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最後の新嘗祭 烏帽子を忘れた宮司さま

12月25日昨日までの極寒緩む朝8時鎮守八雲神社境内、前日までの強風の落ち葉の掃き浄めは途方に暮れるほど、切りが無かった。そして本殿の床拭浄め、総代代表と副代表は、本日必要な榊、紙垂の作成、総代会計と、新米総代の僕はお供えする神饌のための皿、酒器など選定し、洗浄。

鎮守の杜の八雲神社


神人供食の思想を基に、本年最後の神事のための神饌は、御洗米、御籾米、御塩水、御餅、御神酒、野菜、魚真鯛、海産、果物、菓子、昨年の記録写真などを参考に戸惑いながらも九基の三宝に敷紙の折り目も間違えぬよう、慎重に盛り付けさせていただいた。いわば神饌パズルである。

九基の神饌


神事を行なってくださる
遠江國三之宮 冨士浅間宮禰宜の宮司さまは、格式を重んじる厳格な御大老。先日の伊勢神宮新穀感謝祭静岡県下宮内宮特別参宮団のご先導を賜った折には、八雲神社を代表し参加した新人総代の僕に寄り添って御神楽殿の大々御神楽に至るまで親切丁寧にご解説くださった優しい方。古希を迎えた僕なんぞ、鼻垂れ小僧もいいとこであります。

静岡県特別参宮団


さて、お昼に総代代表が、確認のため連絡依頼いたしますと、なんと本日の予定をお忘れか間違えておられ午後三時の開式に間に合うのか心配しましたが、さすがに定刻前に大きな黒鞄でいらっしゃりほっとした。

社務所でお着替えの前に、神殿のあつらえを講評される例年の緊張の時です。九基の三宝の向き、序列、盛り付け、じっくり吟味。
先ず御神酒三宝で、二つの酒器の全面に空の盃二つを「これは空ではいけない、本来、濁酒無ければ甘酒を満たしてお供えすべき、なくば清酒の酒器だけにして取払いなさい」うわぁきました。

空の盃はいけません

次に塩水の三宝の前で足を止め「大皿のうず高く盛った塩、その左手に水器と、塩水であるから塩の左袖に水、これは宜しい」やった。

正しい塩水三宝

野菜三宝で「人参は本来葉のつく茎は上、天に向かってそそり立て、大根も同様。上端を切った丸蓮根をみて真ん中で二つに切り分け美味しそうな八の巣を充分神様にお見せし喜んでいただくべき」なるほど安定ではなく神様の食欲を想定するわけだ。果物三宝「林檎は茎が上で仕方なし、ただ蜜柑は、茎先を上に向ければいいというのではない、神様も直ぐ剥いてお食べになりたいはず、剥きやすいお心配り欲しい」と、悉くひっくり返し積み直された。ありゃりゃあ、野菜のとき葉茎を天に向けよと仰せであったのに食べやすいが優先事項なのか。しかも僕は蜜柑は茎側から剥く癖なのに。

人参逆向きの野菜三宝いけません



魚真鯛(秋大祭のとき大きすぎ三宝に収まり切らず麻紐で両端を括るに手間取ったので今回、小さめにした)「三宝収まって神殿に対し尾を向けてないね、腹を向けても無い、とても宜しい」ふむふむ。

ところが海産菓子合体の三宝にきて「先ず海産は野菜の前の序列、昆布寒天お菓子と共に盛り付けるはいかがなものか、ボリュームが無ければ干しひじき、海苔を増し寧ろお菓子は無くて宜し」そうきたかぁ、お菓子をやめ乾物海産だけの三宝ですな。懇ろに凡そ十五分。
ま、ありがたいご指導をいただいた。

海産菓子混合禁止



愈々、宮司さま、本装束にお着替え、鶯茶(オリーブ色)狩衣。向かい鳳凰と呼ばれる格調高い有職金文様だ。もうお声がけも叶わぬほど高貴な佇まいに変身。ところがです。何やらお顔が険しい。ここまでのお優しい鎮まる品格に御成では無い只今。何事であろう、「うむ。おかしい、いかん、烏帽子が、烏帽子がないっ」
総代一同呆気にとられそのご様子に「如何されました」「うーむ、ない。おかしい。車内をみてきてくれ」直ぐ走り探したがありません。(いやいや、烏帽子お忘れになるということがあるのか)先程まで懇ろにご高説くださった宮司さま、落ち着きません「うむ、おかしい、困った」(おかしくありません、忘れてきたのですよ商売道具の大切な烏帽子を)僕は黙してお伝えする。(ややがっかりしつつ)「いやおかしい、困ったなふーむどうしよう」埒があきません。意を決して総代代表が、「取りに行かれれば1時間は遅れますし日が暮れてしまいます。どうか本日は烏帽子なしでおねがいいたしますう」やっと観念され「そだね、特別そうさせていただくか、申し訳ないね」
ああ、烏帽子を忘れた宮司さまあ❗️

盗み撮り御免なさい


かくして神事は開式されたのであった。考えてみれば宮司さまも、ご高齢。神饌お運び立ち上がる毎に、お身体の軸脚が悉く揺れ安定感がないからはらはらする。そして今日は烏帽子のない宮司さまの祝詞。たいへんなお仕事であるね、でも今日は人間らしい親しみが湧いたような僕の思い。本殿開扉の階段で、あの神饌三宝ごとバランス崩しずっころがれたらなんとしよう。(いけない。妄想好きな僕はわるい総代)

最後に参加者の大祓の儀を賑々しく、いつもより丁寧に、大祓祝詞も永く奏上なされたと思ったのは僕だけではなかろう(宮司さまの心理分析をしているのでは、な〜い)ありがたいこと。其々にくだされた細竹に麻紐で括った紙垂がいとかわゆく想える大麻(おおぬさ)身体の隅々よくないところなど祓い一年の感謝を込め、僕は躰の内からのエネルギーをおおぬさに向け、息を吹きかける。「うぉ〜お〜」と……そして神前で手折り祈祷する。

やってしもうた❗️
皆さんも宮司さまも、僕の雄叫びに驚き、そして微笑みのお顔で僕をみなすった。最後に来る年の弥栄を祈念し乾杯、御神酒を小皿に注ぎ舐め簡単な直会の儀としたのであった。感謝。

ドレスコード^_^

お後がいけない
片付け中に義母から電話!
「どこにおる?夕飯は!?
夕飯が無い!」
昨日夕飯はありもので食べるから心配いらないと、確か言ったはず。
ああ、もー、わかったよ丸亀製麺寄ってケイタするわ!
そしておさまりつかぬ僕はというと…

バーボンのショットに珈琲

安心してください。代行で帰宅しますた。

#大場章三
#新嘗祭
#八雲神社
#烏帽子

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