gardenー神田沙也加の死に寄せて②

※①からの続きです。

 死んだ……?

 まさか……。

 報道内容の切り替わりの早さに心も頭もついていかなかった。呆然としていると、演劇ファンの友達からLINEが届いた。

「誤報だって信じてる」

 短いやりとりのあと、友人のメッセージはそう締めくくられた。まったく同じ気持ちだった。

 そうだ、こんなこと事実なわけがない。

 だって今は舞台の全国ツアー真っ最中だよ?

 しかも本人が念願だったあの役だよ?

 プロとして絶対に千秋楽までやり遂げたいはず。

 親の七光りだって言われなくなってあんなに喜んでたじゃない。

 絶対、あんなニュース嘘だ。

 どんなに小さい粒でもわたしは彼女が生きていると思われる理由をくまなく探した。

 しかし、報道が覆ることはなかった。

 神田沙也加はこの世からいなくなってしまった。

 本当に、本当に信じられなかった。ちょっと待てばまたTwitterのタイムラインに現れて、好きな話をしてくれるだろうと思っていた。

 朝になっても、昼になっても、夜になっても「神田沙也加 急死」のニュースしか目に入って来なかった。

 信じられない。

 本当に、信じられない。

 週末が終わっていつもの平日がやってきても、彼女関連の報道ばかり追いかけていた。

 そして、今日。

 神田沙也加は小さな骨壺に収まってしまった。

 想像よりも小さな骨壺を見たとき、言い知れないショックを覚えた。

 だって、わたしが知ってる神田沙也加はこんな姿じゃない。歌って踊って、好きな洋服を着て、好きなメイクをして、アニメやゲームに夢中になってて……。

 しかし、もうそれは過去の記憶になってしまった。

 その夜、わたしは泣きながら彼女の歌を歌った。

 神田沙也加はもういない。

 


 多忙を言い訳に遠ざかっていたが、彼女の死が久しぶりにわたしを執筆へと導いてくれた。

 彼女の死の当日、なぜかWi-Fiが使えなくなった。noteを更新しようと思ってもネットが繋がらない。

 しかし、今まさに使っているこのタブレットがなぜか契約解除されていなくて(確実に手続きをした)、こうしてnoteの記事を書くことができている。

 久しぶりに、書きたくて書きたくてたまらなかった。

 神田沙也加という素晴らしい表現者がいたこと、

 彼女の才能が希有であったこと、

 そして、もがきながら必死に生きたこと。

 神田沙也加さん、ありがとう。

 あなたのおかげで、もう一度筆を執ることができました。

 今は寒くないですか。

 雪にまつわる映画であなたを記憶している人も多いですが、わたしは少しさみしげに綺麗な歌詞を歌うあなたが好きでした。

 あなたの歌の中で一番好きな歌詞を、哀悼の意の代わりに引用します。

 

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忘れないで

忘れないから

色褪せない永遠の人 

                         gardenより

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