いつでも木に登れる服
洋服を選ぶのが苦手だ。年相応か、と聞かれると駄目駄目だと思う。
朝、天気予報で気温をチェックして、洋服の枚数と生地の厚さを決める。そんな感じで決めると、だいたいシャツとジーパンで上に何か羽織る感じになる。
仕事でちゃんとした格好をしないといけない時はスーツを着るけれど、そう言う時以外はだいたい大学生みたいな格好だと思う。実際服装のせいでよく学生に間違われるし、母親にも「もうちょっと年相応の格好を」と言われることもある。けれど、いまいち「年相応」の服装がわからないのだ。
ファッションには興味ある。ブランドには詳しくないが、銀座や新宿の伊勢丹をぶらぶらしたりするのは楽しい。見るのは好きだ。けれど実際に自分が着るとなると、大して興味が持てないのだ。
服を購入する基準はどこにあるだろう? サイズや素材、デザインや縫製。人によって様々だと思うが、個人的には自分のライフスタイルにあっていることが一番だと思う。ウインドウ越しに良いなと思った服でも、それを着た自分がうまく想像できないことが多々ある。私のいつもの生活に、私自身に、その服はあっているのだろうか。私はそればかりを考えてしまう。
そうして最終的に購入するのは、大抵綿のティーシャツやパンツだ。動きやすくて、洗いやすくて(アイロンはかけたくない)、汚したり破いても落ち込まないくらいの価格。それにポケットがたくさんあると嬉しいし、あと色が綺麗だといいな。首回りは大きい方がいい。
スカートは涼しいのが利点だけど、スカートでも御構い無しに走ったりするので、大人になってからは滅多に履いていない。昔はよくパンチラしていた。多分今でもしてしまう。
ところで、私の一番の趣味は多分散歩だ。
通勤も同じ道ばかりだとつまらないので、違う道を探してみたりする。とりわけ細い道に入り込むのが好きだ。
この前は大学病院の塀の一部に、小さな、屈めば通り抜けられそうな扉と、そこに至る脚立が置いてあるのを見つけて、嬉々として潜ってきてしまった。見事にズボンを汚したけれど、ジーパンだから気にならない。
そうして汚れたズボンを見て、やっぱり私にはまだ「年相応」の格好は無理だな、と思った。
いつも唐突に走りたくなったり、どこかに登りたくなったり、探検したくなったりする。全然我慢できない。だけどなんだかんだ言って年齢的にはいい大人なので、ちゃんと誰もいないことを確かめてから、走って見たり、歩道のブロックに乗っかったり、裏路地に侵入してみたりする。
きっとこれが我慢できるようになったら、ようやく大人っぽい格好もできるようになるのだろうと思う。
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