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小田急VS京王 多摩の戦い

  今からちょうど2年前、某鉄道サイト用に書いた原稿。レギュラーの仕事が次々になくなり、これからは鉄道ライターとしてやっていくぞ! と意気込んだ力作だったのですが日の目を見ず。蔵出しします。

(※運賃、時刻表などは2018年4月現在のものです)

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挑戦状をたたきつけた小田急

 2018年3月17日に小田急小田原線の代々木上原-登戸間の複々線化が完成。ダイヤ改正が実施されました。
 工事開始から30年に及ぶ小田急の悲願である複々線の完成により、線路容量は大幅に緩和され、ラッシュ時のノロノロ運転がなくなり、定時性がアップ。新宿からの所要時間は最大で登戸が7分、新百合ヶ丘が9分、町田が12分も短縮されることになりました。
 
 今回のダイヤ改正では新宿-小田急多摩センター間も最大11分所要時間が短縮されることになりましたが、それに伴い勃発したのが京王VS小田急の「多摩の戦い」です。
 新宿-多摩センター間は小田急多摩線と京王相模原線が競合していますが、これまで乗り換えを含めると50分近くかかる小田急と、特急で40分程度の京王では所要時間に差があり、運賃も京王のほうが安い(小田急370円、京王340円)ため、京王の圧勝状態。小田急の多摩線は線内折り返しの「支線」と化し、都心へ直通する多摩急行も東京メトロ千代田線直通。対新宿ということでは直接対決を避けていました。2016年の多摩センターの1日の乗降客数で比較しても京王が8万7551人に対して小田急は5万585人、約3万7千人の差がありました。

 しかし今回の複々線完成によるダイヤ改正で所要時間短縮が実現すると小田急は千代田線直通の多摩急行を廃止し、平日朝の上りの多摩線に新宿行の直通、通勤急行を、夜の下りにも直通の快速急行を設定。新宿-多摩センター間で京王に挑戦状を叩きつけたわけです。

京王は値下げと有料ライナーで対抗

 となれば京王も黙ってはいません。
 小田急に先立ち2月22日にダイヤ改正を実施。京王では初となる有料(400円)の座席指定列車「京王ライナー」を京王線とともに相模原線にも設定しました。これは通勤客に少なからず需要のある「ゆっくりと座って帰宅したい」という層を取り込もうとするもの。以前、小田急でもこの区間に「ホームウェイ」を運転していましたが、京王から大きくシェアを奪うほどの効果はなく2016年に廃止されています。時間と運賃で優位に立つ京王が打った攻めの施策がどういう結果になるのか? 見ものです。

 さらに小田急のダイヤ改正に合わせて3月17日には相模原線の運賃値下げを実施。相模原線ではこれまで建設コストを運賃に加算してきましたが回収が進んだため、というのが表向きの理由ですが、小田急を意識しているのは間違いないでしょう。新宿-京王多摩センター間は20円値下げとなり320円、小田急との差は50円となりました。僅かなようにも思えますが、月額の通勤定期にすると京王11930円に対し、小田急は12940円。その差は1010円になります。

利便性を比較してみると

 運賃では京王の優位は揺るがないように見えますが、利便性はどうなのでしょうか?
 通勤時間帯のダイヤで比較してみましょう。

時刻表-1

 平日6~8時の多摩センター。小田急は新宿行の直通、通勤急行が9本設定されています。対して京王は速達の新宿行の特急3本、準特急4本。近接した時間帯で比較すると6時39分発の小田急通勤急行、6時40分の京王特急がありますが、ともに新宿着は7時15分。8時10分発の小田急通勤急行、8時09分発の京王準特急も新宿着はともに8時50分で、互角の戦いとなっています。
 通勤時間帯に並べば座れる始発列車の本数はアドバンテージになりますが、小田急は通勤急行6本、京王は特急、準特急計3本。この点では小田急の方が選択肢が多くなっています。

 帰宅時の新宿発も比較してみましょう。
 小田急は18~22時台まで毎時2本、23時台に1本、多摩線・唐木田行の通勤急行を設定しています。京王は18~21時台の早めの時間帯に毎時3本の相模原線・橋本行の特急を設定し、遅い時間帯の相模原線直通は有料の京王ライナーでの対応となっています。
 近接時間帯での比較は両線に18時32分発の列車がありますが、多摩センター着は小田急快速急行が19時09分、京王特急が19時01分で直接対決は京王のほうが8分ほど速くなっています。

 小田急快速急行、京王特急、準特急はともに通勤型のロングシート車両で乗り心地には差はありません。多摩センター、新宿ともに始発で座っていけるということになれば、利用者はどちらを選ぶのか? 小田急VS京王の「多摩の戦い」に要注目です。
 

 

 


 

 

 


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