見出し画像

何故、転売屋は生まれるのか?転売ヤーを爆死させるためのたった一つの方法と消費者が持つ「定価」に対する幻想

転売ヤーを爆死させるためには小売店が転売ヤーと同じ土俵に立つ以外に方法はありません。
少なくとも現行法では…

何故、本当に欲しい人が定価で買えないの?
そもそも、転売屋の標的となっている商品に定価はありません。

転売ヤーについて

転売ヤーについてあなたはどう思いますか?
ネット上の反応を見るに、多くの方が転売ヤーに対してあまり良いイメージを抱いていないと思います。

私自身も以前は転売ヤーに大いに憤っていました。
今でも転売ヤーにはいなくなってほしいと思っています。

しかしながら、転売ヤーが生まれるのは今の法律の仕組みと商習慣上、自然なことなので仕方がないことなのです。

転売ヤーの問題点について説く意味

よく転売ヤーはこんなところが悪い、業界のためにならないと力説している方をお見かけします。
しかし、いくら力説したところで転売ヤーは絶対にいなくなりません。転売ヤーが生まれる理由もちろん、その熱意が政府に伝わり法改正などされ、違法行為などになれば別ですが。

今回は今の法律上の枠組みの中で転売ヤーを撲滅する方法について書いていきたいと思います。なのでまあそう言った方法も考慮すればタイトル詐欺です。
今回は今の法律上の枠組みの中で転売ヤーを撲滅する方法について書いていきたいと思います。

転売ヤーが生まれる理由

物事には何事にも理由があり、転売ヤーが生まれることにも当然理由があります。

理由は簡単です。
みんなが欲しい物の価格が安すぎるからです。

価格が安いことは一消費者から見た場合、好ましいことですが、市場全体で見たとき、必ずしも良い方向に作用するとは限りません。

みんなが100円でも買いたい物が80円で売られている。
これは本来、自由市場においては自然調整され最終的には100円の価格になります。
ここで80円で売ってる人たちが小売店、この100円で売っている人たちが転売ヤーです。

つまり最初から100円で売る、または需給のバランスを見て小売店が100円へと価格を調整できれば、転売ヤーは存在できなくなります。
簡単ですね。

小売店が100円で売らない理由

ではなぜ小売店は100円で商品を売らないのでしょうか。
それは小売店の自由な価格設定を阻害する物があるからです。
それが「希望小売価格」です。

「希望小売価格」というのはメーカーができたらこの価格で売ってくださいねという小売店に対するお願いです。
法的拘束力はありません。
しかし、小売り店はメーカーの意向を汲み、また一般消費者からヘイトを受けないためにこの「希望小売価格」に従います。

発売から品薄が続くPS5を例にとって考えてみましょう。

PS5の発売前、以下のようなニュースが流れました。

「PS5の価格がSIEから発表されました。49,980円です。」

これを一般消費者が見た時、49,980円がPS5の「定価」だと思うわけです。
しかしこれは「定価」ではありません。
あくまでもメーカー側の「希望小売価格」です。
値付けは小売店の自由です。

しかし、ここを濁して「価格」は49,980円ですといった発表をします。
私が確認したニュース記事では「価格」という表記になっていました。
この「価格」という言葉が曖昧で、価格表記に疎い一般消費者の多くは価格=定価なんだなと錯誤します。
そうすると小売り店としても、一般消費者に悪感情を抱かれたくないので49,980円で販売するしかなくなるのです。

一部の店舗は需給を見て、より高い金額で販売します。
するとそれを見た消費者からはあそこの店舗は悪どい価格設定だとされます。
価格の値上げは本来であれば自由なことです。
むしろこう言った市場の状況に即した価格設定をする店舗は勤勉であるとさえ思えます。

定価と希望小売価格

そもそも、本来の「定価」というのは小売店によって値引きも値上げも許されない商品であって、その対象は書籍、新聞など一部の商品に限らます。
値引きや値上げが自由にできないかわりに定価で売れなかったものは返品ができる。
これが「定価」です。
これは法律上決まっています。

「売れなくても返品はできません。でもこんな価格で売って欲しいな〜」
こんなメーカー側に都合の良い価格。
これが「希望小売価格」です。
一切の法的拘束力はありません。
それどころか実効力によってはこれは再販売価格の拘束にあたり、独占禁止法違反になる可能性すらあります。

以下に公正取引委員会が公表している流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針より独占禁止法上における再販売価格維持行為に対する考え方について一部を抜粋します。

(2) 事業者が設定する希望小売価格や建値は,流通業者に対し単なる参考として示されているものである限りは,それ自体は問題となるものではない。しかし,参考価格として単に通知するだけにとどまらず,その価格を守らせるなど,事業者が流通業者の販売価格を拘束する場合には,上記(1)の行為に該当し,原則として違法となる(注4)。
(注4) 事業者が希望小売価格等を設定する場合においては,再販売価格を拘束すること(再販売価格の拘束に当たるかどうかについては,下記2において述べる考え方に基づき判断される。)にならなければ,通常問題となるものではない。
 なお,希望小売価格等を流通業者に通知する場合には,「正価」,「定価」といった表示や金額のみの表示ではなく,「参考価格」,「メーカー希望小売価格」といった非拘束的な用語を用いるとともに,通知文書等において,希望小売価格等はあくまでも参考であること,流通業者の販売価格はそれぞれの流通業者が自主的に決めるべきものであることを明示することが,独占禁止法違反行為の未然防止の観点から望ましい。

結局のところ、この「希望小売価格」というものが実質的に拘束力を持つ「定価」として機能してしまっていることが問題なのです。

転売ヤーを撲滅するなら

もし、メーカーや小売店が転売ヤーを本当に撲滅したいと願うならこの「希望小売価格」という悪習慣を廃絶し、全ての商品を「オープン価格」として、小売店が需給に即した適正な価格を設定できる文化にすること。
そして我々が小売店に需給のバランサーとして正しく機能してもらえるように働きかけること。

これこそが転売ヤーを撲滅するための唯一の方法だといえます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?