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関西の2つの終着駅を訪ねて(和田岬・妙見口)

ホテルで目が覚めると6時45分だった。

金曜日、仕事で兵庫に出張することになり、思いのほか伸びて神戸に泊まることにした。翌日の土曜日、せっかくなので兵庫の未乗線区を乗りつぶしてみようと思う。

三ノ宮からJRに乗り、兵庫駅へ。ここから山陽本線の支線である「和田岬線」が分岐している。この路線は関西でも知っている人はほとんどいないのではないかと思われる、わずか一駅しかない2.7キロの路線だ。しかし、この路線に乗ろうと思うとなかなか一筋縄ではいかない。時刻表を見ると一目瞭然、朝と夕・夜しか列車がなく、昼間は走っていない。完全に通勤に特化した路線だ。しかも、今日は土曜日だからまだ朝に6本、夕方以降に6本の列車があるが、これが日曜・祝日になると朝に1本、夕方に1本だけとなる。乗りつぶし泣かせの路線なのである。

本線とは一段低いところにある和田岬線のホームから

山陽本線のホームとは一段低いところにあるホームで待っていると、6両編成の青い103系がゆっくりと入ってきた。昭和の国鉄電車の代名詞でもある103系が走る路線は、片手で数えられるくらいまで減っている。モーターをうならせて折り返しを待つ列車には、4、5人の乗客。そのうち半分ほどはカメラを片手に車内や駅を撮影している。

鉄道車両の工場を右手にゆっくりと左にカーブしていくと、少しずつ速度を上げる。途中で運河を渡るが、この橋は「旋回橋」という珍しいもので、今では固定されているが、列車が走らないときは90度回転させて、船が航行できるようになっている。しかし、列車に乗っていると、その橋を渡ったかどうか一瞬のことなので分からない。

列車がめったに来ないからか、どこか線路際の雑草も背丈があるように感じる終着の和田岬駅に到着。目の前には三菱重工の工場があり、ここへの通勤のためだけの路線と言える。

和田岬駅。奥に見えるのが三菱重工の工場

しかし、和田岬には海岸線という神戸市営地下鉄の路線も通っていて、そちらは日中も高頻度で電車が走っている。そこも乗ったことがなかったので、いったん始発駅の三宮・花時計前駅に戻る。そこで朝食を済ませ、折り返して終着の新長田へ。新長田からは、もう一つの市営地下鉄の路線である西神・山手線に乗り換える。この路線は地下鉄であるが、名谷あたりから地上に出て、ニュータウン路線のような雰囲気になる。終着の西神中央から引き返し、新神戸から六甲山を超える長いトンネルを抜けて谷上に出た。ほとんど修行のようなものである。

谷上駅で反対のホームにやってきた三田行きの神戸電鉄の電車に乗る。山の中を走っているが、山裾には住宅が密集している。三田ではJR福知山線に乗り換え、宝塚に向かう。この区間は意外と山岳区間で、途中の武田尾駅はトンネルと橋にまたがってホームがある。

レトロな雰囲気の神戸電鉄の車両(三田駅)

宝塚から阪急宝塚線に乗り換える。この路線もくねくねとカーブや勾配が多い。先頭の運転席の後ろの席に乗ったので、その変化を楽しんでいると、川西能勢口に到着。反対ホームにいた能勢電鉄の電車に乗り換える。

能勢電鉄の電車は見た目は阪急と同じマルーン色だが、窓のカーテンには街並みの絵柄が描かれていてよりローカル感がある。複線で本数も多いが、駅はこじんまりとしていて、トンネルや橋などで山を登っていく山岳路線の顔も持つ、鉄道模型の世界を現実に持ってきたような路線だ。この能勢電鉄はY字の路線で、山下からニュータウンとして開発された日生中央に伸びる路線と、大阪府との府県境を越えて豊能町の妙見口まで行く路線がある。

車窓に溶け込む能勢電鉄の車両のカーテン

たまたま乗ったのは日生中央行きだったので、そのまま日生中央まで行き、折り返して山下から接続していた妙見口行

まるで鉄道模型の世界から抜け出してきたような妙見口駅

きに移った。路線の右側は住宅地が広がっているが、反対側は山林が広がる。勾配やカーブもきつい登山電車だ。

これで兵庫県内に残っていた未乗線区、JR和田岬線2.7キロ、神戸市営地下鉄海岸線7.9キロ、西神・山手線22.7キロ、能勢電鉄14.8キロを乗りつぶすことができた。しかし一方で、9月に九州新幹線長崎ルートが暫定開業したため、残存の未乗区間はかえって伸び、以下のような2歩進んで3歩後退したような状況だ。

・未乗距離 1100.6キロ
・残存距離比率 4.0%

兵庫県の残存線区を片付けたものの、九州新幹線長崎ルートの開業で未乗区間は増えている

終点の妙見口は、妙見山への入口で、手狭ながら駅前に土産物屋が広がる。イノシシが名物のようなので、イノシシ肉を使ったあらびきのフランクフルトとハイボールで、とりあえず祝杯をあげる。


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