【韓国留学生の日常】ソウル新村の『日本』で、ちょっと一杯やってきた。
数日前、私用があり、久々に他所行きの化粧と服装をバッチリきめ、遠出をした。
午後5時頃に用事は全て終わったものの、このまま寮に戻って夕食を摂ってジムに行ってシャワーを浴びて、普段通り1日を終わらせてしまうのは、あまりにも惜しい。無事に(?)今学期も終業し、晴れて自由の身となったと言うのに。
それに、やや募り気味なストレスを何かで解消したい。
そうだ、1人でお酒でも呑もう!!
何を隠そう、この冬休みの私の「やりたいことリスト」のうちの1つが、バーで1人でお酒を呑むことなのだ。
正直、スーパーで適当に缶ビールと冷凍餃子でも購入して、寮でNetflixを観ながら1杯... なんてのも、悪くはなかった。オール明けで疲れていたし。
しかし、私の脳内で天使だか悪魔だかが、しきりに「行っちゃいなよ〜」と囁いてきた。
그래 지금 아니면 내가 또 언제 이걸 해보겠어?
さぁ、そうと決まれば、次は場所選びだ。
真っ先に頭に浮かんだのは、以前知人からオススメされたバーだった。
その名も『신촌에서만나는일본 (新村で出会う日本)』。
「日本人スタッフと話しながら1杯」
「おひとり様90%以上」
「躊躇わず仕事終わりに寄ってみてください」
「年中無休 Open 18:00~03:00」
年末年始を日本で過ごせないことを考えては気分を沈ませていた私にとっては、非常に魅力的だった。
新村であれば2号線沿いだし、行きも帰りも楽だ。
しかも、おひとり様が殆どだというじゃないか。
営業開始時間も丁度良い。
よし、ココに決めた。
行き方を確認しようと、Naverの地図アプリでお店の名前を検索にかけてみたところ、出てこない。
結局その場は住所で見つけたが、今になって気づいた。どうやら、本当の名前は『Rest pub&bar』というらしく、地図上でも『레스트펍』と表記されている。そりゃ見つけられるわけがない。
ちなみに場所はここ。
[네이버 지도]
레스트 펍
서울 서대문구 연세로9길 7 3층
地下鉄2号線新村駅2番出口から、徒歩で5分ほど。
平日は学生たちで賑わう、延世大学の繁華街の一角に位置している。
開店時間より数分早く着いてしまったものの、既に営業を開始しているようだったので、そのまま入店。
スタッフさんは何やらお取り込み中だったようで、何故か他のお客さんに案内していただいた。
1人で静かにお酒を呑むことが目的だったため、他のお客さんから距離を取り、迷わずカウンター席の1番端に着席。
少ししてから、オーナーと思わしき方が来ると、スタッフさんに「何でお客さんたちこんなに離れて座らせてるの?ダメじゃん、これじゃ皆で会話しづらいよ〜」と注意していた。
「(え、何、皆で楽しく会話する雰囲気のバーなの?スタッフの方とだけではなく?)」と若干困惑しつつ、心の中でスタッフさんを庇った。心の中で。オーナーさん!私が勝手に隅っこに座っただけなんです!スタッフさんの案内ではないんです!
メニューにチラッと目をやると、
ある!カシオレが!!ある!!!
嬉しくて思わず2枚も写真撮っちゃったじゃんね。
韓国でカシスオレンジを販売するお店は珍しいが、流石は『日本』を謳うバー。これだけで来た甲斐があると確信した。
本来はもっとカクテルらしいカクテルを呑むつもりだったが、カシオレがあるっていうなら仕方がない。迷わずカシオレを注文。
本来の営業開始時間である18時を過ぎると、1人、2人と、常連と思わしきお客さんが来店し始めた。
関西出身のスタッフさんのノリに飲まれ、結局私も他のお客さんたちとの会話に参加することに。
ここはソウル新村でありながらも『日本』なので、店内での使用言語は原則日本語で、お客さんも韓国人であっても日本語がべらぼうに上手い。
「早口過ぎる」と日頃より日本語ネイティヴの友人たちから苦情殺到の私の話を何なく聴き取り、ネイティヴ顔負けの語彙と発音でテンポ良く会話のキャッチボールをしてくれる。何なら、冠岳山にいる限り日本語を発する機会が殆どない私の方が、ところどころ閊えて会話の流れを止めていたくらいだ。
恐らく既に飽き飽きするほど耳にしたであろうこの質問を、私も例外なく彼らに投げかける。
「日本語を学び始めたきっかけは何ですか?」
大学で日本語学を専攻されている方、過去に日本留学経験がある方、お仕事で日本と取引されている方、日本人の恋人がいる方、日本のサブカルチャーに強い関心を持つ方、何となく独学してみたらメキメキ上達された方... まさに十人十色。
「ありきたりだけどね」と自嘲気味に言い添える方もいたけれど、きっかけが何であれ、これ程までに1つの外国語を極められるのは、学ぶ言語こそ違えど同じ外国語学習者として、素直に感服する。
そして、彼らもまた、私が韓国の大学に進学した理由を問いかけ、私は、この1年半間違いなく自己紹介より多く口にしたお決まりの話を繰り広げた。
少しすると、スタッフさんがまた1人出勤して来た。
最近日本に帰省されたらしく、お土産のお菓子を私にまで分けてくださった。
名前こそ何度も耳にしたものの、日本にいたときは1度も食べたことがなかった堂島ロールの商品を、まさか韓国で初めて口にすることになるとは。
楽しく会話をしていたら、あっという間に1時間が経っていた。
因みに、このお店は1時間(最低)1ドリンク制。
本来は1杯だけ呑んで早々に切り上げるつもりだった私だが、もう少し場の雰囲気を楽しんでから帰ろうと思い、追加でハイボールを注文。
しかし、種類を問わず飲み物を早く飲み切れない私としては、1時間に最低1杯飲まなければならないというのは少々キツい。
かと言って焼酎やウイスキーのショットを呑みたい気分でもなかった。本当に我儘。
喋るだけ喋り切ったので、この辺りから小1時間は聞き役に徹した。
8時過ぎ、お店を出るや否や、空腹感と疲労感がドッと押し寄せて来た。
新村駅に向かう途中、すれ違った学生たちが食べているクロッカンシューが美味しそうに見えたため、あれで腹を満たすかと購入。
クロッカンシューを頬張りながら、新村の『日本』で過ごした2時間を振り返り、私があそこに帰ることはあるのだろうか?と考えてみた。
楽しかった。
良い刺激をもらった。
でもちょっと気疲れした。
初対面の人と一緒にワイワイお酒を呑むのは、私の性には合わないのだと、実感した。
うん、もう帰らないかな。
そう結論を出し、新村を後にした。
... でもやっぱり、また新村に行く用があれば序でに立ち寄ろうかな。
今このnoteを書きながらそう思っているのだから、私も心の何処かで日本を恋しがっているのかもしれない。