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《書評》ノンフィクション

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#千の顔をもつ英雄

書評『千の顔をもつ英雄』

この本を初めて読んだのは専門学生だったころで、ストーリーテリングの指南書の一環として読もうとしたのを覚えています。ハリウッドの三幕構成と合わせて、物語の基本骨子のようなものを解読したくて手に取りました。 しかし本書はお手軽な脚本術のハウツーなどではなかった。神話のメタファーを読み解き、そこに隠された本質を浮かび上がらせ、自己と世界とを調和させる術を教える。そういった本なのではないだろうか。 著者キャンベルがこころみたのは、フロイトやユングの精神分析を援用し、神話の象徴を読み

書評『神話の力』

古今東西の神話を比較研究し、その象徴的意味を読み解こうと試みた人物は、僕の知るかぎりでは、C・G・ユングが最初だろうと思う。ユングは神話のなかから“元型”と呼ばれる人類が普遍的に持っているシンボルを見つけ出し、名前をつけた。そしてさらに後、ジョーゼフ・キャンベルという神話学者が神話のプロット、ストーリーに埋め込まれた象徴を読み解き、“英雄の旅”と呼ばれる構造を見事に浮かび上がらせた。 キャンベルの最も有名な著作である『千の顔を持つ英雄』では、錆び付いた神話のメタファーを現代