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cheer for "SELECTION PROJECT" #12 セレプロアニメ第9話「貝殻の中の私」感想

「お姉ちゃんのこと、よろしくね。お姉ちゃんが大好きだったステージにもう一度連れて行ってあげて――」

鈴音の胸に宿るのは伝説のアイドルにして玲那の姉である天沢灯の心臓だった。予期せぬ真実の到来に戸惑う鈴音と玲那。
同時に最終審査に向けての投票も迫っていた。
様々な思いが交差する中、決着の時が訪れる。

ということでセレプロアニメ第9話の感想です。

※記事中の画像はSELECTION PROJECT公式サイトより引用しています。
※ややこしくならないよう劇中のオーディションは「SELECTION PROJECT」、現実のコンテンツ全般は「セレプロ」表記にしています。

お品書き

1.第9話の見どころ

「何も言うことはありません。とにかくBパートを見て感じてください」

2.夢見た場所は

玲那は自らに向けられた問いに窮していた。
問いかけたのは天沢灯。玲那は歌が好きなのか、心から歌いたいと思っているのか――?
隣にいる鈴音は歌うのが本当に楽しそうだ。まるで在りし日の天沢灯のように。
……そんな夢の中でさえも、玲那の心に平穏は訪れない。

一方寮の部屋では詩と逢生がインタビューについて話していた。
さすがの詩も緊張しているようだが逢生はどこか達観したようなアドバイスをしている。逢生の場合、陸上競技を通して順位付けされることが日常的であったことも影響しているのかもしれない。

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鈴音や逢生の投票先を執拗に確認したがる詩

再びインタビュー再開。まこ、詩、野土香が収録を行った。野土香はやたらジンギスカンを推していたがどうも切実な想いがあったようである。

候補者たちを家族のように想っているまこ

これで玲那以外は全員インタビューを終えたことになる。
8人の意見は概ね二つに分かれていた。

「ルールである以上はチアーズのためにも選抜を受け入れる」
「これまで9人でやってきて仲間だと思っているから投票したくない」

どちらも正しいがゆえに彼女たちは迷っていた。オーディションである以上誰かが脱落するのは当然のことだ。
しかし1次審査でユニットごとに苦楽を乗り越えたこと、2次審査で鈴音の秘密を共有しサマーソングを完成させたこと、それらは今の彼女たちを形作る思い出になっていた。
そう簡単に割り切れるものではない。

誰かを笑顔にしたくてアイドルを目指したはずが、
誰かを泣かせる選択を強いられていることに憤る広海

玲那はというと外でひとり物思いに耽っていた。
そこに現れたのはサニーさん。サニーさんは寮母として毎年「SELECTION PROJECT」に挑む少女たちを見守ってきたらしい。
そんなサニーさんから見ても玲那は少し変わっているとのことで、「貝殻をピタッと閉じたまま、真珠を隠したまま見せようとしない」と独特の表現で玲那を評価していた。
そしてサニーさんは玲那の自室のごみ箱に捨てられていた天沢灯の写真を手渡した。

自分は真珠ではなく石ころかもしれないと話す玲那

3.終幕、そして…

玲那の胸に去来するのは夢の中で聞いた姉からの問いかけ。そして鈴音の言葉、鈴音に向けた自分の言葉。

玲那は、鈴音に言わなければならないことがあった。

(9話挿入歌の「ENDROLL」。玲那の複雑な心情が表現されています)

レコーディングスタジオにいた鈴音を見つけ、彼女にぶつけた言葉について謝る玲那。
鈴音としてもドナー家族とレシピエントは本来関わってはいけないルールであり、不可抗力とはいえルールを破ったことを気に病んでいた。

臓器を提供した人の家族と移植を受けた人は、お互いの名前や住所を知ることも直接会うこともできません。
移植を受けた人が健康を取り戻した喜びやドナーへの感謝の思いは、サンクスレターにして渡すことができます。
その手紙や絵は、JOTを通して、個人情報が伝わらないように配慮されて、受け渡しが行われます。
何年も何回も続いて、お手紙のやりとりのようになっている人たちもいます。

公益社団法人 日本臓器移植ネットワークHPより引用

玲那が鈴音に対し手紙を出すことを提案したのもあくまで一般的なルールに則っての話であり、まさか自分がレシピエントとこんな形で関わるとは全く思っていなかっただろう。
そんな状況で出た言葉が結果的に鈴音を責めるような形になってしまったのは無理からぬことである。

続けて玲那は自分自身の本心を打ち明ける。「SELECTION PROJECT」に挑戦したのはあくまで姉の足跡を追っただけであり、歌が好きなわけではないと。(某サイヤ人に「ほんとにそうか?」と聞かれそうだが)
だからこそ鈴音が天沢灯と同じステージに立つに相応しいと気づいてしまった。鈴音のことを誰よりも評価していたのは、「Suzu☆Rena」として同じ時間を過ごした玲那だったのだ。

そしてドナー遺族としての本心。大好きな姉の心臓を受け取った人に出会えたことの嬉しさ。それもまた嘘偽りない玲那の気持ちで、普段冷静な彼女が取り乱すほど様々な感情が渦巻いていたことがわかる。

止めどなく涙を流す玲那へ、感謝の言葉とともに苺柄のハンカチと例の手紙を渡す鈴音。受け取った玲那は今までのどんな声よりも優しく呼びかけた。

「鈴音さん…ううん、鈴音」

鈴音を抱きしめた玲那は想いを託す。鈴音を応援していること、鈴音が目指す先に姉も連れて行ってほしいということ。
言うべきことを言ったのか、玲那はインタビューの収録へ向かった。まるで別れを済ませたかのような雰囲気。

食堂に戻った鈴音は玲那以外のメンバーと玲那のインタビューを見ることに。
玲那はインタビューの中で姉である天沢灯について言及していた。今までは頑なに自分から触れようとしなかった話題なのに。
玲那は姉が大好きであるが故に、自分が姉のようになれないということを知っていた。そしてそんな自分がアイドルを目指すことはできない――玲那のインタビューはチアーズへの感謝のあいさつで締められていた。

インタビュー動画を見た候補者たちは困惑する。凪咲は玲那がオーディションを諦めていて自分に投票されやすいようにしたのではないかと推測するが、そうだとしてもまこをはじめとする「投票したくない派」はすんなり受け入れられない。むしろ広海は玲那のインタビューを見たことで、誰かが欠けてしまった状態でステージに立っても笑顔でいられないとはっきり自覚したようである。

反対に栞や詩は玲那にその気がないのであれば彼女に投票するのもひとつの選択肢であることを示す。どの道誰かに投票しなければならないのだ。

玲那を心配する鈴音。果たして鈴音は誰に投票するのか?

玲那の真意はわからないまま、無情にも投票の時は訪れた。
祈るように、あるいは叩きつけるように、投票用紙を箱に入れる9人の仕草は様々だった。
脱落者は一体誰になるのだろうか?9人が出した答えが今明らかになろうとしていた。

お姉ちゃんの写真を捨てるのはやっぱつれぇわ