カタールW杯ヨーロッパ予選観戦メモ【第9節】

遅ればせながら第9節です。

アルメニア×北マケドニア

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負けた方は2位争いからほぼ脱落のデスマッチとなったアルメニア×北マケドニア。相変わらずの4-4-2 (表記は4-4-1-1だが)のアルメニアに対し、想定通りといった雰囲気の北マケドニアは中盤から1人上げて同数プレッシングを仕掛けていく。上がるのはエルマスかチュルリノフで、バルディとトライコフスキは中盤に留まることが多いように見えた。

序盤はこれでほとんどボール前進ができず大丈夫かという感じだったが、ここで光ったのがDHのワルダニャン。最終ラインに降りてボール保持を安定化させるとともに、ロングフィードで決定機を演出。さらに対面のチュルリノフを何度もドリブルで剥がして前進し、攻撃を加速させた。同数プレッシングの北マケドニアに対しては一人剥がしてしまえば一気に前進が可能ということで、そこからムヒタリアンなりに渡してアタッカーの質勝負に持ち込む構え。ミスからカウンターを喰らう展開もあったが、この展開なら確かにアルメニアにも勝機がありそうであった。

しかし先制したのは北マケドニア。スローインを受けたアシュコフスキがするすると突破し、CBのカリシルまで交わしてのクロスを最後はトライコフスキが決めた。さらにアルメニアのビルドアップを高い位置で引っ掛けてからのバルディのミドルで追加点を挙げ、北マケドニアが2-0とする。
アルメニアの守備の緩さも目に付くところで、1失点目は人数が足りていたのに3人くらいあっさりかわされているし、2点目も奪われてからそれなりに(北マケドニアの左SBアリオスキが駆け上がってくる程度には)時間もあったが両SHが全然戻ってこなかった。

リードされた状態で折り返したアルメニアは両SHの前残りに拍車がかかるだろうし、苦しいけどこのまま行くしかないかと思っていたところ、HTでワルダニャンがベンチに下げられてしまう。アルメニアにとって唯一のボール前進手段だったように見えたのでこれには驚いた。怪我でもしていたのだろうか……?

ボール前進手段を失ったアルメニアは前進手段がムヒタリアンを中心とする前線の個人技頼みとなるが、当然北マケドニアのプレッシングに捕まってしまう。そしてワルダニャンに代わって入ったグリゴリアンのパスミスからPKを献上するという悲しい失点で勝負あり。このあと2点を追加され、生き残りをかけたデスマッチはまさかの0-5となった。
ライバルとの勝ち点差が3ついた上に得失点差で負けていて最終戦がドイツのアルメニアはプレーオフ行きもほぼ絶望。勝った北マケドニアは2位争いに踏みとどまり、ルーマニアが勝ち点を落とすことを願いながら最終戦のアイスランド戦に挑む。

気になった選手 
エリク・ワルダニャン(アルメニア)
北マケドニアのプレッシングに苦しむアルメニアに落ち着きをもたらした23歳。どの試合でもクラシカルな4-4-2を披露したアルメニアにあって、最終ラインから剥がして持ち上がる現代的なプレーを見せてくれた。
かつてムヒタリアンも所属した国内リーグ1部のピュニク・エレバン所属らしいが、ムヒタリアンの次のスターになれるのだろうか。ちなみにムヒタリアンは23の時シャフタールにいたそうです。頑張れ。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第9節
アルメニア0-5北マケドニア
@レプブリカン・スタジアム
【得点者】
北マケドニア:22' トライコフスキ、36'、67' (PK)、90' (PK) バルディ、79' リストフスキ

ルーマニア×アイスランド

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残り2試合を連勝すれば自力でプレーオフ行きを決められるルーマニアはアイスランドとの対戦。ここさえ勝てば次は未だ勝ち点1のリヒテンシュタインなのでおそらく大丈夫。ホームスタジアムは無観客だが国民に1998年以来のW杯を届けたいところ。

お互いに4-1-4-1を採用したこの試合、序盤はアイスランドがIHの裏抜けからゴールに迫るシーンもあったものの、徐々にルーマニアが力の差を見せて押し込んでゆく。
ルーマニアのボール保持の中心になったのは左サイド。トシュカ、タナセ、スタンチュの3人に加えてチガルダウやハジも時折出張してきて数的優位を作る。ただ無秩序に集まっているわけではなく、CFのアリベクが常にアイスランドのCBと対峙する位置に立ってCBの出張を制限。SBが出ていけばチャンネルを使うし、出てこなければ数的優位でフリーになった選手がそのまま運んでいくという二択。
あまりなかったがアイスランドのDF陣が大きくスライドしてきたら逆サイドに振ってハジかラティウで仕掛けるのだろう。

押し込まれたままでは厳しいアイスランドはIHを上げて4-4-2プレスを仕掛けに行くが、対面の選手を剥がせる右SBのラティウやIHの裏に鋭い縦パスを刺せる左CBのネデルセアルの存在によりこれも不発。アイスランドがチャンスを生み出せたのはロングスローくらいのものであった。
2位争いのライバルたちにはタレント力でやや劣るルーマニアだが、ボール保持非保持ともに設計は最もちゃんとしているチームだと思う。本企画開始からでいうとドイツと最も良い勝負をしたチームでもあるし。

そんなルーマニアにこの試合で足りなかったのは得点だけだった。左サイドのチャンネルを何度も崩して決定機を作るも不発。後半には3枚替えを敢行し攻勢を強めるが、終了間際に放ったヤニス・ハジのミドルもポストに弾かれゴールならず。

文句なしの優勢だったルーマニアだが勝ち点は1に留まり、3位に交替。最終節はリヒテンシュタインに勝ち、この試合で零封されたアイスランドの守備が北マケドニアにも炸裂することを願うしかない。

気になった選手
アンドレイ・ラティウ(ルーマニア)

右サイド底から運ぶドリブルでアイスランドのプレッシングを何度も空転させたサイドバック。ビジャレアルユース育ちでウエスカ所属の23歳。東京五輪ルーマニア代表にも選出されており、しっかり出場していたらしい。
ちなみにルーマニアの戦績は3位でGL敗退。最終戦でニュージーランドと引き分けで敗退だったので、勝っていれば日本の準々決勝の相手はルーマニアだったんですね。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第9節
ルーマニア0-0アイスランド
@ステアウア・スタジアム
【得点者】なし

ドイツ×リヒテンシュタイン

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1位確定のドイツと最下位確定のリヒテンシュタインの対戦という完全なる消化試合となったこの試合。相変わらず5-3-2引きこもりのリヒテンシュタインに対し、ドイツはいつものサイドバック片上げではなく両SBを上げることを選択。3センター脇に人を配置してリヒテンシュタインの中盤をスライドさせ続ける作戦に。

だからというわけでもないかもしれないが、左サイドからのクロスをクリアしようとしたCBのホーファーがミュラーの首に足裏を入れてしまい一発レッド。ボールしか見ていなかったし直後の反応を見てもわざとではないのだろうが、レッドカードを出さない訳にはいかないプレーだったので特に異議もなく退場となった。

というわけで開始早々PKで先制点&数的優位を得たドイツはリヒテンを押し込み続ける。3センターの脇を取ってクロスかそこからCBの裏取った選手へのスルーパスというパターンで永遠に殴り続ける展開を実現。リヒテンがクロス爆撃に耐えられるだけの強さがなかったこともあり順調に加点していく。

5-3ブロックでは耐え切れないとみたリヒテンはトップのY. フリックを30分に下げて5-4とする対応を取る。開始早々に中盤に下げられた上に30分で交替させられたフリックはさすがに監督の握手を拒否していたが、まあ無理もないだろう。
これで中盤のスライドが間に合うようになってピンチは減ったものの、もともと少なかった攻め手がさらに減ったため状況は良くならず。ドイツに殴られる展開は変わらずとなった。

後半からはドイツが次々に選手を替えて試運転モード。ヌメチャ、アルノルト、フォラントなどこれまで出番の少なかった選手を投入して有意義な時間を過ごしたといえるだろう。クロス中心の攻撃を続けて終わってみれば9-0の大勝となり、消化試合としては完璧な90分となった。

気になった選手
ヤニク・フリック(リヒテンシュタイン)
本職のFWでプレーできたのは10分くらいで、何も悪くないのに30分でピッチを去ることとなった不憫なアタッカー。前にも試合途中で中盤に下げられるなど便利屋的に扱われており、まあその扱いに不満がたまるのは当然だろう。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第9節
ドイツ9-0リヒテンシュタイン
@フォルクスワーゲン・アレーナ
【得点者】ドイツ:11' (PK)ギュンドアン、20'、89' オウンゴール、22'、49' サネ、23' ロイス、76' ミュラー、80' バク、86' ミュラー

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