見出し画像

多摩地名の由来 御殿峠

画像1

 御殿峠は八王子市片倉と町田市相原、旧国名で言えば武蔵と相模の境となる、標高213mの御殿山にある峠です。古道は鎌倉街道の跡で、平行する新道は国道16号線。さらに7月から高速道路無料化の対象となった、八王子バイパスも通っており御殿山料金所があります。
 江戸時代の頃、この峠は杉山峠と呼ばれていたそうです。それが御殿峠と呼ばれるようになったのは、明治の中頃のこと。絹織物で儲けた八王子の機屋の御殿があったからとも、峠の頂上に田んぼがあり新田に対する古田(こでん)が変化したからとも言われています。
 今の名で呼ばれるようになった頃には歴史的事件の舞台にもなっています。明治17年(1884年)8月10日、繭や生糸の値が暴落し、困窮した農民たちは、八王子の町を見下ろすこの峠に集結。大規模な蜂起にはならなかったものの、その後の多摩地区で起きる「困民党運動」の引き金を引くことになりました(御殿峠事件)。
 また御殿峠には『峠のきつね』という昔話があります。御殿山の頂上に旅人に評判の茶屋があり、侍に化けたキツネが、山で集めた木の実やきのこを売った金で、名物のふかしたてのまんじゅうを買いに来ると言うお話しです。人々の往来が多かった国境の峠ならではの昔話と言えるでしょう。(『よみうりSunTAMArea』2010年8月号)
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?