スパイク・リーとBlack Lives Matterについてのメモ

アメリカ各地でもほぼ日付をまたいでしまったタイミングではありますが、Juneteenthを記念して、下記のツイートでも言及いただいた「「正しい映像」を超えて——スパイク・リー作品における警察と人種」(初出:「ユリイカ」2019年5月号)の内容を公開します。

こちらの拙稿では、黒人に背後から襲いかかる白人警官とスパイク・リー作品における同胞を捉えた正面ショットの関係について論じました。

執筆時にはスパイク・リーのSNSをチェックしていなかったため議論できなかった点を一つ補足しておきます。「ユリイカ」同特集で吉岡正晴氏も指摘する通り(p.177)、彼は2014年7月に起きたエリック・ガーナー事件を受け、同年12月に事件の映像を自作『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)でRadio Raheemが警官に羽交い締めにされ殺害されるシーンと掛け合わせた動画を各種SNS上にアップし、話題となりました。

当該動画はすでに削除されていますが、同じような姿勢で殺されてしまった二人のフィクションと現実の映像を、D.W.グリフィスが発明したクロスカッティングの技法を用いてモンタージュする手法は、小林雅明氏も強調する通り、学生時代の自主制作短編 「The Answer」(1980)(抜粋はここで見ることができますhttps://www.youtube.com/watch?v=wfxCcePNBw4)以来、常にスパイク・リー作品の根幹にある、KKK再興のきっかけともなった「グリフィス『國民の創生』(1915)をリメイクし、それに反論しうる映画を制作する」(p.123)という姿勢を反映したものでしょう。当時すでに始まっていたBlack Lives Matter運動とも呼応したこの動画は、今年5月のジョージ・フロイド事件を受けて、再び新たな形で公開されることとなります。

「3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd」と題されたこの短編は、Garner氏に加え、Floyd氏が警察に殺害された痛ましい映像を同様に自作とクロスカッティングする形で編集されたものです。

おそらく、背後から同胞を襲う白人警官が存在し続ける限り、彼は作中で正面から黒人たちをカメラに捉え続けることをやめないでしょう。ここでは詳述できませんが、私見では、新作『ザ・ファイブ・ブラッズ Da 5 Bloods』においても、「背後と正面」の対比はある重要な意義を有しているように思えます。また、Youtubeでの『13th』無料公開も話題となっている、後進の女性監督エイヴァ・デュヴァーネイの『僕らを見る目 When They See Us』も、明らかにスパイク・リー作品を踏まえた上で警察による黒人たちへの視線を問題化しているように見えました。

日々めまぐるしく変化するBlack Lives Matter運動の進展とともに、映像を通じた抵抗のあり方についても引き続き注視していきたいと考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?