字のことを食べ物だと思ってる

私は本を買うとき、常に直感に頼っています。
運がいいのか好き嫌いがないのか、「外れだな」と思った小説や漫画に出会ったことは一度もありません。

人生は常に刹那的です。出会いも別れも突然でいい。そうでなければ、ぬるすぎるから。

私の好きな本を少しだけ、軽く紹介します。おまいらにも、共有したいから─


・同志少女よ敵を撃て
店頭に並んでいて、理由は特にないけど惹かれたので買った本。
戦争のけたたましい音と無慈悲な顔、殺気立った人の描写がうまくて、気づいたら夜が明けていました。
戦争は女の顔をしていない、とはよく言ったものですが、女の顔でないことを人の手で女性を使って見せつけられると、思考を止めずにいられない。
なにが正義であるか、考えさせられる文章です。すべて正しい。少なくとも、前線では。
自分たちは平和のために戦っている。相手もまた、そうであるのです。
テーマがテーマなだけあって、かなり重苦しくのしかかってくる。けれども考えないわけにはいかない。目を背けるわけにもいかない。いずれゆく道かもしれない。
まだ何度でも読み返せる。色褪せない。戦争も、この本も。


・さよなら世界の終わり
いつだったか、いつかの元彼が誕生日プレゼントにくれた本。私は普段帯にでかでかと「青春」と書かれたような本は手に取らない。だからくれたんだと思います。
かなり好き嫌いが分かれると思います。というか分かれているし。
”生きづらさ”を題材にしているだけあって、共感できたりできなかったりする。流れに任せているだけかもしれない。逃げているだけかもしれない。
それを味わったことがない人間からすれば、ただ弱い者たちが集まって慰めあっているだけ。
心情の変化、陰鬱とした感情に向き合ったり逃げたりすることが、どれほど生を実感することか。
理由はどうあれ、人が死にたいと思う心情を、他人の言葉で見れて嬉しかったのです。


・世にもあいまいなことばの秘密
Twitterで見て買った本。
シンプルに学びになります。言語にこんなに向き合ったのは初めてだった。
2秒間くらい悩んで気づいたらさっぱり忘れているような疑問が、かなり明確に言語化されている。筆者が言語学者なだけあって、文章そのものが美味しいと思いました。言葉の面白さがここに詰まっている。
もはや小説の顔して並んでいる教科書です。人間が使う言語は、こんなにも色とりどりなのか。
国語が苦手な人間にこれを読ませたら、泡を吹いて倒れるでしょうね。


・好き?好き?大好き?
サブカルオタクが大好きな本こと、R.D.レイン著の詩篇。
構成のある小説も好きですが、詩篇も好きです。自分にはない言葉と思いが、そこにある。
精神科医であるR.D.レインが直接聞いただけあって、精神がそのまま言葉として可視化されている。
精神に難を抱えている人間が発する言語は、特異なものがあります。理解はできないかもしれませんが、それでも、美しい。
「Do you love me?」を「好き?好き?大好き?」と訳すそのセンスたるや、脱帽です。


・ここは今から倫理です
これは漫画。おそらくこれも、直感で買ったものです。
好き嫌いが分かれそうな絵柄だと思う。だけど、絵柄で決めないでほしい。
人間のすべてが詰まっている。いいところも悪いところも。
千差万別という言葉が大変似合う。誰かにとっていい人は、誰かにとって悪い人。倫理を担当する高柳先生ですら、誰かからすればいい人間ではないのです。
だからこそ、倫理という言葉が光る。
別に道徳的じゃなくたっていい。”正しさ”は所詮個人のものさしでしかない。正解がないからこそ、無限に考えていける。
すべての人間の、生々しい感情の描写がとにかくうまい。


・何者
朝井リョウの本、最高すぎるだろ
私は普段著者を選んで本を買ったりすることはあまりないのですが、この人だけは本当に大好きです。
SNSが普及しまくったこの現代にかなり刺さる。大好きだけど、あまりおすすめできない。というか万人受けしないかも。
自意識というのは本当に厄介です。それが、かなり生々しく描かれている。
斜に構えて全部わかったような顔をして、実は一番小心者とか。イキっている人のかわいそうな部分を的確に抉り出してくる。
精神の調子が悪い時に読むとかなり死にたくなります。それでも、大好きな本。


・博士の愛した数式
中学校の図書室にあって、特に何も考えず手に取ったらめちゃくちゃ感動した本。数年前に文庫本を見つけたので、つい買ってしまった本。
不慮の交通事故で記憶が80分しか持たなくなってしまった天才数学者の博士が、たどたどしくも、やさしく、謙虚に、どんなに混乱しようと、言葉に頼れなくとも、人と会話しようとする。その姿勢が、いとおしい。
数字が大好きで、大好きなもので会話する。そしてそれを理解し、素直に受け取る者がいる。
記憶が1日持たずとも、相手を敬う気持ちと、愛だけは忘れない。
おもしろさ云々のものではない。ストーリーそのものが、すべてが愛でできている。あまりにやさしく切ない。じわりと心が満たされていく本です。



まだまだたくさんあります。が、またそのうち。またね。

またねと言って別れると、かなり死ねなくなるので。

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