魔王戦本戦1回戦【バックギャモン大会】第1部 自戦解説
試合前の準備
通常のバックギャモン自戦記であれば、局面を貼って解説などしていくのだろうが、それならただのクイズでよくないか?と思うので、私が実戦中に何を考えていたのか、私のギャモン観が出るような記事にしようと思う。もちろん局面もいくつか貼っていこうと思う。
まず、この準備の章は、試合の内容について全くと言っていいほどふれないので、早く実戦の内容が見たいという方は飛ばしてもらっても構わない。
さて、まず魔王戦とはINBC(インターネットバックギャモンクラブ)で最も権威の高いタイトル戦であり、INBCでギャモンを嗜む人にとってはあこがれのタイトル戦である。
予選を抜けるのもこれで4度目なので、「いい加減挑戦者になりたい」と珍しく意気込んでいた。おそらく、今までの大会で一番本気を出して臨んだ試合だったといえる。
私の言う本気とは、言ってしまえば禁断の必殺技の解放を意味する。それは、「ピップを数えること」「練習試合をすること」の2つである。
※ピップ・・・ゴールまでの距離。
私は普段ピップを数えないと公言している。超有名漫画HUNTER×HUNTERには念能力というものが存在する。念能力には「制約」と「誓約」というものがあり、自らに強い制約をかけ、誓約をすることで、より強い念能力が得られるのだ。私は双六ゲームであるにもかかわらず、ゴールまでの距離を数えないという制約を自らに課すことで、その他の部分の能力を高めてきた。しかし、それだけでは今回は勝てないだろうと判断し、制約を緩め、むしろ能力の幅を広げようと考えた。念能力には6つの系統があるのだが、変化系だけでは厳しいと感じ、強化系や具現化系にも手をだしたのだ。(もちろんメモリの無駄使いになってしまう可能性もあった。)
まじめな話をしておくと、伸びしろを残しておいた方が、ゲームは長く続けられると思うし、向上心は好きな時に開放すればいい。ただ、それが今だったというだけだ。ピップは数えた方が間違いなく強くなる要素なので、こういう時にこそ解放したい。
もう一つは、練習試合。今回は、twitterで直接DMを送り、対戦相手を選んで(いい言い方ではないかもしれません。すみません。)練習試合を行った。魔王戦の決勝トーナメントは4回勝つ必要があり、1回戦前は、純粋にギャモン力の高い相手、2回戦以降は対戦相手の系統と似た相手にお願いしようと考えていた。
今回練習試合をしてもらったのは、ぽてとさん、たからさん、hbkさん、すぎさんの4人である。
ぽてとさんは、私がギャモンを始めるきっかけを作った動画の作成者で実質師匠であり、かなりの強豪プレイヤーである。彼のギャモン生放送や動画を見れば間違いなく強くなれる。最近は、ギャモンから少し離れていたが、生配信でギャモンをやっていたので、ナイスタイミングだった。1戦目は久しぶりにギャモンをするという対戦相手の方が、こちらの気持ち的にも少し楽だと考えたからだ。ちなみに私はじゃがいもがあまり好きではない。
次にたからさん。たからさんは、私がはじめて参加したINBCの大会主催者、またまた強豪プレイヤーだ。最近INBCで見る頻度は少なくなったが、私のtwitterを常に監視していて、彼の話題を出すといいねをしてくる。私とかなりギャモンを遊んだプレイヤーの一人であり、英語禁止ギャモンをした際には勝ちを目指してあからさまに口数が減るという、勝利に貪欲な人だ。失礼かもしれないが、かなりライバル視をしているし、尊敬するプレイヤーでもある。
そして、hbkさん。彼も私との対戦回数がかなり多いプレイヤーであり、hbkさんの方が実力は上なのに、なぜか私が20回くらい勝ち越している。「バックマン飛び出しは相手に出目を使わせるからかなり得だ」というのを私に教えてくれた人であり、独自のセオリーやギャモン観を持っているので、話すだけでもギャモン力が上がる。長いものには巻かれず、最善を追求するプレイヤーだ。
最後の練習相手はすぎさん。INBCにおいて、ギャモンにおける数字やデータ、知識の引き出しが最も多いプレイヤーの一人ではないだろうか。9ポイントマッチというロングマッチを普段やらない私にとって、ポイントマッチの知識を教えてくれる最高の対戦相手といえる。ちなみに、私がはじめて参加したINBCの大会の対戦相手であり、本人は覚えていないかもしれないが、試合後に「後ろの枚数が偶数枚の方が割れづらいよ」と優しくチャットしてくれたことは今でも忘れない。冗談でバナナスプリットをすすめてくるため、「アウターは作れ」という格言をすぎさんから聞いたときに、まーたふざけてるよみたいな反応をしたのは内緒。
私と練習をしてくれた4人には本当に頭が上がらない。ここで改めて感謝を。
実をいうと、最高の順番で、最高の練習試合が組めたと思っている。順番に関しては意図したわけではないが、短期間で強くなるには一番効率のいい順番だったのではないだろうか。(理由はここに書くには余白が狭すぎる。)
1週間という期間で9ポイントマッチを合計6戦したわけだが(hbkさんとすぎさんには2回も戦ってもらった)、これだけのポイント数をこれだけの量こなしたのはおそらく人生ではじめてだろう。
そして試合当日。えいさんとの試合が7月4日(土)の夜21時、戦いの火蓋が切って落とされた。
なお、この日は風呂に入るのを忘れていて試合前に急いで入り、試合の10分前に何とか髪が乾ききった。
親父が戦った1ゲーム目
対戦中に最も後悔したのが、1ゲーム目。というより、1ゲーム目を後悔しなかったことが無いので、私の心の持ちようが悪いだけという説はある。対戦が始まったとたん心臓がバックバクし、かなり苦しかったが、練習試合のときも似たような感じだったので、特に問題はなかったと思われる。ちなみにこの試合は9ポイントマッチの試合である。
観戦枠はいぺさんがとってくれた。自らの試合の直後なのに、丁寧な観戦をしてくれたので、頭が上がらない。1ゲーム目の途中からではあるが、こちらのURLにて、実戦の様子を見ることができる。私の試合は1:01:23頃より。
https://www.youtube.com/watch?v=xSgS8gI1NGM
早速ゲームスタート。
えいさんに先手をとられてしまった。私はネガティブすぎるので、この時点で私のマッチ勝率は50%を下回ったとか考えてしまう。さすがにネガティブすぎるかと思うが、事実である。
さっそくよくわからない41を振ってしまう。
こういうのって、13から駒を一つ8にのせて(13/8)おけば最悪50点エラーくらいで済みそうなイメージ。24の駒を前に出す手(24/20)も考えたけど、保留した。
実際こんな感じ。17点エラーで済むし、展開もわかりやすくなりやすい。難しい手を好むのは玄人の発想であって、私は凡人でいい。
ちなみにエラーというのは、勝利を1000点としたときに、何点損をしたのかという値のことである。
そして平凡に進んだ次の一手。
覚醒モードの私はピップを数えていたので、現状4ピップ勝ち、動かした後に12勝ちになることはわかったので、24の駒を喜んで飛び出した(24/16)。その他の手は200点以上のエラーになる。
そして迎えたこの局面。ピップは97-108で私が11リードしている。
実はここで私のピップカウントにミスが発生する。私はランニングピップカウントという方法でピップを数えている。初手からダイスが振られるたびに、何ピップ離れていくか、リードするかを足し引きして計算する方法だ。ただ、私は引き算が得意でないのでどこかで計算を失敗し、この局面は13ピップ差だと勘違いしてしまっていたのだ。
上画像の局面でダブルをうつかどうかを悩む。ダブルとは倍賭けの提案で、このゲームの点数を2倍にしようという、いわゆる倍プッシュだ。ピップ13(実際は11)勝ってるから行ってしまえと、気軽にダブルを打った。相手は当然のテイク。ちなみに46点のノーダブル(ダブルを打ったことで46点のエラー)
そしてその5手後にはこんな局面に・・・。
気が付けばかなり苦しい形に。この局面の勝率はコンピュータ的にも52%しかない。ここでの私の考えは、「どこかで13や8を外す手があったのではないか」、「そもそもダブルが早すぎたのではないか」そんなことばかり浮かんでくる。かなり内容が悪かっただろうから、1ゲーム目は捨てよう、終わった後の言い訳として、私じゃなくて親父が打っていたことにしよう、とかわけのわからないことを考えていた。おそらく強豪プレイヤーが見れば、何言ってるんだこいつと思うかもしれないが、割と普段からこんな感じである。
そして最悪の出目を振ってしまう・・・。
著しく悪い出目ではないが、選択肢がある出目である。選択肢のない簡単な局面を望む私からすれば、最悪と言っていい。ぞろ目ならばどれほど楽だったことだろうか。8の駒を使って7の駒をヒットすることは確定である(8/7*)。しかし、残りの5の使い道が難しい。
そのまま7の駒を2に乗っけて安全を確保するのか、13から8に動かすのか。おそらくはその2択だろう。それぞれ動かした後の局面を画像で見てみよう。
前者のメリットは
①ブロットが1つであること。そして②この瞬間にヒットされる目が少ないこと(具体的には5通り)
その一方で13の2枚が逃げ切ることが難しいというデメリットがある。
後者のメリットは13の駒がほぼ逃げ切れること。
デメリットは①ブロットが2つあること。ヒットされるとギャモン負けまである。②この瞬間のヒットが6通りあること。
この2つの手を比較し、私は後者のメリットが大きいと判断。後者を選択した。
そして、相手のダイスが振られる・・・。
61。最悪の目である。一気に逆転された挙句、こちらのこのゲームの勝利はほぼなくなってしまった。ただでさえ内容が悪いと思っているゲームで、どちらかわからない2択を結果的に間違えてしまった。このときもう私は敗北を覚悟し、前者を選んでおけばという後悔でいっぱいだった。やはり親父が打っていたことにしようと改めて決心したのだ。
実際は、前者を選ぶと160点エラーだが、実戦中にはそんなことはわからない。61を振られたことを結果論だという人もいるが、解析的には正解だったことも結果論ではないだろうか。
このゲームはこの後ダブルパスとなり、相手に2点先行されてしまう。もはや気分は負けムードだった・・・・・・・。しかし、私はそこで練習試合のことを思い出す。私のために時間をとってくれた4人のためにも、このままではいけないと思い、本当に親父が打ってたことにして、私の勝負はここからだと思うようにした。
ちなみに、練習試合をやったのはこういうメンタル確保のための意味合いもあったので、大成功だったといえる。
ゾーンに入った2ゲーム目
9pポイントマッチ 0-2
親父と交代し、私が打ち始めた2ゲーム目はゆっくりとしたスタートから、次の図のような展開に。この時にはもう心臓のバクバクもなくなっていた。
難しい5ゾロだが、すでに5にアンカーを立たれているので、8/3と駒をヒットしていくのは損だと判断。20の駒を2枚10まで進めた。
実際はどちらでもよかったようだが、自信にあふれていた。完全にこの時はゾーンに入っていた。
そして迎えたこの局面。ピップは130-156で26リードしている。
ピップ優勢で相当勝率も高い、相手に点数をリードされていることから、ダブルを打った。相手は当然のテイク。
そしてその2手後、またもや試練が訪れる。
難しい43を振ってしまったのだ。この時はゾーンに入っていたので、まったく間違える気はしなかった。
11/7 10/7とリスクを残して駒を高らかに動かした。
5を振られたら大激痛である。しかし相手の陣地を見ると、20と22に一人ぼっちの駒が残っている。こちらもリスクを残して、形をよくした方がいいだろうと判断。もちろん安全にプレイする手もあった。実際の解析結果は次の画像だ。
解析的にも正解。ゾーンに入っているときは指運がかなりいい。
その1手後にまたもや試練が訪れるが、ゾーンに入っているので恐るるに足らずといったところである。ピップ118-137で19リード。
試練とはいったものの、体感的に答えは知っていた。ゾーンに入ると過去の経験すべてが私のギャモン力となる。
おそらく手は2択であろう。①11の駒を6と10に動かす手(11/10 11/6)②8の駒と4の駒を使って、3の駒を攻める手(8/3* 4/3)。
動かした後にピップは25勝っている。無理に攻めるより安全策の方がいい。これは理屈で説明することは難しい。まったく異なる2種類の比較だからだ。解析結果は次のようになった。
経験則から何とか正解したが、どちらでもいいような気はする。
そしてまた次の1手が難しかった。
13の駒を1枚外す手(13/6や13/10 6/2)と10の駒を6と7にもっていく手(10/7 10/6)の比較である。先ほどの局面と同じで、7と6の駒を使って3を攻める手(7/3* 6/3)はあまり良くないと体感的に感じた。
13を1枚残すと5通りの目で打たれてしまう。しかし、10の2枚を外すことで、次に3の駒を攻めやすくなることも考慮し、10/7 10/6を選択した。解析的にも50点ほど良かったようである。
このゲームはこのあと勝利し2点をもぎ取ることができた。ようやく互角の勝負ができる。お互い残り7点取れば勝利という、より緊張感の高まる展開へと進んだ。
次回へ続く・・・。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?