【難聴者】インタヴューN君の場合
ここでは耳が聞こえにくい方を対象にインタヴューして、現状の理解を深めたいと思います。
私:ずいぶん久しぶりですが!今日はよろしくお願いします。
N:よろしくお願いします。
聞こえのレベルは?
N:生まれた時から両耳100dB以上の難聴者です。(発音にちょっと難があるが聞き取れる)
私:それで両耳に補聴器がついてるんだね。いつ気付いたの?
N:生まれて半年くらいたってから。人工内耳はつけなくて、補聴器だけだね。
【小川先生コメント:聞こえ具合やコミ状況は人によって違いますが、生まれたときから100dB超だと、親の語りかけは自然には入らないです。
補聴器を通して50dBくらいの音声言語がやっと聞こえるレベル。恐らくご両親や学校で相当発音訓練等したのではと思われます。普通の子どもが遊んで社会性等を身につける時間の多くが、音声言語獲得に当てられたのではと推察します。】
私:補聴器をつけてないとどんな感じ?
N:ほとんど何も聞こえないよ。飛行機とかのジェット音くらいまで大きいとわかる感じ。まぁ耳元ででかい音を出されると補聴器無しでもわかるかな。
私:(補聴器ピーっの手話:補聴器がハウリングしてる)いまも鳴ってるけど、それはわからないの?耳のなかで鳴るとわかりそうな気がするけど。
N:いや、聞こえないんだ。声とかは認識できるけど、こういうのは気付かないね。今教えてくれたように、回りに言われて気が付くことが多いよ。(この時も補聴器から結構音がしている)
私:(やっぱり人の機能?本能?として、声は聞き分けれるのかもしれないなぁ。)
【小川先生コメント:人の声はだいたい200Hzから2,000Hzの範囲。このあたりの聴力があれば、聞き分ける力あるかも。ハウリングのピー音は8,000Hz超えてたりしますが、オガワもこのレベルはスケールアウト(聞こえない)、全く反応できません。Nくんも感音性で高音域が失聴しているのではないかと思われます。】
趣味の話「N君は趣味でバイク乗ってるよね?」
私:両耳ほとんどきこえないんでしょ?クラクションとか聞こえないんじゃない?
N:聞こえないよ。でも補聴器をつけてるとわかる。だから免許証にも眼鏡とかのならびに「補聴器」って書いてあるんだよ。クラクションは音の大きさによってはわかる(補聴器なくても)。車だと補聴器の音がこもらないからバイク運転時よりはクリアに聞こえるよ。
【小川先生コメント:バイクだとヘルメット内に音が反響というか、こもってうるさいのです。車だと補聴器がおさえられることもなく、うるささが減少して、自然に近い聞こえになります。】
(免許証を見せてもらう。たしかに補聴器と書いてある)
私:密閉空間(ある程度広い空間)だと聞こえやすいのか。ツーリングに行ってるって言ってたけど、友達も耳聞こえにくかったりする?
N:そうだね。程度は違うけど、一緒に行く人はそういう人多い。
私:運転する上でクラクションが聞こえるなら問題ないか。それで言えばイヤフォンつけて音楽がんがんに聞いちゃってる人のほうが危ないもんね。
N:たしかに。僕の場合は補聴器を両耳につけてないといけない。ジェットヘルメットとかかぶると、かぶるときにとれちゃって大変だったりするんだよw。つけた後で手突っ込んではめ込むの。
私:結局大変なんだねwあ、水泳とかする時どうすんの!?壊れちゃわない!?
N:さすがに外すよwその時は手話とか口の動きを見たり。
私:そりゃそうかwあ、映画は?あれはやっぱ爆音だから聞こえたりする?
N:いや、聞こえないんだよ。だから字幕。でもさ、洋画のはあるけど、邦画のはないのが多いんだよ。
私:そういや健聴者なら日本語だったらわかるもんね。でも聞こえないんじゃなぁ。
N:でもいまは結構増えてきてるんだよ。そういう要望も多いし。単純に歳をとってから聞こえにくくなってる人もいるしね。話ちょっと違うけど、音楽好きな人はヘッドフォンで聴いたりして楽しんでるよ。
私:映画館にも飛行機みたいにイヤフォン差し込めるようになってればいいのにね。
調べてみると字幕インフォhttp://www.jimaku.info/ってサイトが有りました。映画の日本語字幕情報が乗っています。
「2010年1月1日から改正著作権法が施行され、(37条2項)(3)障害者の情報利用機会確保のため、権利者に無許諾でおこなえる範囲を拡大する。・視覚障害者向け録音図書作成が可能な施設を公共図書館等にも拡大・聴覚障害者のための映画や放送番組への字幕や手話の付与を可能に・発達障害等で利用困難な者に応じた方式での複製も可能に 」
とのことで、字幕処理がしやすくなっているそうです。
【小川先生コメント:もちろん私のブログでも字幕情報取り上げてます。「いくお~る」http://ameblo.jp/bcs33/theme-10008586896.html】
補聴器ってどのくらいで交換する?
私:いままででどのくらい補聴器交換した?壊れたとかで。
N:覚えてる範囲だと、中学生くらいから3~4回くらいかな。それ以前はもっと交換してるんだろうけど覚えてない。
私:やっぱり壊れてから交換する?
N:それもあるけど、成長して耳の形が変わるからそれに合わせないといけないんだよ。子どもの頃から大人になるまで耳の形って結構かわるし。人によっては聴力が落ちる人もいる。あとは老化現像。
私:聞こえのレベルに合わせたりしないといけないからか。そういえば耳の穴にはめるカナル型って感じじゃなくて、覆いかぶせるような形だもんね。いくらくらいするの?
N:ちょっと言いにくいんだけど、9割は補助が受けられるんだよ。ちゃんと申請してね。
私:残りの1割は自己負担なんだ、それいくら位払うの?
N:2個あるから1万6千円。かな、それが自己負担。でも今つけてるのも5年くらい使ってるから。
私:じゃあ16万くらいするんだ、電池は?
N:僕は一日中つけてるからね。一週間もすれば切れちゃう。さすがに寝る時は外すけど。家ではつけないって人もいるよ。
私:一週間って。macのマウスよりも電池交換頻度高いね。充電できるようになっていればいいのに。あ、つい充電忘れたら困るか。なるほど電池がいい。それにしてもそれだけでも結構な自己負担だよね。(充電できるタイプもあるそうです)
N:まぁね。仕方ないかな。補聴器の電池が高出力タイプのだから。普通出力のはもっと電池が持つ
私:聞こえないって障害は金銭的にも圧迫してくるのか。こりゃ大変だ。
【小川先生補足:聴覚障害で身障者手帳を持っている方限定に、それぞれの障害の度合いや必要な形式に応じて、福祉法補聴器の給付上限額が定められています。自治体が認めると給付されます。】
そういえば手話できるよね。どこで覚えたの?N君普通の高校行ってたよね。
私:そういえばN君、普通の高校行ってたよね。(高校生の頃N君と同級生だった)
N:やりたかったからね。美術(美術科のある高校)
私:それでN君の行ってた短大の先生が「普通の学校でがんばってた」っていってたのか。(偶然仕事で行った短大の聾学校でN君の作品を見かけて声をかけた)
[ 回想:N君は美術科のある高校に通っていた。耳が聞こえにくいというのはあったけど、さすがに高校生ということもあっていじられたりすることもなく、ごく普通に通っていたと記憶している。]
N:手話はね、短大で自然と覚えたんだよ。
私:授業とかはないの?
N:特別なかったよ。寮に入ってて、その他の手話が出来る人と会話してるうちに自然と覚えた。でもやっぱり僕みたいに手話できないって人もいたし、筆談でとかもあったよ。自分と同じように普通学校から来てる人も何人かいたし。
私:私がN君と話ながら「これってどう表すの?」なんて話しながらちょっと覚えたけど、それと一緒か。(JR、電車、モノレール、地下鉄、時間の表し方、場所などなど覚えた。会話しながらだと覚えやすい)
あ、英会話って勉強するより現地に行った方が覚えれるってやつと一緒だ。「通じた」って成功体験が記憶しやすいんだろうね。
仕事ではどうしてるの?
私:N君けっこういい会社に勤めてるよね。そっちではどうなの?会話。
N:同じように耳が聞こえにくい人が何人かいるから、聞こえなかったりした時は通訳してもらったりするよ。そこでも覚えた。飲みに連れて行ってもらって手話で会話したりするうちに単語をたくさん覚えたよ。
私:受け入れちゃんとしてるんだね。同じような境遇の人がいるんだったら心強いかも。
N:全体で集まったりする時はちゃんと手話通訳するひとがいるんだよ。通訳者は役所からの派遣で。
私:さすが大企業!同僚との会話は?
N:もちろん話せるからそれでしてるけど、机の上のメモ帳で筆談したりもするかな。同僚が通訳してくれたりもするし。
私:意外と困らなそうだね。想像してるより問題なさそう。
実生活では?
私:実生活で困ったなってことは?
N:電話だね。電話は出来ない。聞くときにはこうしないといけないんだけど、iphoneとか携帯だと聞こえない。ボリュームが足りないんだ。
(補聴器のマイクの部分に当ててる。これだと声を拾いにくい。)
私:それは結構なやつだね。予約したりは?
N:ネットで出来るやつはしちゃうし、友達に頼んだり、親に頼んだり。電話できたとしても言ってることを理解してもらいにくいから、どうしても☎出来ないって時は直接店に行っちゃう。
私:予約しに直接店に!まぁでもそれきっかけでお店が対応考えてくれたりもするか。
N:あ、普通の電話だったら、出来ない事も無い。家電。
私:あー、ガチャッと持ち上げるやつだ。
N:ボリューム大きくできるし、iPhoneでもある程度まで出来るけど家電ほどじゃないし。ほら、口のとこにも届いてるでしょ。あ、両親は聞き取れるから電話できる。(発音にちょっと難ありだから電話越しだとわかりにくいけど、両親は聞き慣れているからわかる。)
私:おー!さすが両親。
N:僕は使った事無いけど、電話してくれるサービスもあるんだよ。通訳してくれたり。
私:あーそれなら、うちのきっしーも動画に出てたやつがあった。(きっしーは行きつけのSign with meのお客さんとして出てます。)
こういうのもちゃんとあるんだね。話せない人もいるだろうし、聞いてもわかんないってなると、こういうリレーサービスをつかうのもいいかもね。
N:そうそう、手話って普段からやりなれてる人は片手でも出来るんだよ。動画みたいに電話しながらとか、飲み会でジョッキ持ちながらとかね。
私:奥が深いな。今日はありがとう!またなんかあったら教えてね。
N:あい了解。
N君の場合は「生まれつき」聞こえづらく、その後病気で更に聞こえづらくなったそうです。
耳が聞こえづらくても趣味も仕事もある程度問題なくできている感じでした。でもやっぱり映画だったり電話だったり、「聞こえる前提」のものは不自由無いというわけではない感じですし、いくら補助が受けられているとはいっても自己負担分は結構なもの。
仕事では障害者雇用を積極的に行っている企業だからこそ、手話通訳や同じような境遇の同僚がいますが、そうではない場合、周りに同じような境遇の人がいないと結構大変だろうなとも思います。
”困ったときはこうしてる”などの情報もあわせてまとめていけるようにいろいろな方にインタヴューしていきたいと思います。
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