検討するとともに、相談機関を含め、他者に相談するために必要な期間として定められたものと認識している。

五について

 お尋ねの「同法の条文案作成作業に政府職員が職務として関与」の具体的に意味する範囲が明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、法第二条第四項に規定する出演者であることをもって、同条第七項に規定する制作公表者に該当しなくなるものではないと認識している。

七について

 お尋ねについては、個別具体的な事情により判断すべき事柄であり、御指摘の与件のみをもって一概にお答えすることは困難である。

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