カタールW杯ヨーロッパ予選グループJ観戦メモ【第4節】

こんにちは。かんだ(@syukan13)です。声をかけていただき、カタールW杯の欧州予選を全部見てアーカイブ化することになりました。
僕の担当はグループJ。6チームあるグループなので毎節3試合あります。勘弁してくれ。

リヒテンシュタイン×ドイツ

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リヒテンシュタインは現在3連敗中で最下位。失点も9とかさみ、このグループの中では正直格が落ちると言わざるを得ないチーム。
一方のドイツはEURO2020を最後に長期政権を築いたレーヴが退任。新監督に元バイエルンのハンジ・フリックを迎えてこの試合が初陣となる。現在1勝2敗。北マケドニアに不覚を取った分を早く巻き返したいところだ。

試合の展開は開始30秒で明らかになった。スローインからドイツがボールを奪うと、リヒテンはまっすぐ自陣に撤退。綺麗な5-3-2ブロックを敷いた。開始30秒でここまで潔いチームを見るのは久しぶりかもしれない。昨今では守備ブロックの崩し方が浸透し、持たざる者であっても相手のビルドアップ隊にプレッシャーをかけることで引きこもりの時間を減らそうとする傾向が強いように感じるが、力量差が大きいと引きこもりの方が勝算があるのだろうか。

ともあれリヒテンが早々に撤退戦を選択したため試合は新生ドイツのスパーリングと言った様相に。前半の20分時点でドイツのボール保持率が80%を記録することとなった。
撤退戦を選んだだけあってリヒテンの5-3-2はなかなかに堅かった。ライン間は極限まで圧縮されて絶対に使わせないという意図が見えた。3センターのスライドも早く、ひとたび片方のサイドに圧縮してしまえば突破は非常に困難になる。

しかし、ドイツはこういう状況は慣れっこと言わんばかりの対応を見せた。高い位置にSBを進出させて早いサイドチェンジから3センターがスライドしきる前に展開してWBを釣り出し、WGがハーフスペースから裏抜けする展開で素早く前進。これに加えてWGとSBが位置を入れ替えてWGがカットインしてくるパターンやSBがそのままクロスを上げてくるパターンを織り交ぜて揺さぶる。当然3センターと2トップの間にはギュンドアン、ハヴァーツ、キミッヒが立っているので中央からの崩しもあるし、気を抜いていると持ち上がったCBがそのままハーフスペースからのクロスで殴ってくる。リヒテンの守備ブロックは確実に広げられていった。

なんとか前半を無失点で耐えたいところだったが、41分に大外で受けたムシアラのドリブル突破からヴェルナーが決めて先制。このシーンでも内側のゴゼンスの裏抜けによってムシアラのドリブルコースが確保されていた。リヒテンとしてはドイツが中央突破に固執するとか打ち手を間違えてくれればしのげたかもしれないが、それをしなかったドイツ相手であればこれくらいの時間で決壊するのはやむなしといったところだろう。

失点後もリヒテンは撤退を継続。まあ1点なら何かの形で返して1ポイントもあるということだろうが、それにしたって攻撃の手が全く見えなかった。2トップを起点にロングカウンターを繰り出したかったのかもしれないが、ドイツの素早いカウンタープレスで潰されてまったく攻撃できず。この試合では結局保持率14%、シュートは2本となった。

ドイツはニャブリ、ロイス、ゴレツカらの試運転をしながらリヒテンを攻め続け、77分にサネが決めて勝負あり。試運転を終え、アルメニアとの首位決戦に弾みをつけた。

気になった選手

ロビン・ゴゼンス(ドイツ)
EUROでは逆サイドからのクロスに突っ込んでいく戦術兵器としての役割を担っていた印象が強いが、この試合では左サイド攻撃の起点として機能。裏抜けあり、もちろんヘディングシュートもありと縦横無尽の活躍だった。左サイド攻撃を組み立て、右サイド攻撃の終点にもなれるのは貴重。こんな選手を輩出できるなら、アタランタの評価も上がろうというものだ。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ
リヒテンシュタイン0-2ドイツ
@AFGアレナ
【得点者】
ドイツ:41' ヴェルナー、77' サネ

北マケドニア×アルメニア

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北マケドニアはEURO2020出場の実績を持つ実力派。今予選でもEURO前にドイツを破ってその名を轟かせたが、ルーマニアに敗れておりグループ2位どまり。初のEUROに続き初のW杯に向け、ライバルのアルメニアを叩いて首位に浮上したいところ。
一方のアルメニアは目下3連勝中でグループ首位と絶好調。W杯、EUROは共に出場経験がないが、ここまで大健闘を見せている。2勝1敗ですぐ下につける北マケドニア、ドイツとの対戦が控えるこの9月シリーズは正念場だろう。逆にここを首位で切り抜けられればW杯は現実味を帯びてくるが、果たして。

試合開始から北マケドニアがボールを保持し、アルメニアは4-4-2で構える形となった。
北マケドニアのボール前進で核となったのは10番のバルディと7番のエルマス。アンカーのバルディはアルメニアの前線4人によるプレッシングの背後でボールを受けて繋ぐ役。IHのエルマスはキープ力と馬力を活かして度々ファイナルサードまでボールを運んでいた。さらにSBを上げて5レーンを埋めての攻撃も使ってくるためアルメニアはかなり対応に苦しんでいた印象。CBSB間を裏に抜けるIHにクリーンな形でボールが渡る場面を作られていた。


ここまでは良かったのだが、北マケドニアが問題だったのはこの後のラスト30 m。プレッシングをかわした後加速する縦パスやコンビネーションといったフィニッシュの数手前でミスが多発。満足にシュートまで持ち込めた場面は本当に少なかった。
逆にアルメニアは自陣深くまで運ばれていたが、そこからのロングカウンターが脅威。前の4人は揃いも揃ってボールが収まり、技術が高く、スピードもある。2トップに当ててキープしてもらい、それを追い越すというシンプルだが効果的なカウンターを繰り返し、ゴールまで迫った回数はアルメニアの方が多かったように思う。ボールを持った際にも右サイドにロングボールを蹴って競り合いながらごりごり進む形が多く、総じてフィジカルエリートの集まりという印象を受けた。

ややアルメニア優勢とも見えた前半を0-0で終え、後半先に動いたのは意外にもアルメニアだった。10番のコリャンを2トップの一角に起用し、前半自由にプレーできていたバルディを監視させた。北マケドニアのビルドアップを阻害することでさらに高い位置でカウンターを繰り出そうという狙いだ。

これ自体は理に適った交代だったと思うが、これに対する北マケドニアの応手が見事だった。左SBのアリオスキを上げてバルディが落ちることで3バック化し、コリャンによる監視から逃れる。さらにエルマスを左WGに回すことでボールの落ち着きどころを作り、左サイドからの前進を安定化。もともと脅威だったアリオスキの攻め上がりも合わせ、左サイドを徐々に侵略していく。逆にアルメニアは前線のエネルギー切れに169 cmのコリャンを投入したことも合わせてロングカウンターの威力は低下。北マケドニアに押し込まれる時間が続く。

しかし北マケドニアも前半に立ちはだかった最終局面での質不足を解決できずに相変わらず攻めあぐねた。最大の決定機は敵陣に押し込んでからシュートのこぼれ球をアリオスキがミドルで狙ったシーンだったが、これは味方に当たって枠外に逸れてしまう。

運も味方につけられなかった北マケドニアは無得点のまま終了。アルメニアも巻き返すだけの馬力は残っておらず、首位攻防戦は両者痛み分けとなった。

気になった選手

エニス・バルディ(北マケドニア)
この試合ではアンカーに入り、確かな技術と相手の嫌なところに立てるポジショニングで北マケドニアのビルドアップに安定感をもたらした。が、狭いスペースでプレーできる技術がありスピードもあるそのスタイルは本来もう一列前で生きるものなのではないか?とも感じる。この試合でのボール保持時のフィニッシャー不足を見ていると尚更。実際EUROでは前目のポジションで起用されていたようだが、北マケドニアの小さな10番はどこを拠点とするのだろうか。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ
北マケドニア0-0アルメニア
@トシェ・プロエスキ・アレナ
【得点者】
なし

アイスランド×ルーマニア

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北マケドニア×アルメニアが首位攻防戦なら、こちらは生き残りをかけたデスマッチ。共に1勝2敗の両チームはここで負けると首位と7ポイント差と、突破への道は大きく遠のいてしまう。是が非でも3ポイントをもぎ取って望みをつなげたいところ。

この試合で目についたのは両チームのプレッシングの空転だった。アイスランドはIHを上げて4-4-2にすることでルーマニアの4バックと噛み合わせに行ったが、アンカー気味に浮いているネデルクを捕まえられず、そこを起点にコンビネーションでの前進を許す。
ルーマニアもルーマニアでアイスランドのサリーは放置気味にミドルゾーンで構えるも、大外を経由してIHのハーフスペース裏抜けを許していた。

両チームとも敵陣へ侵入してクロスを上げるくらいまではスムーズに行けていたため、フィニッシュまで崩しの質とDFがゴール前でどれだけ体を張れるかが肝になる。この点ではアイスランドの方が決まったパターンで前進していてゴール前での余力が残っていそうだったし、もともと売りだったゴール前の堅さでも上回っているように見えた。

それだけに後半開始早々の失点は痛すぎた。スローインから誰がボールにアタックするのか曖昧なままずるずる後退し、あっさりクロスを許して失点。らしくない対応で後手を踏んでしまった。
失点後も引き続き綺麗に前進はしていたが最後のクロスが合わない、シュートに勢いがない。この辺はシグルズソン、シグトルソンをスキャンダルで招集できていないという事情もあるのだろう。

最後はCKからのカウンターをスタンチュが沈めてルーマニアが勝利。6大会ぶりのW杯出場へ望みをつないだ。

気になった選手

ビルキル・ビャルナソン(アイスランド)
ロシアW杯にも出場した33歳のベテランは豊富な運動量でプレスの先陣を切り、確かな技術でビルドアップを支えた。ゴール前にも頻繁に顔を出したが、フリーで待っていたクロスを目の前で味方に触られるなど運に恵まれず。内容は悪くないのに結果がついて来ないこの試合のアイスランドを象徴するような選手だった。彼の働きを結実させられるタレントの出現が待たれるところだ。

試合結果
FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選
グループJ
アイスランド0-2ルーマニア
@ラウガルタルスヴェルル
【得点者】
ルーマニア:47' マン、84' スタンチュ

今節を終えての順位表はこちら。

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