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BTS:花様年華『血、汗、涙』の物語を書いてみる


花様年華『血、汗、涙-Japanese Ver.-』のMVについて、映像などから物語にしてみたシリーズです。


こちら↓のMVの物語です。



今回、複数に分けて書いておりまして、下記のお品書きで言うと、③にあたります。

① 説明
② 韓国語(オリジナル)バージョンの物語
③ 日本語バージョンの物語
④ 韓国語バージョンの疑問点
⑤ 日本語バージョンの疑問点
⑥ 疑問点の答え探し



なので、まだ①の説明をご覧になっていない方は、もしよろしければこちら↓の説明記事からご覧いただけると良いかな、と思います。





お時間のない方に少し説明すると、韓国語のオリジナルバージョンに輪をかけて謎が多く、いろいろな考察も多いMVですよね。


とらえ方によって、いろいろ楽しめるMVでもあると思うので、もし、他の人の考えによって先入観を刻みたくない、という方は、もっとじっくりとオリジナルの作品を楽しんでから読んでいただくことを強く強くおススメします。


想像部分・創作部分もかなり多くなっているので、楽しみを妨げるものになる可能性もあることを懸念しております。



全然平気!むしろ興味ある!、すぐ忘れるから問題なし!という方はもしよろしければ、お進みくださいませ。


なお、引用部分は歌詞か、MV内の文字情報となっております。





では、始めます。






**************






現実世界に生きていて、ひとつひとつの「瞬間」に気を留めていたら気が狂うだろう。
 
 
 
 
 
あまりに複雑で、面倒で、もうこのまま目覚めたくないと思うかもしれない。
 



それでも眠ることには限界があって、どんなに深い眠りに落ちてもやがて目覚める時が来る。



良い目覚め、悪い目覚めがあるかもしれない。



それでも目覚めることで初めて知ることがある。
 
 
 
 
 
 
「僕」は生きている。
 
 
 
 
「僕」は存在する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙
捧げる今も



ジョングクは起き上がり、静かに目を開いた。
 
 
 
起き上がると重力を感じる。



目を開けば、世界が見える。

 
 
あぁ、そうか。
 
 
これは世界の重さだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

溢れる ただただ…


ジミンは閉ざされた部屋で天井を見上げた。
 
 
その手には真っ赤なリンゴ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙
この想いが…


テヒョンは見慣れたキッチンを後にする。




誰も気に留めないだろう。
 
 
 
誰にも「僕」は見えはしない。
 
 
 
いや、見えないことにしたいのかもしれない。





 
あぁ、何だかだるいな。





溢れる ただただ…


目覚めるのが早すぎたかな。
 
 
 
もう少し眠っておけば良かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
ジョングクが起き上がったベッドには、羽の痕。
 
 
 
時として、あるはずもなく、知る由もなかったことに出会い、思いもよらない真実と対峙することがある。
 
 
きっと、今がその時。
 
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙


ソクジンは一枚の絵と対峙していた。
 
 
 
 
僕は、この絵を知っている。
 
 
 
神様に背いて、羽を奪われ、堕落した叛逆天使の話。



他の天使たちは、羽を奪われた叛逆天使をさらに追いかける。
 
 
 
 
 
 
 
そのあとは、どうなったんだろう。



ソクジンがオペラグラスをのぞき込む。





ああ、「君」だね。


良く知っている。
 
 
美しく大きな羽だ。
 
 
その羽で飛び立つのかい?






「後ろの正面、だーれだ?」



この血、汗、涙と



いつも誰かが僕の目を塞いだ。
 
 
 
それを知っていたけれど、知らないふりをしていた。


いいんだもう。
 
 
僕は目をそらすことをやめたから。
 
 
 
僕は囚われているわけでも、支配されているわけでもない。
 
 
 
 




望めばそこから離れられる。
 
 
もう、「君」の手は借りない。
 
 
 
 
 
 
 

昨日、今日、明日も



僕は行くよ。
 
 
ごめんね。






「君」を置いて、「僕」は行く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

すべて君のものだと


しっかりと前を見て、自分の足で駆け抜けたら、この暗闇は抜けられるはずだから。
 
 
 
 
 
 
僕は行くから。




君を置いて行くから。
 
 
 
 
 
 
 
 

知ってるさそんな事など



 
 
知っていたよ。
 
 
いつか、「君」が「僕」から離れること。
 
 
 
何一つ、「僕」のものではないことを。
 
 
 
 
 
それでも、変わらないことがある。
 
 
僕は君から離れないし、僕は君のものっていうこと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

桃とクリーム
「甘い」よりも「甘く」


ナムジュンとジョングクは、雑居ビルの殺風景な一室で向かい合い座っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
もし、「真実」を知ったとしても、口にしてはいけないよ。



 
すべてが壊れてしまうから。
 
 
 
 
 
 

チョコレートの頬
そして、チョコレートの羽


ナムジュンの手にはグラス。
 
 
注がれた聖水。





まるで合わせ鏡みたいだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 

でもその羽は
悪魔みたい


鏡の向こう側に「自分」を映して、存在を確かめる。
 
 
鏡の向こうの自分には嘘はつけない。
 
 
 
 
 
 
それもまた自分なのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

逆に「甘い」が「苦い」「苦い」


グラスを片手にゆっくりとナムジュンが近づく。
 
 
 
 
 
ジョングクの背後へ。



ふと、甘いような苦いような香りを感じる。
 
 
 
 
 
 
 

「僕」にキスして


 
 
 


 

苦しくてもいいから
もういっそ締め付けてくれ ベイビー


ジミンは散らかったキッチンでリンゴをかじる。




面倒だったら混ぜてしまえばいいんだ。




 
ミキサーにかけて、ぐちゃぐちゃにしたら、元のカタチなんてわからない。




何が混ざっているかもわからない。
 
 
 
 
 
 



盃をかわそう。
 
 
祝杯をあげよう。



理由はなんでもかまわない。
 
 
聖杯(リンゴ)は君の手に。




 


ベイビー
酔うと知っていても君を飲む




 
選ぶのは「僕」だ。
 
 
 
 
 
 
さぁ、一気に飲み干して。




選んだのは「君」じゃない。
 
 
 
 
 
 

君はリスキーなウイスキー



飛べる。
 
 
僕は飛べる。
 
 
僕は飛ぶ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙
捧げる今も


意識が遠のく。






あれは、いつの記憶だろう。




僕?
 
 
それとも、君?
 
 
 
 
 
 
 
 

溢れる ただただ…





あぁ、君か…。






目覚めるな。
 
 
 
まだ、目覚めないで。


 
 
いや、はやく目覚めて。
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙
この想いが


ジョングクは吐き気を催し、トイレに駆け込む。
 
 
 
 
何もかもが揺れて、混ざり合う。



混ざり合えないものは拒絶される。
 
 
だから吐き出すんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジョングクのところへ駆け寄るユンギ。



一度混ざったものはもとに戻せない。



 



ユンギの声もジョングクへは届かない。



僕は「僕」だ。
 


 
 
 
 

溢れる ただただ…



 
もぅ、遅い。





溶けあったら手遅れ。






ユンギは必死にジョングクに呼びかける。



 
 
「触るな!」



ジョングクは差し伸べられた手を振りほどく。




 
ユンギは呆然と立ち尽くす。
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
ソクジンは静かにオペラグラスを降ろす。



 
いつも、気づいた時は手遅れ。
 
 
 
 
 
それでも誰もが何かを求めて言うんだ。
 
 
 
 

 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」




どんなに苦しくても。





 
禁じられたことでも。





 「もっと、もっと、もっと欲しい」



君はここへくるのかな?





僕はそこへ行くよ。
 
 
 
 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」



手にはリンゴ。


 
鍵は僕が握っている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」

 
ジミンとジョングクがテヒョンを捕え、抑えつける。





さぁ、始めようか。
 
 
 
 
 
 
 
これですべてが解決する。



なんだよ、それ。




テヒョンはひどくおびえていた。




嫌だよ…、助けて。







 
いつも、気づいた時は手遅れ。
 
 
 
後悔しても、もとには戻らない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」



すべてを映し出す傍観者。





事の成り行きをただ見ている。




 
目覚めなきゃ。




殻から抜け出して、蝶になるんだ。


消されてしまう前に…。





 

「もっと、もっと、もっと欲しい」


 
 
「君」がいるから「僕」たちは自由になれないんだ。





だから、これが「僕」の使命。
 
 
「僕」の選択。
 




さぁ、矢の先が貫いた場所から、混ざり合って消えてしまえ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

苦しくていいから
二度と離さぬよう



 
 
 
美しいだろう。
 
 
すべて僕のコレクションなんだ。
 
 
 
 
 
コレクションの中でも、いらないものがある。
 
 
 
 
 
だから矢を放つ。



 
その矛先は「君」に。






縛り付けて欲しいただ
おかしくなるほど


全員そろったね。





もう、これは必要ない。
 
 
これでようやく眠ることができる。







 
本当に、そうかな。
 
 
本当に、いらなかったのかな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「僕」の唇にキスして
ふたりだけの秘密


 
ソクジンとテヒョンが雑多なキッチンでもみ合っている。




テヒョンは押し倒され、ソクジンは馬乗りになってテヒョンを殴りつけた。





一方的に、殴り消すように、何度も、何度も。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

捕まるよう
毒される君に



一瞬の躊躇い。
 
 
振りかざした手を止める。
 
 
 
 
 
 
 

「ごめん」

 


なぜ謝る?
 
 
 
 
 
謝るくらいなら、最初から手を出すなよ。




テヒョンが一瞬の隙をついて、ソクジンを押しのける。




ソクジンはそのまま後ろに倒れ込む。
 
 
 
 
 
 
 

君以外じゃもう
従いきれない



その甘さだ。
 
 
 
その甘さが「君」を「君」でなくす。
 
 
そして「僕」を「僕」でなくすんだ。




 
 テヒョンは凶器を振りかざす。

 
 
 
 

自ら飲む
毒入りの聖杯(りんご)


その刃先は「君」へ。
 
 



 
 
 
だから「君」はいつも「君」を失う。




 


血、汗、涙
捧げる今も



その刃先で世界が変わる。
 
 
その刃先で世界は変わる。
 





これまで存在していたはずの世界は粉々になり宇宙の藻屑になる。







映していた鏡も粉々。







 
テヒョンはナイフを手に、壁に傷跡を残す。


存在の証のように。


道しるべのように。




 

溢れる ただただ…



傷をつける。
 
 

「僕」がココに存在した証。
 




存在することは楽しい。
 
 
そうだろう?
 
 
 
 
 
 
 

血、汗、涙
この想いが



僕はひとりだ。






だから、僕が僕であることを証明する必要がある。
 
 
 
 
 


 

溢れる ただただ… 



「入口」は知ってる。






 
そろそろ姿を現せよ。
 
 

ずっと観てるんだろ?
 
 
 
 
 




 
そして、言うんだ。



 
 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」




真実の青。




嘘の赤。




「もっと、もっと、もっと欲しい」



 
もっと



もっと、もっと…




 「もっと、もっと、もっと欲しい」




 
ジミンは「嘘」と対峙する。




テヒョンは「真実」と対峙する。



ねぇ、見てる?
 
 
見えてるでしょ?
 
 
 
 
 
 
 

「もっと、もっと、もっと欲しい」



 
もっと、



もっと、




もっとって。





 

そっと今伝えて


ジョングクは煙の蔓延する中でも目覚めない。

目覚めることを忘れてしまった?



終わらせてその手で



知っていたけれど、知らないふりをしていた。


 
 
けれど、これ以上知らないふりはできないことを悟って、殻を破って、この場所にたどり着いた。






 

どうせ無理なんて言えないよ


来た、のかな?
 
 
 
 
 
 

逃げる事もできないもう


ここ、かな?


 
 
 
 
 
 

君が甘すぎて
甘すぎて、甘すぎて
もう…



君、なの?






ジミンは静かに扉を開く。
 
 



 
 
 
君、か。





「僕」は、確かに「君」を見た。







けれど、その目は再び覆われる。
 
 
 
 
 

ユンギの手で。


 

置いてきたはずの「君」に、また、奪われる。
 
 
 
 
 
 
そして、世界が壊れる。





血、汗、涙




一瞬でそれまで存在していたはずの世界がとけていく。





砕けていく。






歪んでいく。






ひび割れていく。






ここまでか…。






そう、「僕」だよ。







いや、「僕」だ。




血、汗、涙



「僕」だよ。






「僕」じゃない。








ここじゃない。







ここでもない。







ここも違う。







ここなのか?






ここだよ。







ここでもある。







どこなんだ。






あぁ、そうか。






ここではないんだな。







花びらが舞う。


そこはどこだ?
 
 
 
 
 
 
 
 



 


 
 

深夜のガソリンスタンドに、一台の車がやってくる。





店員のナムジュンはロリポップを口に含み、深夜には珍しいお客を迎え入れる。



窓ガラスをのぞき込む。





少しだけ窓が開いて、あるものが差し出される。






ナムジュンはそれを受け取る。


 



緑色のライター。





さらに窓が開かれ、車内の人物の正体が明らかになる。



「あ!」
 
 
 
それはナムジュンが良く知る人物だった。
 
 
 
 
 
「ジンヒョン!」


訪ねてきたのはソクジン。
 
 
 
「久しぶり」
 
 
 
そう告げるとソクジンはナムジュンに笑いかけた。





そして、幕は閉じ、物語は続いていく。




************



以上です。




次回は韓国語バージョンの疑問点について書く記事となっております。


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