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【エモさのある音楽評】BUMP OF CHICKEN ファイター

BUMP OF CHICKEN 
ファイター(2014)

BUMPの素晴らしいところ。
現実を直視しながらも厳しさだけを歌うんじゃなくて、
だからといって、優しい言葉をかけて変に生ぬるさを肯定するでもない。
普遍的な枠組みで、生きていくことを賛歌する所。
厳しい曲ももちろんある。やっぱりこういうものなのかと思わされる。
でも、その後には優しい曲が必ずある。
要は、一つが全てじゃないのだ。全てで全部なのだ。
一つの曲で全てを表現しようとするのではなく、
BUMP OF CHICKENというバンドの存在が、
リリースしていく全ての作品で表現しようとしているのだ。
だから、どの曲がいいとか、悪いとか、
彼らはあまりそういうことを言いたがらないのだろう。
いままで表現してきた全ての作品がお互いを補い合って、
BUMP OF CHICKENは成立しているのだから。

そこで、今作のファイターである。
優しいメロディーラインに、
頻繁に登場する「命」という言葉が
生きることへの真摯さを純粋に感じさせる。
BUMPの表現のテーマの一つである「孤独」。
人生は決して一人では生き抜けないという、
人間の脆さを、それは、恥ずかしいものではなく、
それを強く感じ、自ら助けを求められることが
強さである。それをまさに「命」をかけて叫んでいるのだ。

所属する組織の理不尽なルール。
恵まれない境遇。
どんな場所にいたって、
絶対確実なもので、かけがえのないものは
命である。
命は強く、そして気高い。
自分が想像しているよりも、
命はずっと大切なのに、多くの人は
今いる環境のノイズに洗脳されて
それに気づけないでいる。
この作品は命が間接的に現実の
メタファーの役割を担う。

ファイターはその状況に疑問を呈す。
それはおかしいのではないかと。
多数が考えていることが全部で正しいのだということが。
この世はもっと素晴らしいはずだと、
一人でも戦うことを選んだ。

ここからは孤独に戦っていくと
覚悟を決めた。
がむしゃらに進む毎日の中、
協力者は存在したのだ。
仲間がいることがどれだけ素晴らしいことか、
たとえ他の何もかもがなくなっても、
仲間の存在、孤独じゃない自分というのは、
どれだけ強い力になるかを歌っている。
命をかけて、生きることに正直になろう としたファイターは、
現実を知るとともに、仲間の素晴らしさを知るのだ。

現実はこういうものだからって、
受け入れることが難しいものを
それが世の中だから、
仕方のないことなんだと
一方的に決めつけるようなことはしない。

BUMPはいろんなものに挫折してきたんだろう。
その結果、その時々に強く感じたことを表現し続けているのが今のBUMPなのだ。
同じことしか唄ってないというか、それほどに生きていることを強く感じていたからこそ、同じことを歌うことが精一杯なのだ。
そう簡単に違うことなんて唄えないのだ。人はそんなに器用じゃない。
違うことを唄ったとしてもそこに心はない。
それはきっと、空っぽで、形だけの、すぐに忘れ去られるような、人の心を到底打つとは思えないようなものになるだけだから。

深刻すぎる彼らの告白に対して、
Secret Trackの意味 バランスを保つためのもの。
一種の照れ隠しなんじゃないかな?



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