誰かピアノ弾いてた?

私が小学校高学年の頃。

学級レクで「夏の夜の学校に泊まり込み」という企画があった。

土曜日の昼からPTAと児童皆で手分けして、体育館を掃除して、バーベキューの設営をして、その後児童は体を動かすゲームへと流れて行った。
バーベキューの後、夏の夜、学校に泊るといったらもちろん肝試しは外せない。
係の親たちも気合いを入れて結構準備をがんばっていた。結構怖かった。

まずチーム分けして、「学校の怪談」の映画を見る。ある程度映画を見たところから順番にスタート。
校内をぐるぐる歩かされる。私たちは最後から2番目。
音楽室→理科室→理科室前廊下→トイレ→体育館→体育館トイレ→体育館地下→外→1F教室でゴールだったと思う。
音楽室では急にスピーカーから音楽を流される。理科室では入った瞬間上からざわざわした物体が落とされる。理科室前には髪を振り乱し四つん這いでカサカサカサと移動する女性(うっかり近づくと床で冷えた、冷たい手で足をがしっとつかまれる)。トイレでは水が入った薄いゴム手が所狭しと張り巡らせたロープにぶら下がりぷらぷらしている(たまにばしゃーんと落ちてビビる)。体育館ではどこからともなくボールが飛んでくる。体育館トイレにはノイズ音を流しゆっくりと振り向こうとする白い着物の女性。体育館地下には何もなかったが、倉庫になっているもので陰から何かでてきそうで怖い。
結構ビビらされて泣かされる子が居たり、妹弟がいる連中が泣きだした下の子をかばって走って行く羽目になったりと結構大成功だったようだ。今だったらノリノリでやり過ぎって関係各所から怒られそう。

肝試しの後、仕掛け人側(四つん這い女)だった母に「気合い入れ過ぎじゃ?」と尊敬の気持ち半分、恐怖半分で話しかけた。
「多分○○ちゃん(私の友達)の足、凄い勢いでつかんじゃったー。転んだりとかしなかった?大丈夫?」「大丈夫ですーびっくりしましたけど!」「怖かったですー!」「まさかお母さんだとは思わなかったわー凄い勢いで逃げたわー」と母と友達とひとしきりきゃいきゃいした後、「ねぇ、あんた達ピアノ弾いたりとかしてないよね?」と母に言われた。
まさか、私たちにそんな余裕はない。そして音楽を流す係の人がいるはずだからピアノ弾いたりする子がいたら知ってるんじゃない?と言ってみた。
「あんた達が来る前にピアノの音がかすかに聞こえたから、誰か弾いたのかな?と思ったんだけど、違うか」

この言葉を聞いた時に変だな、と思った。母は2階の東端に居た。音楽室は3階の西にある。そして、音楽室はドアをがっちり閉められるというトラップもあったから、あの分厚い扉から音が漏れるはずがない。
散々ビビらされた後にとどめを刺された気分だった。

結局ピアノを弾いた子はいなかったらしい。音楽室係の人はピアノの音は解らなかったと言っていた。
しかし、理科室配備の母ともう1人の人はピアノの音を聞いたらしい。

後は「体育館で走りまわってる子がいるような感じがして寝れなかった。学校って常に子供がいて、生のエネルギーがあるところだから、しょうがないのかなー」って言ってたのが妙に怖かった。今思うとそんなに怖くないけど。

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