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浮気(不貞)の原因は夫・妻にあるのに、私が悪いのですか?慰謝料も請求されるのですか?--連載09

(1)浮気をした方の自分都合の言い分

「私が浮気をしたのは、私の責任じゃない!」「そもそも夫婦関係は破綻してるんだ!」という話はよく耳にします。批判するつもりではありませんが、当職としては、「婚姻関係がある身なのだから、順序は守る必要があるんじゃないの?」「離婚をしたければ、そういう相談とか、別居とか、話し合いとか事前にすべきことってあるんじゃないの?」と思うことがあります。

確かに、話を聞いていると、その生活状況は辛い、厳しい・・と思うこともあります。そして、ご本人さんは心のエネルギーが無くなってしまい、すがるように、なにがしかの承認を欲して、そしてエネルギーを注いでもらいたくて不貞、浮気に走る、その気持ちも、あくまでその方の話を聞く限りにおいては分からなくはないこともあります。

だけど、そうであっても、やはり順番があります。夫婦2人の問題である以上は、まずは話し合いなり、場合によっては円満調停でも離婚調停でもあるはずです。とはいえ、言い分としては、そんな余裕はなかったという話をされるわけですが。

(2)不貞・浮気の責任を免れることはできるのか?

結論から言えば、免れることのできるケースもあります。
ただ、不貞が実際にあって証拠まで揃っている場合に慰謝料を免れるには、その不貞があった段階で、夫婦関係がすでに破綻していたということを証明できる必要があります。たとえば、夫婦関係が悪く長期にわたって別居をしていた事実があったというような場合が分かりやすいでしょう。

また、すでに不貞以外の理由で離婚の合意はついていて、あとは離婚届を出すばかりという状況で異性関係が出来た場合でも、慰謝料を免れる場合もあると思います。

つまり、長期の別居も含めて、実質的に夫婦としての実態がないような場合や、不貞(異性関係)と離婚との間に因果関係の無いような場合には、夫婦関係破綻後の不貞ということで、有責性が認められず、慰謝料を支払う必要はないということになる場合があるわけです。 

とはいえ、夫婦関係が破綻をしているかどうかは、裁判官が判断をした結果、それに該当すれば「慰謝料を支払わなくてもよい」という結論になるものです。ですから、慰謝料の請求自体は受けるかもしれません。

また、有責性があるかもしれない側が、自らの判断で、夫婦関係破綻を主張するのも、おかしな話しと言えるかもしれません。あくまで、夫婦関係の破綻を確定するのは裁判官ですので。もちろん、言う分には言ってよいものですが、自分が言うことで、それが認められるものというのは、少し理解が違います。

たとえば単なる性格、価値観の不一致という場合や、夫もしくは妻が子育てに協力してくれず精神的に厳しい状況であったといった理由では、なかなか浮気は正当化できないといえます。

ただ、正当化できずとも、どちらか一方が悪く、もう一方に全く責任がないかといえばそうではありませんので、責任の相殺という意味で、慰謝料減額の要素にはなる可能性はあります。

慰謝料は、杓子定規に、不貞なら○○万円、暴力なら○○万円というような決まりはなく、証拠の有無、そうなった原因、有責配偶者の収入状況、お子さんの有無等、様々な要素で決定されるものですから、有責行為の結果だけをみているわけではありません。

(3)慰謝料請求も難しいもの。実は請求する側の方が大変かもしれません。

理不尽かもしれませんが、慰謝料請求というのは、されてしまう側よりも、する側の方が大変であるという一面があります。

当職も内容証明での慰謝料請求の文面を送付することがあります。弁護士さんのように、その後の交渉まではできませんが、その後のやり取りを観察することは多々あります。

正直いえば、日本では、裁判をしても、不貞相手が支払う慰謝料は高くはありません。一概には言えませんが、100万円程度も多いようで、200万円になるようなケースは、妊娠をしてしまっている等の事情がなければ、判例を見ていてもさほど多くはありません。

相手方が任意で支払ってくれればよいのですが、そうでない場合で裁判にまでしなければならないケースで、仮にその予想金額が100万円だった場合には、それを取得するために、弁護士さんへのそれなりに高い費用を支払わなければなりません。

お金が問題じゃない・・、損をしてでも・・という場合は別ですが、仮に100万円だった場合に、そこに掛かる法律家への諸々の費用と労力等を考えれば、最終的に手元に残るお金は数十万円程度であったりもします。

そしてそれが慰謝料請求をされた側も分かっているがために、請求をしても、40万円とか、50万円等、その程度で折り合いませんか・・という打診をしてきたりもするわけです。

つまり、相手方も、仮に50万円支払って、弁護士さんに数十万円支払えば、場合によっては、今請求されている金額よりも少なくて済むかもしれない、それに請求してる側も裁判はイヤでしょ・・ということで、足元をみてきた交渉をしてくるわけです。

読んでたら、腹が立ってきますよね。だけど、前述のような事が起きる可能性を踏まえたうえで、どのように請求相手へ交渉していくのかという点もあわせて考える必要が分かっていただけるかと思います。

浮気相手と、配偶者の話がごっちゃになってしまいましたが、いずれにしましても、1人で考えずに、夫婦の問題と浮気相手の問題は切って切れ離せない問題ですから、纏めて考えていく必要があります。

また、配偶者に不貞があったとしても修復したいという方も多いものです。なぜか不貞のある側の方がこちらを敵視してくることもありますが、それでも結婚を決意した2人なわけですから、カウンセリングも含めて何かの糸口を探していきたいところです。1人で進めていく方法もありますから、悩まれたら当職へ相談してください。

行政書士松浦総合法務オフィス 離婚と修復のおきがる相談室

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