見出し画像

現代4コマ空間 感想 【#現代4コマ】

このほど、清須市はるひ美術館というところで現代4コマ空間という展示企画がありました。清須市はるひ美術館とは、愛知県清須市にある公立の美術館です。

現代4コマが、公立施設の共有空間に在る。そういうインスタレーションとして、本展示は現代4コマという概念に新しい輪郭を与えたといえますね。どんな展示だったのか、私の足で見た視点から探っていきましょう。


前史

いきなり余談から入りますが、僕はこの企画がやることを発表より少し前から知っていました。

いとととがメッセージアプリで共有してきて、展示を登録するにあたって紹介文のようなものを書かなきゃならないというので、僕がライターをやりました。

というか勝手にさっさと書いて送りつけました。5分くらいで仕上げたはず。結局そのまま採用されてホームページの展示説明文に載ってます。

--マンガにとらわれない4コマ、現代4コマ

4コマと聞いて何を思い浮かべますか? 
起承転結、短いストーリーやキャラクター……
それは『マンガ』のイメージではないでしょうか。
現代4コマはマンガだけではありません。
だけど、なんだかオモシロイ。よくわからないけど、オモシロイ。
いま広がりを見せる、4コマが主役の新しい表現の世界・現代4コマワールド。
清須市はるひ美術館に出現です。

美術館サイト内紹介ページより。僕が書いたんよ

この話があったのは展示する半月前くらいでしたね。かなり急である。このスピード感、驚異のフッ軽(フットワークが軽いことをこう略すらしい)、この辺りはいととと氏の持ち味の一つでしょう。

しかしまさか、展示の全容が未知数の中でさっと書いたこの説明が、図らずも正鵠を射ったものになっていたとは……。

ちなみに告知は2日前であった。めちゃくちゃだ

界隈に混乱と衝撃を与えつつ、長閑な清須市の地に展示は降り立ったのでした。

行こう!

駅からしばらく歩くと、公園があって、MSゴシックの看板がある
此処こそが、人呼んで愛知のルーヴル、清須市はるひ美術館さんだ。

他は丸ゴシックなのに、なんでこれだけMSゴシックなのか……?
早速、考察の余地を思わせる清須市はるひ美術館。
一筋縄ではいかないぞ……!!!

これが美術館の看板だ‼️

オープン展示室

美術館と聞いて、閉鎖空間にガラス張りの展示ディスプレイや、広い壁に作品が並ぶ様子を思い浮かべるかもしれませんが、ここ清須市はるひ美術館さんでは通常のそういった展示室の他に、オープン展示室という空間があるんですよ。

今回、現代4コマが展示されたのはそこ。この空間、名前の通りひらけていて、ガラス張りで外に突き出した展示室になってるんです。

この写真の、上に見えてるガラス張りのスペースがソレです!

入場は基本自由で、入場料の要らないエリアだったりします。本とかが置いてあって、利用者が自由に利用しながら展示と触れ合う。

公園の中にあることもあって市民が気軽に立ち寄れ、美術を身近に感じることのできる素敵な施設なんですね〜!

告知ポスターもバッチリ掲示

このウェーブのかかったような階段を登れば、外光に包まれたオープン展示室がお出迎えです。

純 粋 4 コ マ と 共 に な ! ! ! ! !


展示を見てみよう

オープン展示室の特徴もあって、『現代4コマ空間』は壁にただ作品だけがポツンと在るような展示ではありません。


心地いい自然光の中、椅子と机、書架と共に、ごく自然にそこに在るのが『現代4コマ空間』の現代4コマなのです。


むしろ、作品が我々人間と等身大の、隣人かのように振る舞っている


机の上に堂々と現代4コマが居座っていますね。

例えば……

ここで読書でもしてみようものなら……

完全に読書のお供ですよこれは。
何も言わず、ウンウンと言いながら見守られているんだけど……?


また、置き4(置き型の4コマ)だけでなく、掲示用のパネルに貼られた4コマなんかもあるわけですが、



これも、さっきの空間に隔てなく存在しているので……


気分はさながら授業参観です。ママ〜見てる〜?


土着化しゆく現代4コマ

さきに述べたようにこの美術館は公立で、市民の方の利用が多かったりするのですが、家族連れの方とか、高齢のお客さんなどがお見えになっては、現代4コマを真面目にとりあって考察する光景があったそうです(残念ながら私は立ち会えなかったのですが……!)。

『チーズイン4コマ』が父母層に受けたとか、『運命を思いついた瞬間(ベートーヴェンの4コマ)』を発見して愉しんだ方がいたとか……この辺りは九本さんのレポにくわしいです。

私もこの展示を見て、

あれ?現代4コマって、昔から居なかったっけ?

たかし、なんか覚えてるか?

けんじは?あれ?
お前も知らねえの?

みたいな感じになりましたもん。


スポーツのサッカーに習熟したら「ボールは友達」なんて言ったりしますけど、その『友達』ポジションをいとも容易く奪いにくる恐ろしい展示です。

既に発表済みの作品が多い本展示。詳しい説明は省きますが、今回展示された、4コマを様々なものに見立てて表現する作品の数々は非常に親しみを持ちやすいものが多かったと思います。

だからこそ、この光と風の明るいオープン展示室にあって、朗らかで愉快、しかし語りすぎず、気のいい友人のように、溶け込んで、打ち解けられたのかもしれません。


ハッ…………。
ふと思い出される、あの紹介文。

だけど、なんだかオモシロイ。よくわからないけど、オモシロイ。
いま広がりを見せる、4コマが主役の新しい表現の世界・現代4コマワールド。
清須市はるひ美術館に出現です。

よくわからないうちに、
面白くて、
広がりをみせ、
主役になるものが、
空間として出現……。

まさしく、この『気づいたら居る』彼ら現代4コマを示唆しているものに他なりません。まさかです。書いた私自身もびっくりするほど、空間の特性にハマっています。

それは、我々すらも脇役にすぎず、主役は現代4コマ…………という、そんな時代の到来がそう遠くないことを予感させる、そんなふうに思います。


4コマは、親しいものだ

モノによるでしょうけど、例えば美術って敬遠されたり、興味の薄い層が多いものの、意外と遠いものじゃなくて。関わり方次第ではとても近い位置に共存しうるものだったりしますよね。

4コマっていうのも、漫画の枠という希薄な存在ですが、現代4コマの一連の作品を見てると、意外といじってみるとこんなにも幅があるんだ、と思っちゃいますよね。

そもそもアートなのかもあやふやな、アートと俗世間の境目を漂う、現代4コマという概念ですが……。

俗っぽいからこそ、その導入として、現代4コマというくだらなさは、効いてくる。どーでもいいような視覚的体験が、喉の通りのいい薬みたいにスーッと入ってきちゃう。

本棚の、サブリミナル純粋4コマ

気にも留めてなかったはずの存在がいつの間にか力を持ってるって、ちょっと怖いですけど、それが『現代4コマ』によって行われかねない、というのはちょっとすごいことですよね。

今後の動向にも目が離せません。

終わりに

本当に、制作・設営を行ったいとととさん、本当にお疲れさまでした。

展示の数々を見ても、その苦節が滲み出てくるようでした。

しかし、愉しまれた多くの市民の方々を思えば、大いに意義のあることだったんじゃないかな、と感じております。

僕はこの展示行ってないんですが、行った人はお疲れさまでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?