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第6回「立川談洲 独演会」(20年11月22日)

■演目
一、 浮世根問(談洲)
一、 ニキビな年頃(談洲)
~仲入り~
一、 夢の酒(談洲)

■所感
祝、御結婚!は、先月10月回で既に消化(昇華)済み。また通常運転に戻ると思いきや、コロナ第3波3連休自粛要請の影響か、そこそこの少数精鋭。
自粛が適切なのは重々承知だが、この人数は“勿体無い”の一言。談洲さんの溜まりに溜まった愚……非常に楽しい枕が聞けて、且つ噺の題材や構成が面白い新作と改作がたっぷり楽しめる。熾烈なチケット争奪戦無しで入場出来る気軽さは嬉しい限りだが、それにしても演芸ファンや面白いモノが好きな方々は怠け過ぎではないか。噺の新陳代謝も早いし、点では無く線で追いかけると面白い演者だと思うのだが。。

高座に上がった談洲さん、まずは会場の少数精鋭に所感を。結果に複数要因が考えられる中、心が折れない要因に逃げがちという話から始まり、徒然なるままに、徒然なる愚痴を。今回は居心地の良い場所での心のソーシャルディスタンス話が大作。“話が面白くないヤツ”を再現する際のあくい100%の模写、そして受け側の談洲さんの戸惑い、怒りにゲラゲラ笑った。良い意味で心が狭いし、相手を罵倒する表現力が素晴らしい。

「浮世根問」。
前日のよったり松坂亭でも演っていた演目。冒頭のプレーンな浮世根問で『あれ?この噺、あんま面白くないぞ』と思わせてからのシフトチェンジが楽しい。現代版にアレンジされた浮世根問は前期高齢者が若者に世間を訪ねる形に。御隠居が現代に適合すべく八五郎に由来とコツを聞く件が面白い……と同時に、前期高齢者が『今の時代は分からない』と投げてしまうのではなく時代に取り残されないようメディアの情報をガバガバ呑み込んで洪水に呑み込まれていく姿が頼もしいやら、微笑ましいやら、哀しいやら。完全に暗黒面に呑まれた御隠居が言い捨てる心情は、付き合い方が分からなくなり依存した人達の気持ちを代弁した強烈な一言だった。
そこから続く、夢追い人・偽装人への躊躇無きマウント滅多打ちは爽快感抜群。最早、基本ルールである言葉の由来ですら無く、アレな方々への御提言が満載。結婚を機に『落語本編に演者の本心が……』と言われるのに飽き飽きした演者が『それなら演者の本心、入れてやるよ』とばかりに超特濃の悪意を垂れ流し。アレな方々、特にアレな女性を演らせたら天下一品。少し頭の螺子がトんだオツム緩め(に擬態した)女性の緩い話し方が馬鹿っぽくて好き。
気が付けば長尺大作。要素の抜き差しで時間調整が可能だと思うが、個人的にはフルVerの圧縮陳列、圧倒的な物量による圧の強さがイイので是非フルVerで。

「ニキビな年頃」。
(良い意味で)馬鹿で非常に好き。特に描写は無いが会話、雰囲気で上流階級っぽい、知能指数がお高めのお上品さを醸し出して……からのパンチライン。冒頭は余裕綽々な或る人物が、そのパンチラインを境に困惑、窮地に追い詰められ、諦観の面持ちになる過程が面白い。一方の攻め(責め)側は心を抉る言葉のナイフを突き立て、捻じり、深く差し込む。言葉のフックが多く、一つ一つに引ッ掛かり心がザワザワする。パンチライン一本槍に収まらず、そこから適用範囲を広げていく、順番と組み合わせ、そして期間でパターンを増やしていく展開も面白かった。

「夢の酒」。
新妻の表情が曇っていく過程、男が調子に乗って思い出し笑いする姿が面白い。入り婿、大家の旦那と娘である新妻という関係性もより状況を面白くしており、アレな嫉妬も荒唐無稽なお願いもノイズ無く観ることが出来た。登場人物が皆、呑気。呑気な面々が呑気な遣り取りをする姿を見て、こちらも呑気な気持ちになる。という、緩やかで豊かな時間だった。
以上

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