落語立川風 その7(20年10月30日)

■演目
オープニングトーク(寸志・かしめ)
一、 ん廻し(かしめ)
一、 粗忽長屋(寸志)
~仲入り~
一、 反対俥(寸志)
一、 紺屋高尾(かしめ)

■所感
かしめさん二つ目昇進初の「落語立川風」。
番衆亭→両国亭→日本橋亭とキャパを増やしつつ、コロナ禍で久し振りの開催。歳もキャリアも離れた両名のカバディのような距離感のフリートークが面白い。今回は近日控えた二つ目昇進披露興行の日程と演者、そして演目候補についての協議。派生で始まる人情噺の入り込み方。感情移入系の二人が語る人情噺の落とし穴が興味深かった。前日のツキイチで予告された差し込みは無かったが、とりとめの無い会話が楽しく、(昨年まであった)日常感もあって穏やかな時間だった。

かしめさんは「ん廻し」「紺屋高尾」。
「ん廻し」は冒頭をバッサリ削ったショートVer。ん廻し荒しの下りもあり後半の手数が多いため、前半がスッキリして本題にスッと入るので聞き易かった。
魔の2回目、「紺屋高尾」。親方、女将さんの演出表現が丁寧になり、久蔵感の強い押しを調整された2回目。演者も客席も『泣くぞ、泣くぞ、泣くぞ。ほれ、泣け。やれ、泣け』感が少し出てしまい、若干の照れ臭さが残り噺の世界との距離感が空いた。いつまでも1回目の熱さや勢いが残る訳ではなく、徐々に落ち着く中で演出の強弱がどこに付いていくのかが興味深い。

寸志さんは「粗忽長屋」「反対俥」。
「粗忽長屋」は軽いカラッとしたアレな人物が故に深刻な雰囲気にはならず……とは言え、普通の人々の概念を壊し続けていく静かな感染振りに震える。犠牲者である感染者が「むしろ貴方に。。」と次なるターゲットを見定めた時の衝撃と狼狽が面白かった。その手もあったか。
「反対俥」はネタおろしの重圧から解放された寸志さんが躍動的に突き進む。久し振りにF1の通過音、通称ロードランナーを観た感慨に耽る。若手の方が体力と勢いだけで演じる反対俥よりも、年季の入った演者が涼しい平気な顔で体力の温存や演出の濃淡を付けながら演じる反対俥の方が好き。
以上

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