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映画時評2022&2023

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2022年10月から2023年12月に劇場公開していた映画の感想記、時評をまとめたものです。
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2023年11月の記事一覧

映画時評『首』

この映画、すごく語りづらくないか? というか語りやすすぎて困る。 簡単にビートたけしの自伝的要素とかが見つかってしまうので、戦国の生き馬の目を抜く世界と、お笑いの世界、血と暴力の凄惨な地獄が、ドス黒いユーモアと哄笑、冗談と紙一重であることなど、すぐさま結びつけて語りたくなってしまう誘惑がある。 でもそれを持ってして、鬼の首を取ったような気分になっていると、すぐさま茂助のように槍で串刺しになってしまう気がしてならない。 あらすじ時は戦国、織田信長配下の荒木村重が謀反を起こした

映画時評『ヒッチコックの映画術』

関東ではもう上映が終わってるころだろうと思いますが、地方では今ごろ『ヒッチコックの映画術』が上映しております。 本作は、そのものずばりヒッチコック映画についての映画ですが、少し特殊なのはヒッチコック自身にヒッチコックを語らせるところです。 当然ヒッチコックは死んでいるので、喋っているのはモノマネ芸人。喋る内容は、監督のマーク・カズンズがヒッチコック関連の資料を渉猟し、分析して作った脚本になります。監督によるヒッチコック批評のような側面も正直ある。 全部で6つのテーマに分けて

映画時評『火の鳥 エデンの花』

本当はデビッド・フィンチャーの『ザ・キラー』が観たかったのに、劇場公開が終わっている……。チクショウ、結構ショックだ。 なのでほぼノーマークだった『火の鳥』を観に行きました。 スタジオ4℃で、あの『ムタフカズ』の監督作品だということも、全く知らずにいきました。そして帰ってあわてて『火の鳥 望郷編』を読み返しました。 あらすじロミとジョージは地球から彼方、辺境の惑星エデンにロケットで降り立った。故郷から逃亡した二人は、生き物の気配さえないこの場所を、誰にも邪魔されない二人だ