鳥居潜らない派

 皆さんのお知り合いの方の中に何人ぐらいこの『鳥居潜らない派』の方がいらっしゃいますか? 知りませんよね? そもそも一緒に神社に行きでもしない限り知らない事でしょう。

 私が知り得る限りでは、お一人です。他に聞いた話では、沖縄の方で潜らない派の方が身近にいる人がいました。私が唯一直接知る、そのお一人はお家がそういうお家で、お母様に言われたそうです。

 皆さん山人という人達の事を聞いた事がお有りでしょうか? ご存知でない方も多いと思います。柳田邦男なんかが好きな方はお分かりかも知れませんね。かく言う私もあまり知りません。自分で調べた事もありません。以降は私が読んだり、聞いたりして勝手に思った、妄想です。与太話と思って眺めてください。

 今では日本はアイヌの方や沖縄の方以外は単一民族だという考えが一般的な様ですが、私はこれがあまり好きではありません。例えば教科書に載っている坂上田村麻呂は蝦夷を討伐に行っています。蝦夷は朝廷に従わない人達の事です。彼らは昔からの狩猟採集生活をしていた様です。風土記には長脛彦として出てきます。すねが長いなんで今では褒め言葉ですが。そんな彼らはライフスタイルが違うので従わないのが当たり前だと思うのですが、日本人、ここでは大和人とでも呼びましょうか、彼らは農耕が一番! という強い信念で狩猟採集生活者を迫害して同化、取り込んでしまいます。

 しかしこの狩猟採集生活者、山人は面白くありません。大和人が強要する神道が嫌いです。だから表向き神道の神社を作り、山人の神を祀ったり、神社の鳥居を潜らない様にしたのではないでしょうか?

 これは私の当てにならない妄想と『鳥居潜らない派』の人の話を聞いて私が考えた事です。根拠はありません。でも沖縄にも独自の神様が居られるそうなので似たようなものではなのでしょうか?

 まあ、何が言いたいかというと『鳥居ってやっぱ特別なんじゃね?』って事です。

 さて、枕はこれくらいにして本題です。

 私の唯一知る『鳥居潜らない派』から聞いた話。

 その人は物凄く臆病でした。どのくらい臆病かというと、当時私が一緒に働いていて『開店前の店内でカーテンの向こうに女の人の足が見えた気がする』と言ったら、かなり怒るレベルです。

「トイレいけなくなる!」

「シャワー浴びれなくなる!」

 そう言われた気がします。

 そして何故そんなに臆病なのか、の話から、件の鳥居を潜らない話と幾つかのエピソードを聞きました。霊感ある人に言われてお祓いに行ったら何十人と憑いてると言われたとか、その一つが、呼ばれた話です。

 普段から臆病なその人は暗い夜道を一人で歩いたりするのが大嫌いです。極力避けるそうです。それなのにその日はどうしても『行かなければいけない』と思ったそうです。

 いつも通り過ぎるだけの公園に車を止めたその人は何故か懐中電灯持参で、深夜の公園の林に入って行きました。一人で。

 信じられない話です。肝試しだって一人ではしないでしょう? だって一人では面白くないから、人と一緒に怖がるのが楽しいのに。

 それでもその人は行きました。不思議と迷わなかったそうです。

 そしてある木にぶら下がっている人の足を見てしまったそうです。

 急いで警察に連絡して、当然聞かれました。『何故?』と答えようがなかったそうです。そう、『呼ばれたような気がした』だけだから。知る筈のない事を知っていたその人は、少し警察から疑われたりもしたそうですが、そういう事もあると言われたそうですよ。

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