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信号待ちの物語

雨あがりの信号待ち。
まだ動いたワイパァ越しに、
覚束ない飛行で堕ちそうに浮遊する蝶羽が、目に留まった。

なんという蝶かは知らない。
きっと完全変態を成しとげたばかり。
ああ あぶない。

ワイパァに一瞬潰されそうな危険を察知して、あるだけの力で(ほんとにそう思えた)必死に浮いて道路の反対側の植え込みに羽根をやすめた。
それをみとめて少しうれしかった。

束の間の取るに足りぬ出来事に、小さな喜びを感じうる、自分はまだ正気でいられるんだ。  なんて思うよ。
でも蟷螂なんぞの夕食にならぬよう、重々気をつけて
いきるんだよ。

明日の朝には晴れて
堂々たる蝶の舞を披露なさい。
#大場章三
#蝶羽
#昆虫大好き

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