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【人事に効く論文】自分の思い通りに仕事ができる人は、長時間労働が苦にならない!? → Buffering effects of job resources on the association of overtime work hours with psychological distress in Japanese white-collar workers.

Hino, A., Inoue, A., Kawakami, N., Tsuno, K., Tomioka, K., Nakanishi, M., Mafune, K., & Hiro, H. (2015). Buffering effects of job resources on the association of overtime work hours with psychological distress in Japanese white-collar workers. International Archives of Occupational and Environmental Health, 88(5), 631–640.

1. 60秒で分かる論文の概要

仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)をベースに、従業員の残業時間、仕事の資源(「ジョブ・コントロール」「職場でのソーシャル・サポート」「外発的報酬」)と心理的苦痛の関係について研究した論文です。日本のとあるメーカーの5つの事業所に勤務する従業員1,198名分のサーベイ結果に基づくデータ分析が行われ、以下の内容が示唆として得られました。
● 残業長時間群(月間80時間以上)は、残業短時間群(44時間以下)と比較して、心理的苦痛を感じている比率が有意に高い
● ジョブ・コントロールの低い群では、残業時間と心理的苦痛との有意な関連が認められた
●  ジョブ・コントロールの高い群では、残業時間と心理的苦痛との有意な関連は認められなかった (高いジョブ・コントロールは、残業時間に関連する心理的苦痛を軽減する)
● 残業時間と心理的苦痛の関連について、職場のソーシャル・サポートや外発的報酬による有意な緩衝効果は認められなかった

2. 私的な解説/感想

サーベイの対象者が日本のメーカーの従業員のため、母集団はほぼイコール日本人と考えてよいと思います。その意味からも非常に興味深い論文でした。また、圧巻なのが、従業員サーベイの回収率です。何と99.8%! さすがは日本人といったところでしょうか。
この論文ではジョブ・コントロールの効果がポイントになっています。ジョブ・コントロールは、「仕事における自律性とスキル裁量の組み合わせ」と定義されており、これが高ければ長い残業時間も苦にならない、ということです。
また、職場のソーシャル・サポートや外発的報酬があっても、残業による心理的苦痛の軽減は見られなかった、という結果も面白かったです。個人的な感覚としては、月45時間残業くらいだったらまだしも、80時間を超えてくると、まぁそうかもな、という印象です。

3. 読後の余談

「ジョブ・コントロールの高い群では、残業時間と心理的苦痛との有意な関連は認められなかった」=これは自分のことだな、と思ってしまいました。だからこそ逆に、ジョブ・コントロールの低い状況に遭遇すると心理的苦痛をメチャ感じてしまいます・・・。

4. 関係性の高い論文

2022年2月16日 初稿作成

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