君はもう君じゃない

電車の中で見つけた君はもう君じゃなかった


大学の新歓コンパで出会った君は、今までの世界では出会う事の無かった大人な女性で、僕は一目で恋に落ちた。彼女に誘われたテニスサークルは、テニスなんて名ばかりで実態は毎日酒を飲んで男女が入り乱れるいわゆる「テニスサークル」だった。

高校時代は部活にも入らず一人で本を読み、家に帰ればバイトをする毎日を過ごしていた。
決して友達がいなかったわけじゃない。彼女だっていたし、時々隣のクラスの名前しか知らない女の子から交際を申し込まれるくらいの経験はあった。勉強だって学年では上の方にいたし、それなりに友達も多かった。あんまり好きな言葉じゃないがカーストは高かったと思う。それでも学校生活が楽しくなかったのはその学校が文武両道を謳い、部活に入っている生徒を優遇していたからだ。帰宅部に人権は無く、どこか弾かれた雰囲気が学校の中には常に漂っていた。

ある日同じクラスの三瓶から声をかけられた

「お前大学行くの?」

後ろの席の三瓶はサッカー部に所属してるが、どこか冷めていて部活をやっている奴らとは少し違った。音楽の趣味も近く、クラスでは唯一話しやすい奴だった。

「とりあえず何処かは受けようと思ってるけど」
「なら同じ大学受けよーぜ」
「なんで?」
「別に良いだろ、成績だって同じレベルだし、行きたいとこ無いなら」
「まぁ別にいいけど」

そう言って受けた試験に俺は受かって三瓶は落ちた。

こうして俺は大学生になった。

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