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《書評》ノンフィクション

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小説じゃない本でも、娯楽として読むよー。
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#読書感想文

書評『ヴィクトリア朝時代のインターネット』トム・スタンデージ

本書は1998年に出版された本で、2011年に翻訳、単行本化した書籍の文庫バージョン。 SF者ならタイトルを見ただけで、ある小説が思い浮かぶと思います。 タイトルの『ヴィクトリア朝時代のインターネット』とはずばり電信のこと。 本書は19世紀に誕生した発明である「電信」をめぐる小史であり、21世紀のインターネットに先駆けて、情報化とグローバリズムを体験した時代として19世紀を捉える。 テレグラフというのは、電報といえば僕はギリギリわかるのですが、モールス信号を使って打電して、短

書評『心の仕組み』スティーブン・ピンカー

そもそも手に取るきっかけは伊藤計劃の小説『虐殺器官』に端を発する。解説のあとがきで、作中のバックボーンとなる理論として紹介される文献の一つに、スティーブン・ピンカーの『心の仕組み』があったからだ。ずっと読みたいと思っていた本だったので、念願である。 ピンカーが試みるのは、人間の“心”ーその様々な機能の、科学的な説明である。 知覚、推論、感情、人間関係、芸術、宗教それらがなぜ、人間に備わっているのか、何の役に立っているのか。ピンカーが武器とするのは、『心の演算理論』と『ダーウ

書評 『論語』 孔子

本当は『荘子』が読みたくて、その伏線として『論語』を手に取りました。 『荘子』のなかで、『論語』を批判的に捉えるくだりがあるそうで、読み比べてみたかったのです。 『論語』は儒教の四書に数えられる、中国思想の古典で、2000年も前に成立し、時の試練を経てもなお、読み継がれる本の一つです。 日本においては渋沢栄一はおろか、「和をもって貴しとなす」の聖徳太子や(元は『論語』、あるいは『詩経』の言葉)吉田松陰、夏目漱石、幸田露伴とかとか、平安時代にはもう伝来しており、江戸時代には儒

書評『ホモ・ルーデンス』

小島秀夫監督が『メタルギアソリッドV』を完成させたあと、KONAMIを退社して、新生小島プロダクションとして独立したときに、“ルーデンスくん”というキャラをマスコットにして、エントランスに飾った。 ルーデンスくんは、もちろんホイジンガの『ホモ・ルーデンス』くんである。 ホモ・ルーデンスは“遊ぶ人”を意味し、ホイジンガは人間にとって“遊び”というものが文化よりも古く、遊びこそが文化を形作る因子なのだと論じる。 遊びを創造するゲームクリエイターにとっては、とりわけ魅力的な考え

書評 荒木飛呂彦の『奇妙なホラー映画論』『超偏愛!映画の掟』

『ジョジョの奇妙な冒険』は僕が中学時代にどハマりしたジャンプ漫画で、スタンドバトルのかっこよさ、能力を駆使して戦う頭脳戦に、まさに“シビレた”。 どれくらいハマったかというと、2013年当時『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』というPS3の格ゲーが制作され、発売日に買ったくらいです。 今日の観点からするとクソゲーに分類されるゲームではあるんですが、まだこの時点でアニメが始まっておらず、ゲームが発表されるまでの間、徐々に公開されていくPVで、初めてジョジョの本格的な映

書評『千の顔をもつ英雄』

この本を初めて読んだのは専門学生だったころで、ストーリーテリングの指南書の一環として読もうとしたのを覚えています。ハリウッドの三幕構成と合わせて、物語の基本骨子のようなものを解読したくて手に取りました。 しかし本書はお手軽な脚本術のハウツーなどではなかった。神話のメタファーを読み解き、そこに隠された本質を浮かび上がらせ、自己と世界とを調和させる術を教える。そういった本なのではないだろうか。 著者キャンベルがこころみたのは、フロイトやユングの精神分析を援用し、神話の象徴を読み

書評『神話の力』

古今東西の神話を比較研究し、その象徴的意味を読み解こうと試みた人物は、僕の知るかぎりでは、C・G・ユングが最初だろうと思う。ユングは神話のなかから“元型”と呼ばれる人類が普遍的に持っているシンボルを見つけ出し、名前をつけた。そしてさらに後、ジョーゼフ・キャンベルという神話学者が神話のプロット、ストーリーに埋め込まれた象徴を読み解き、“英雄の旅”と呼ばれる構造を見事に浮かび上がらせた。 キャンベルの最も有名な著作である『千の顔を持つ英雄』では、錆び付いた神話のメタファーを現代

書評『多読術』

松岡正剛といえば『千夜千冊』をやっている人で、気になる記事があったらつまみ食いする程度に知っていた。ふと、何者なのか気になって検索してみれば、編集工学者という聞きなれない肩書きに、イシスという学校を運営していることなど、さまざまな情報が出てくるが、何をしている人なのか分かりづらい。声も聞いてみたいなと思い、youtubeに何かないか再び検索をかけると、いくつかインタビューのようなものが出てくる。 物腰の柔らかい人で、ゆっくり喋る。どこか仙人のような佇まいがある。セイゴオ氏の

『ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』 読書感想

伊藤計劃氏がフェイバリットにあげる現代アーティストで、おそらくというか絶対、ウィリアム・ギブスンからの影響でコーネルにたどり着いたクチだと思います。(ギブスンもまたコーネルをフェイバリットに挙げている) そしてこの私も『箱の中のユートピア』、デボラ・ソロモンによる傑作評伝を読み終えたので、そのリレーの末端に加わろうと思います。 ジョゼフ・コーネルは1903年アメリカ生まれの現代アーティストで、寄せ集めという技法を使った、ボックスアートを多数手掛けた人です。 両手で抱えら