大喜利回答パターン

ド素人による、ド素人のための大喜利回答パターン紹介です。

さて、いまやテレビ番組の芸人さんだけでなくSNSなどで一般の方までもが、一問一答形式で面白く回答をする、いわゆる大喜利に参加しています。笑点はもちろん、IPPONグランプリやTwitterなどによって大喜利はもはや身近なものになっています。

一億総回答者ともいえる今日、「これは面白い!」と思われる回答は、はたしてどのように作られるのでしょうか。もちろん、センスによる部分が多く、ド素人の自分では、プロの芸人など天才的な方の発想法は記述できるものではありません。したがって、本稿では、発想の表現される形式である、回答のパターンに着目して、センスが働かない場合でも一定以上のレベルの回答を作る方法を考えます。

以下では、汎用性の高いものから紹介します。なお、汎用可能と思われるもののみを紹介するため回答パターンを網羅するものではありません。また、これらのパターンは組み合わせて使うのが普通であり、挙げられた例は組み合わせによるものも含まれます。

1.あるある

大喜利で最も頻繁に使われる形式の一つがあるあるです。それは大喜利の一問一答という形式による必然なのです。あるあるは短い言葉で、かつ、共感を得やすい。一問一答である以上、前提の共有が難しく、フリが利きにくいのが大喜利の難しさの一つです。しかし、あるあるを使うことで、その回答自身にもわかりやすい前提が埋め込まれるためにフリが加わってオチがわかりやすいのです。麒麟の川島さんがあるあるの名手です。

具体的な回答の作り方を書く前に、「あるある」といっても、直球パターンと変化球パターンに分けて考えることをことわっておきます。直球パターンとは、お題そのものを素材とするあるあるです。これに対して、変化球パターンとは、お題と一見無関係な別の何かを素材とするあるあるです。

たとえば、お題が「UFOが目の前に着陸。さて、何があった?」だとします。まず、直球パターンのあるあるを考えてみましょう。UFOに着目すると、円盤形であったり、光っていたり、色々な特徴がありますが、今回は最もシンプルに、乗り物であるということ注目してみます。たとえば、日常に引き付けて、UFO→乗り物→バス と連想します。そして、UFOの着陸というのはバスが止まるのと同じですから、バスが止まる理由を考えます。すると、「降車ボタンを押したから」だとか、遠足の場面で「吐きそうな子がいるから」だとかが挙げられます。これを、UFOに乗っているのが宇宙人であることを考慮して、「木星人が降車ボタンを押したから」「乗ってる土星人の一人が吐きそうになってるから」といった回答を導けます。同様に、「高速乗る前にトイレ行っといたほうがいいから」「シンプルにガス欠」「踏切上がるの待ち」や「会社から電話がかかってきたから一端止まった」「よく見たらドライバーが同級生だった」「やっぱりさっき犬跳ねたのは勘違いじゃなかったから」などの回答を作ることができます。もちろん、宇宙人に着目して「鳩山由紀夫を迎えに来た」なども考えられます。

次に、変化球パターン。変化球パターンでは、別の分野でのあるあるのうち、お題に適用しても回答として成立するものを使います。このパターンでは、CMや映画など、誰もが知っているもののあるあるを考えると成立しやすいです。お題に登場するもののうち、今回の主役はUFOですが、一般的に主役以外に注目して他のあるあるを応用するとよいでしょう。回答に使える場面が限られますが、発想の飛躍具合は直球パターンよりも変化球パターンに軍配があがるでしょう。たとえば、「徹子の部屋のゲストだった」「アイツのいる空港まで送ってくれようとして」「罠から助けてやったあのUFOだった」「今日から来る転校生の登校」「どうやら扇風機でやったワレワレハウチュウジンダが聞こえたらしい」など、が考えられます(直球パターンでも発想できるものも含まれます)。自分で出したにもかかわらず今回のお題ではこれが私の限界ですが、もっとすっきりと映画のワンシーンなどが当てはまる場合がたまにあり、ギャップがより大きくなる変化球パターンは覚えておくと絶大な威力を発揮します。

以上、直球パターンと変化球パターンを紹介してきましたが、ここで述べておきたいことがあります。それは、包含関係と確実性の問題です。

包含関係については、変化球パターンが直球パターンを含みます。直球パターンは、お題を分解し、その要素のうち一つまたは複数から連想したあるあるを回答とするものです。変化球パターンは、要素の分解を経ずに、お題と整合性のある、他の分野のあるあるを適用するものです。このとき、直球パターンで連想した結果と、変化球パターンのあるあるで採用した分野のあるあるとの一致が多々ありますし、お題との整合性が保たれるのはその一致があるときが多いです。しかし、直球パターンで分解した要素以外で、お題に"かする"分野があるとき、変化球パターンでしか対応できません。イメージとしては、要素ごとに目次がついた、あるあるを網羅した本が一冊あるとして、直球パターンは目次から該当するもののみを扱い、変化球パターンは全てに目を通して有用なものを扱います。

このイメージからもわかるように、決められた期間に回答を出そうとする場合、直球パターンのほうが効率的に、確実に回答を導けます。これが確実性の問題です。直球パターンで考えれば確実に回答ができますが、変化球パターンでいくら考えても直球パターン以上の回答がでないことがほとんどです。

2.構文・表現技法

大喜利でよく使われる構文があります。回答パターンによりけりですが、とくに先述のあるあるで顕著です。どのパターンでもいえますが、とくに構文・表現技法はストックがものをいうものですから、語彙や経験値に比例して上達します。今回はすべてを紹介するわけにはいかないので、いくつか紹介してその余は割愛することにします。

あるあるなどの構文として、「◯◯のことを■■と呼ぶ」などがあります。お題の主人公のもつ世界観を示すのに、何かが別のものに見える、思われる、ということは重要な情報です。

たとえば、「こいつロボットだな。なぜそう思った?」というお題に答えるとすると、主人公の一人はロボットです。ロボットから見て、あるものがどう見えるか。どんな場面でその捉え方が発露するか。ロボットがガソリンで動いているとすると、ガソリンは私たち人間にとってごはんのようなものでしょう。すると、ロボットはガソリンスタンドがメシ屋に見えるのではないでしょうか。そうだとすると回答の一つは「エネオスのことをメシ屋と呼ぶ」になります。これ自体を回答とはせずに、土台として使い、「エネオスの横を通るとき指をくわえてた」や「食べログの検索履歴にコスモ石油があった」だとか、飲み物として「ガソリンスタンドのことをドリンクバーと呼ぶ」だとかが考えられます。

また、接続詞や副詞をスパイスとして加えるのも常套手段です。日常的な表現になり、聞き手が親近感を覚えて感情に訴えかけることができるからです。「さては」「どうやら」「ほんのり」「うっすら」「めっちゃ」など。

さらに、比喩を「~方式」や「~風」と表現してコンパクトに回答する手法もあります。

3.質的・量的変化(時間軸の変化含む)

あるあるの直球パターンにおける分解により、あるある以外の回答も可能になります。お題の要素のうち一つまたは複数を変数として捉える回答です。お題が「この引越し業者、面倒臭い。どんな業者?」だったとして、段ボールの要素に注目してみましょう。段ボールの材質は紙ですが、違うと仮定すると「段ボールが氷でできてる」。段ボールの代わりに何か別のものだと仮定すると「荷物を棺桶に入れて運ぶ」「タッパーに荷物詰めさせてくる」のようになります。

また、量を変えても回答可能です。段ボールの数を変えて「荷物の段ボール全部三重になってる」「マトリョーシカ方式の梱包」、大きさを変えて「段ボールが部屋よりでかい」「段ボールがOLのセカンドバッグ大」などと回答できます。

さらに、時間を前後させるのも有効です。お題から登場人物がタイムスリップしたように考えます。段ボールだと「段ボールが明らかに使い回し」「段ボールに前の客の食器残ってる」「段ボールに『パグのオスです』って書いてある」などでしょうか。なお、業者というまっとうな主人公に着目して「呼んでないのに来る」「引越し先に不在票入れて帰る」などの回答が考えられ、お題の主人公をまっすぐ捉えて、その時間軸をずらすというやり方は、バカリズムさんが名手でしょう。

4.前提状況の変更

大喜利のお題は、一定の前提を示唆するものです。その前提のなかで行うことが多いのがあるあるや構文の技術ですが、示唆された前提から逸脱・変更を加えて回答を作ることもできます。これはIPPONグランプリでよくある回答パターンです。

お題が「この幽霊、全然怖くない。どんな霊?」だとしたとき、「幽霊」という言葉のイメージによって、怪談やホラー映画に出てくるような設定から発想しはじめるのが普通でしょう。BGMはおどろおどろしく、不気味なものがほとんどですから、そこに質的変化を加えると「出てくるときのBGMが郷ひろみ」や「出てくるときのBGM俺の着メロと同じ」などを発想できます。しかし、お題の前提は、登場人物のひとりが幽霊であることのみであり、幽霊を主人公として捉えるのではなく、むしろ脇役として捉えることができます。すると、他の幽霊も登場するとして「幽霊同士のキスを見せつけてくる」だとか「犬の幽霊を散歩させてる途中」だとかを発想できます。あるいは、友達と同視して「写真のときカメラマンやってくれる」なども考えられるでしょう。

5.コトバ遊び

お題の言葉をオヤジギャグ的に反復してみたり、もじったりすることや、お題の雰囲気よりもっと軽い、あるいはもっと重い響きをもつ音声を回答とすることがあります。オヤジギャグ・もじりは、音声として笑いどころがわかりやすく親しみをもって受け入れられやすいのです。

これに対し、響きの回答は、個々人の主観によるものですから、聞き手が共感するかどうか確実ではありません。しかし、プロの芸人はこれを用いて爆発力ある回答をしていますから、聞き手の共感の最大公約数を見いだしたのちは絶好の回答パターンになります。ワードとして強いものをストックしておくと有利でしょう(これが共感を得ることができるかわかりませんが、自分としては「見せしめ」や「もらいゲロ」「たらいまわし」などが面白く感じます)。

6.風が吹けば桶屋が儲かる

お題の要素が何らかの原因になり、因果の連鎖によって生じる極端な結論を回答とするパターンです。

「無人島に持っていきたいものランキング186位を教えてください」というお題ならば、無人島→人がいない→電車はいらない→駅はいらない→ 回答「改札」 という発想ができます。このように、結論が些末であったり極端であるほどギャップが生まれ笑いやすくなります。

7.まとめ

以上、大喜利における有力な回答パターンを紹介してきました。もちろんこれらはパターンを網羅しているわけではありません。しかし、これらのパターンは有力なものであり、ほとんどのお題は、これらのパターンを用いて回答することができると思います。本稿により楽しい大喜利ライフをお送りいただければこれに勝る喜びはありません。

省三

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