岡崎署勾留障害者暴行死事件ー論点②

論点② なぜ暴力行為はとめられなかったのか?

そこにいた当該警察官が人格に劣る問題者だったから等、短絡的な理由で終わらせてはいけないのでしょう。

この事件は、個人の問題というよりも、組織的な問題、組織の暴走と考えるべきでしょう。もちろん、暴行陵虐行為をおこなった警察官は、刑事事件として立件し、処罰されるべきことは当たり前ですが。


ところで、福祉業界では、虐待が重い課題です。虐待はなかなかなくなりません。

大切なのは、虐待は、誰もが起こす可能性があるものという認識です。
虐待というと、自分とは違う規範意識の低い問題人間がやるもの、と考えてしまいがちです。しかし、自分も、障害者に差別や虐待をやってしまうかもしれないと、捉えることが必要でしょう。


今回の事件も、誰もが、同じ立場で、同じ環境下におかれると、虐待や暴行をおこなってしまう可能性があると考えるべきでしょう。

こうした個人の暴走を止めるために、組織があるはずですが、残念ながら、現在の警察組織体制では、止めることができないようです。

今回の事件では、「おかしい」と疑問に思う警察官もいたようですが、上司に意見を言えない、部署に報告できない、上の人間に逆らえない雰囲気が、自浄作用を妨げてしまいました。

警察は、組織で対応する機関ですが、一方で、個人の責任が曖昧になる欠点があります。自分は関係ない。誰かがやるだろう。事なかれ主義や無責任体質が生まれやすい欠点があります。


今回の事件が発生した、そもそもの「本質」の部分ですね、本質的な原因は何でしょうか。

それは、勾留や取調べの職務において、法令違反の行動が日常化していたのではないでしょうか。ルールが守られていない。適切な対応ができない体制。こうした状態が日常化していて、今回の悲惨な事件に至ったと考えるべきでしょう。

例えば、大阪福島署での留置所自殺事件では、
・留置所の私物保管庫の点検を、1か月おこなわなかった。
・決められた巡視をおこなわず、自殺直前の1時間は、巡視を一度もおこなわなかった。
・さらには、点検をしたとする虚偽の報告書を作成していた。
https://www.police.pref.osaka.lg.jp/material/files/group/2/r412_houkokusyo.pdfより


留置所の勾留職務において、守るべき規則が破られていた。さらにはその事実を、虚偽書類で隠ぺいしていた。こうした事実が、大阪府警・報告書より、明らかにされています。


取調べにおいて、取調官が、大声で怒鳴る、机をたたくといった行為(脅迫や暴行)がまかり通っている現状があります。

警察官は『犯罪捜査規範』(国家公安委員会規則)によれば、『個人の基本的人権を尊重して捜査をしなければならない』とされています。(取り調べの警察官はこの規定があることをあまり知りません)

あなたの取り調べにあたって、大声で脅せば、警察官の方が『脅迫罪』を犯していることになりますし、そういう取り調べ方法は違法です。

警察には、仕事の性格上、『逮捕して、取調を強行すること』は正義であり、『黙秘したり、弁護をされること』は悪であるという感覚を持つ人が多いのですが、法的には間違っています。
引用:美和ノートより


自白強要は、黙秘権の侵害(憲法38条違反、刑事訴訟法198条違反)であり、違法である。と法律に明記されているにもかかわらず、それが守られていない現実があるでしょう。

勾留や取調べの職務においては、平時の日常職務から、守るべき法令が守られず、違法行為がまかり通っている現実がある。こうした状態が当然のように放置され、まかり通っていることが、今回の悲惨な事件を生みだした本質的な根源の原因であるように思うのです。

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