見出し画像

R5予備試験論文式民法を考える

R5予備論文民法の問題文を読み始めて15分で頭の中で考えたことを簡単に記述してみようと思います。

まずは設問1に目を通し、単純な請求パターンの答案構成で解ける問題であることを確認しました。
Bは、「本件請負契約は有効に成立しており、甲の修復ができないのはAの問題である」と主張し、本件請負契約における報酬と同額の250万円の請求をしていることから、法的根拠としては、単純に請負契約に基づく報酬支払請求が想定されているのだろうと考えました。
債務不履行に基づく損害賠償請求についても一応考えましたが、これを根拠とすると報酬支払債務の不履行に基づく賠償請求をすることになりますが、契約に基づく請求をすればよいだけなのでこれを根拠にする意味がないと感じました。よってこちらは即座に却下。
請負契約に基づく報酬支払請求をするには請負契約が有効になされていることが必要です。
しかし、本件請負契約は契約締結以前から仕事の完成(甲の修復)が不能な状態になっていますから、当初から履行が不能な仕事を請け負うという内容の契約が果たして有効といえるのかが問題となると考えました。契約の無効をいうAの反論はこれを指摘する趣旨かと思います。
当初から履行不能な内容の契約自体は有効に締結できることは民法412条の2第2項から論証できますので、契約締結以前の履行不能を理由とする契約無効をいう反論(だと私は考えました)は認められないと思いました。
そこで、Aの「仮に有効であるとしても、甲が現に修復できていない以上、金銭を支払う理由はない」という反論に着目します。仕事の完成に対して報酬を支払うのが請負契約なのだから、仕事の完成がない本件では報酬支払請求も認められないことになるとも思えます。
しかし、本件で仕事が完成できなくなったのはAが甲を標準的な保管方法に反して放置していたためであるから、履行不能は債権者Aの責に帰すべき事由によるものといえます。そうすると、Aは報酬支払請求を拒むことはできないことになると思われます(民法536条2項前段)。
もっとも、Bは甲の修復をしなくてもよくなった点で労力をかけずに済んでいますから、履行不能によりその分の利益を得ていると評価できそうです。よって、この労力節約分の利益相当額についてはAに返還する必要があります(民法536条2項後段)。
以上より、Bの請求は250万円からAへ返還しなければならない利益相当額を除いた額の範囲で認められることになると思います。

次に設問2ですが、⑴⑵で場合分けがされているものの、単純な請求パターンの問題なので、いつも通りの処理手順でいけます。
⑴は他人物売主BからBが乙の所有者だと信じて乙を購入したDが、乙の真の所有者であるCに所有権に基づく乙の引渡し請求をする場面です。Dが乙を即時取得(民法192条)できれば請求は認められます。
即時取得が認められるのは一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるような占有を開始した場合に限られますが、今回Dは占有改定による引き渡しを受けただけなので、これに当たらず、即時取得はできないと考えました。

⑵は他人物売主BがCから乙の処分権限を授与されていると信じたDが上記の請求をする場面です。こちらでは、DはBが乙の所有権者だと信じて取引したわけではないので、即時取得が問題となるわけではないと思いました。そうすると、Cの追認がなければDは乙の所有権を取得できないことになりそうです。
しかし、これで引き下がるのは味気ないので即時取得以外にDを保護する法律構成があり得ないかを考えます。
本件はあくまで売主がBなので他人物売買の事案であり表見代理規定が直接適用できる事案ではありません。
しかし、他人物についての処分権限を当該他人から授与されており、その権限を失った後に授与されていた権限の範囲内で取引を行い、取引の相手方が処分権限の消滅を過失なく知らなかったのであれば民法112条1項の利益状況と相違ないことから、同条の類推適用ができると考えるべきではないかと考えました(委託契約書を示して権限があると説明していることから109条1項の類推もありうると考えます)。
DはBが乙の処分権限を喪失したことを知らない。しかし、本件委任契約書に記載された⑶の条項を読んでいると思われる→であれば200万円という高額の壺の売却権限が今もBに与えられているのかをきちんとCに問い合わせておくべきなのにこれをしなかった→Bの権限喪失を知らなかったことには過失がある。→112Ⅰ類推適用できない(109Ⅰでも同じ)
結論として⑵でもDの請求は認められない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?