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ひぐらし亭(20年10月22日)

■演目
一、 おしゃべり(たけ平・萬橘)
一、 たらちね (萬橘)
~仲入り~
一、 野幇間善次(たけ平)

■所感
観客席が超精鋭。超精鋭が故の“不用意発言”を楽しみつつ「おしゃべり」。
10月は観客席の新しい介護席を題材とした、座席争奪戦。
超精鋭の状況下、限りある新座席を観客が獲り合うという題材の不穏さを楽しみつつ、月末が故のミニコントの手慣れ感と崩し方が更に楽しい。何度聞いても住所が全く覚えられないのが不思議。

萬橘師匠「たらちね」。
八五郎の憎めない、雑な人柄が好ましい。明るくカラッと進む中、或る場面で八五郎の誠実な姿勢にハッとさせられつつゲラゲラ笑う。設定の延長線上を描き、登場人物の別の側面を魅せる手腕に痺れた。

たけ平師匠「野幇間善次」。
日暮里館 的に熱い噺選び。萬橘師匠が「ぼんぼん唄」をここ最近かける中、骨格は近似だが登場人物の設定が異なるが故の新しい見え方が楽しい。萬橘師の「ぼんぼん唄」が小間物屋の夫婦と“血縁”に光を当てる一方、たけ平師の「野幇間善次」は腕ある職人の慢心と復活、そして仕事と私生活の天秤選択に光が当てられ、印象が全く違う。この聞き比べが楽しい楽しい。
善次と子供の疑似親子……と同様に、善治と師匠も疑似親子であり、二世代に亘る疑似親子の血縁を超えた情にグッとくる。
何のために、誰のために仕事を頑張るのか。善次の選択が100%正しいとは思わないが、何かを考える切欠になる良い夜だった。
以上

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