カタールW杯ヨーロッパ予選観戦メモ【第7節】

どうも遅くなりました。第7節でございます。

ドイツ×ルーマニア

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3位につけるルーマニアが首位ドイツのホームに乗り込んだゲーム。フリック体制移行後の3試合で無失点全勝と快調な滑り出しを見せたドイツは、この試合も元気に右SBのホフマンを上げて3-4-2-1に。
そして開始早々にホフマンからの展開で抜け出したヴェルナーがPKをゲット。ドイツ順風満帆だなーと思っていたらこれがVARで取り消しになってしまう。接触がなかったという判定だろうが、最近こういう取り消され方はあんまり見ないような気がする。ちょっとロシアW杯の序盤を思い出すようなシーンであった。

これで動揺したわけでもないだろうが、直後の9分にカウンターからヤニス・ハジが決めてルーマニアが先制。この後にもドイツはルーマニアのプレッシングを前にボールを失うシーンが度々あったのでどうしたことかと見ていると、ルーマニアの準備してきた策が見えてきた。

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ドイツはどうせ右SB上げてくるので、そこはもうWB(この試合ならトシュカ)に任せてしまい、左SHのミハイラはむしろ高い位置まで出て行って残ったCBにプレッシャーをかける。ドイツの3-2ビルドアップに対して2トップ+3センターが多角形プレスでサイドに誘導し、中央に入ってきたら素早く奪う!が共有されているイメージ。
きちんと噛み合わせているだけでなく囲い込むイメージがチーム内でガッチリ共有されていることが守備強度の高さにつながっているように感じた。

これを受けてドイツの前進の核となったのは右サイド。ミハイラが上がった裏にニャブリを落とし、そこから空いたスペースを使っての前進が多く見られた。とはいえこれも外経由だとルーマニアのスライドが間に合うので、中央を一度見せて素早くサイドに展開しないと苦しい。脱出ルートがなくもないがそこを使うにも結構コストを払わされているイメージのドイツだった。しかも前進された後のルーマニアのスペースの埋め方も見事。サイドを深くまでえぐられても素早くゴール前と危険なバイタルを埋めて対応できていており、マイナスのクロスを何度も跳ね返していたのが印象的だった。
こう書くとルーマニアが守備的かのようだが、実際は右サイドへの展開はある程度リスクとして受け入れて前の5人で奪っての素早いカウンターを常に狙っている感じ。ドイツの喉元に常にナイフを突きつけるような守備をしていた、という方が実態に近いだろう。

構造的にルーマニアのスライドが早くなりやすいドイツの左サイドに至ってはほぼ機能停止に近く、ケーラーからパスを受けたサネが3人くらいに囲まれてなすすべなくボールを失う、という場面を何度か見た。本来であればサネはアイソレーションさせるためにあまりフォローにはいかないのだろうが、それが逆効果となっていた部分もありそう。もちろん奪われると素早いカウンターが待っている。

ということでボールは持てるけど前進はうまくいかず、常にカウンターの脅威に晒されるドイツ。後半に出してきた答えは左サイドの連携強化であった。前半からヴェルナーが左サイドに流れてくるとかはあったが、さらにゴレツカが流れてきたり、保持を安定させたらケーラーが上がってきたり。難なく対応できていた左サイドからポジションチェンジを交えて攻められることでルーマニアも的を絞りづらくなっていったように思う。ルーマニアが左サイドからの襲撃に慣れる前の52分に綺麗に破られて追いつかれたのも痛かったであろう。

ルーマニアは両SHを替えてプレッシングを継続しようとするも、押し込まれる時間が増えることを食い止めることはできず。最後の最後で体を張って凌いでいたが81分にセットプレーからミュラーに決められ逆転。反撃に出るパワーはさすがに残っていなかった。

ドイツは苦しんだものの、さすがの対応力を見せつけて逆転勝利。対応力もさることながら、ボール保持型のチームとして「慌てず騒がず時間を味方につける」という手段が使えるところからも横綱感が出ている。次節で北マケドニアにリベンジを果たして早々に突破を決めたいところ。
敗れたルーマニアは9月、10月シリーズの中でもドイツ相手のパフォーマンスは断トツだったと思うのだが、これで0ポイントなのはつらい。とはいえうなだれている暇は全くなく、むしろ次節のアルメニア戦が天王山。ドイツ相手の傷を最小限に抑えたとポジティブにとらえ、前を向くしかないだろう。もっともこの内容の試合ができたことで選手たちは自信を得ているのではないかという気もするので、心配いらないようにも思うが。

気になった選手

ゲオルゲ・プスカシュ(ルーマニア)
ルーマニアの最前線で体を張り続け、カウンターの起点役をこなした。リュディガー相手にも背負ってキープできるこの選手の存在はルーマニアを大分助けていたように思う。両SHには先発組と同じタスクを担う選手が早めに投入されたが、この人は82分まで引っ張ったあたりがその証左といえるかも。
9月シリーズでは見なかったのだが、どうも4月シリーズ最終戦で一発退場を喰らったようで招集されていなかったらしい。再びチームの信頼を勝ち得るのに十分な働きだったのではないだろうか。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第7節
ドイツ2-1ルーマニア
@フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
ドイツ:52' セルジュ・ニャブリ、81’ トーマス・ミュラー
ルーマニア:9' ヤニス・ハジ

リヒテンシュタイン×北マケドニア

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勝ち点1で最下位、すでにほぼ目無しのリヒテンシュタインとプレーオフ進出に向けて絶対に3ポイント欲しい4位北マケドニアの対戦。

リヒテンシュタインはあいも変わらず5-3-2で撤退。一応ボールを奪ったら右WBのボルフィンガーからサイドに流れたIHやFWに縦にパスを出して前進しようという姿勢は見せたものの、まあ誤差の範囲だったと思う。

というわけで北マケドニアが5-3-2をどのように攻略していくかがゲームの焦点に。この試合では2CB+誰かで2トップのプレッシングを無効化することをやっていた。降りるのは両SBかアンカーのスピロフスキ、もしくはエルマスという形。ころころ変わる割に選手がそろって降りてくるような場面はあんまりなかったので、最終ラインは3人!くらいのことは決まっていたかもしれない。
そして最終ラインでプレスを無効化した後は割とさっくりとリヒテンシュタイン守備陣の間に縦パスを打ち込んでいた。北マケドニアがどうというよりこれはリヒテンシュタインのブロックが間空けすぎだったように思う。ボールホルダーにプレッシャーもかかっていない訳なのでここは頑張って狭くしたかった。

20分近くこの形で殴られ続けたため、さすがに無理ということでY.フリックを左SHに下げた5-4-1に変更。スペースを消されたことで北マケドニアはブロック内への侵入が難しくなり、大外で受けたSBからのクロスが多くなっていく。リヒテンシュタインの何がきついって自陣からの脱出手段がないので大外からクロスを入れられるだけでも十分ダメージが入ること。中央への侵入はさせていないのにこれで突然失点することがあるのは相当きつい。
この試合は頑張って弾き返していたものの、結局セットプレーから事故ってリストフスキに決められ、前半を耐え切れず。この試合はアリオスキを始め北マケドニアのアタッカー陣にミスが目立ち、エルマスがかなりイラついているように見えたので前半を凌げば面白いかもと思ったが、それも叶わず。

後半からはリヒテンシュタインが5-3-2に戻すが、ハスラーが頑張ってボールを運ぶ程度で特にチャンスは作り出せないまま追加点を浴び、なすすべなく敗れることになった。
北マケドニアは最低限のミッションである3ポイントはクリア。しかし序盤にミスが目立つなどコンディションの悪さは気になるところ。次戦のドイツは並大抵では勝てない相手なだけに、初戦での再現のためにどう臨んでくるだろうか。

気になった選手

ヤニク・フリック(リヒテンシュタイン)
当初は2トップの一角だったが20分ごろから左SHに入って頑張っていた。守備はやや淡泊な印象だったが、それよりもどこか諦めたような立ち振る舞いが印象的。10のフリックもだけど、このチームのアタッカーは相当しんどい思いをしていそう。この日もシュートは2本。戦力的に苦しいのは理解するが、もう少しできることはないのか……と思ってしまう。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第7節
リヒテンシュタイン0-4北マケドニア
@ラインパーク・シュタディオン
【得点者】
北マケドニア:39’ ダルコ・ヴェルコフスキ、66’ エズジャン・アリオスキ、74’ ボバン・ニコロフ、83’ ダルコ・チュルリノフ

アイスランド×アルメニア

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プレーオフ出場権と7ポイント差の5位と苦しい戦いを強いられるアイスランドは、一縷の望みをかけて2位アルメニアを迎え撃った。

アルメニアの4-4-2に対してアイスランドはアンカーのバルソンを落として両SBを上げるという、やや陳腐ともいえる定石通りの対応。しかしアルメニアは両SHが対面のSBを守備の基準点にしている節があったのでこれでもしっかり押し込まれてしまった。
ということで3バックで保持を安定化させたアイスランドがすんなりと前進できる展開に。アルメニアは自陣で両SHがスペースを埋めるような意識もそんなにないのでアイスランドはなんかもう好き放題にゴールに迫れる展開だった。しかし点が取れない。押し込んでいる割にシュート数も多くないので、アタッカー陣の質不足が響いているのだろうか……

逆にアタッカー陣の質には困っていないのがアルメニア。めちゃくちゃ自陣に押し込まれているにもかかわらず2トップがキープして上がってくるSHとの長いワンツーでロングカウンターを成立させられるのが凄かった。正直アルメニアというチームはずっと4-4-2で特に試合中の修正とかもしていないのだが、W杯予選クラスでも多くの相手とこのやり方で互角以上に戦えるのでまあいいのかもしれない。
ただまあこの試合の失点シーンのように試合終盤にもかかわらず自陣のPA内で数的不利になったりする緩さがどの試合でもあるので、その辺が取りこぼしにつながっている節はあると思う。
この試合もプレーオフを狙うのなら内容はともかくとして絶対に勝つべき試合だと思うが、終盤になっても守りきるために舵を切るわけではなかった。9月以降試合で未勝利のまま次節ルーマニアとの天王山を迎えるが、そこで見られる姿も変わらないものとなるのだろうか。

気になった選手

ヘンリキ・ムヒタリアン(アルメニア)
アルメニアのボール保持において数少ない可変を行う選手。左サイドから中央に絞ってSBが上がってくるというのがもっぱらのやり口である。2021年の可変としては大分原始的だが、攻撃性能の高いMFを中央でプレーさせるのは理にかなっているし可変が少ないのはそれはそれで良いこと。アルメニアのアタッカー陣は粒ぞろいだが、その中でもこの人は一際うまくて強い。やっぱりビッグクラブにいる選手は質が違うのだ。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ 第7節
アイスランド1-1アルメニア
@ラウガルタルスヴェルル
【得点者】
アイスランド:77’ イサク・バーグマン・ヨハンネソン
アルメニア:35’ カモ・ホバシニアン

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