天気が悪い時には墓地へ行くな

数年前のお盆。母方のお墓にお参りしに行った時の話。

いつもは天気がいい時に行くんだけど、あいにく曇り空で雨が降りそうなどんよりした天気の日に墓参りに行った。当時運転できる人が父しかいなかったため、その日しか都合がつかなかったのだった。

いつも来ている母方のお墓なので、みんなで手分けして慣れた手つきで周りを掃除して、墓石を磨いて、カラスとにらみ合いながらお供えを置いてお参りをして、お供えや道具を片づけて帰った。

お墓参りの後、祖母の家でおやつを食べている時に母がとても微妙な顔をしていたが、私は低気圧が来てるから、頭痛が来たのかなーとのんびり考えていた。
その後、家に帰ってから母は大変だったらしい。

2~3日ずっと言葉少なで顔色が悪いから、具合でも悪いのかと思い母をそっとしておいて、家事をしていた。
外の洗濯物を取り込みに行こうとした時、母が外に出ていくのが見えた。
後を追いかけると午後の猛烈な日差しの中、母は頭から塩をかぶっていた。
不可思議に思いつつ、その雰囲気に声をかけるのも憚られたため、洗濯物を取り込んで帰ってくると母はシャワーを浴びていた。シャワーから上がってきた母の顔色は幾分良くなっていた。
その後事情を聞くと、やっぱりなんか良くないアレだったらしい。

お墓参りの日から母が寝ている時に、白い着物の人が足元に立っていたんだそうだ。
白い着物を着て、長い乱れた髪の毛をたらし、うつ向き気味に立っているのがはっきりと見えた。
後ろ向きなのに、うつ向き気味でじぃっと上目づかいで母の足元のふすまを見ているのが解った。
1日目は後ろを向いて足元に。2日目はちょっと近くに。3日目はとうとうこっちを向いていたそうだ。
この時、2日目から父は趣味の釣りに出ていて、母は1人で寝ていたため本当に怖かったらしい。
1~2日目はまだがんばって寝られたそうだが3日目は恐すぎて、普段は呑めない日本酒をコップにあけて側において、時折舐めつつ朝まで居間のテレビをずっと見て過ごしたそうだ。

「やっといなくなった気がする!今日から寝られそう!」と爽やかな笑顔になる母だったけど、私はその話を聞かなきゃ良かったと後悔していた。

実は、母方の墓がある霊園にはいくつか怖い話がある。
真ん中にある像が歩くだの、数年に1度1本だけヤバい色の桜が咲くだのいう眉唾な話も多いが、その中に「夜中に霊園に行くと、昔墓を洗う用の水をくみ上げていたらしい古井戸の横に白い着物の長い髪の女性の霊がぼんやりと立っていることがある」と言う話があった。小さい頃から何回も行っている場所なので、井戸は無い事は確認済みだったんだ。だからその話も噂に尾ひれがついただけだと思っていたんだ。
本当にいらっしゃったのか…と恐ろしくなった。
もちろん母はこの話を知らなかったらしく、後に話すと驚いていた。

その次の年からは、絶対天気が良い時に墓参りに行くようになったのは言うまでもない。

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