士魂洋才 明治伊万里の粋 その2

深海平左衛門喜三の総領、墨之助のこと。

「色絵龍に珊瑚双耳付飾瓶」深海墨之助作 明治初期

海内一の名工、深海喜三平左衛門の二人の息子、墨之助、竹治も揃って名工であった。

墨之助は自分の技量は既に中国磁器を凌駕していると思うが、実際渡航して確かめたいと、密航は御禁制だったので周囲のものは大反対した。

慶応三年と思われるが、彼は振り切って密かに長崎に向かった。
それを察した竹馬の友であり、明治9年フィラデルフィアの万国博覧会にも共に参加した、後に香蘭社を離脱し精磁会社を共に創立する手塚亀之助は彼を追い、連れ戻した。

墨之助は熱血漢で感情を押し殺すことができなかった。
時に刀を振り回す事もあった、と末裔の方から聴いたことがある。

この瓶は中国磁器の名器に優るものを目指した彼の作と見た。

父である喜三の銘款が記されてはいるが、名門深海家の総領だったので受け継いだと思われる。

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