魔王戦本戦1回戦【バックギャモン大会】第3部 自戦解説
最悪な内容だった8ゲーム目
6-5の少しリードで迎えた8ゲーム目。
このゲームは振り返ってみると最もひどいゲームだった。おそらくこのゲームが敗着といえるだろう。接戦が続くとどうしてもミスが出てしまう。なんとこのゲーム3手目でミスが出てしまう。接戦のせいにししているが実力不足じゃね・・。
とりあえず2択に絞った。まず2択に絞るのが大事だと考えている。センター試験の地理とかは絞っていくよね??国語とか数学は大体絞らないけど。
まじめな話、2択に絞ってその中に正解手が入っているような状態にする練習を積んでおくと、エラーする確率が半分になる。お得感あるよね?エラー期待値も半分だ。
さて、ここで絞ったのは、13の駒を一枚安全にする手(13/8)と8の駒で相手の7の駒をヒットして、13から攻め駒を下ろす手(13/9 8/7*)の2つだ。自分の方が陣地強いし、序盤なんだから大体ヒットするのがいいとされている。ここで私は何をひよったのか、前者の攻めない手を選んでしまった。当然のように大エラーである。
この試合で一番のエラーになってしまった。このときのことを思い出せないが、相当ぶれていたように思う。というか疲れ果てていたといってもいい。そして次の1手。
ここでも2択に絞る。自分の3を作る手(8/3 6/3)と24の駒を動かす手(24/21 13/8)の2択だ。後から見ても難しいとは思うが、2択を外す試合は大体ダメ。これも外してしまう。
キレッキレの感覚はこのゲームでは一切なくなってしまった。今までの指運が良かっただけとか言ってはいけない。そしてさらに次の私の手。
これはエラーだが私にはまだ早い。というよりこれを正解できるようになるまで修練を積もうと思えないし、半分諦めかな。自分にはまだ早いと思った手はとことん捨てた方がいい。続けているかはわからないが、また1年後に見ればわかるかもしれないが今ではないと感じる。
3連続でエラーを吐くと何がおこるか。ギャモンに詳しい人ならすぐわかると思う。もちろんダブルが飛んでくるわけだ。連続で勝率を落としているんだから、相手が有利になるのは当たり前だよね。
そして私はこのキューブをテイク。観戦のいぺさんはパスがいいだろうと言っていたが、それが正しかった。テイクは50点のエラー。パスが正着だった。
第2部で書いた流れを重要視するとこういう悪いことも起こってしまう。自分では3連続で良い手をやっているつもりだったので、私の状況がそこまで悪いと思えなかったのだ。まさか3連続悪手だったなんて・・・。やっぱりクイズ大事だね・・・。
そしてこの後、相手の手番。次のような局面に。
2以上のゾロ目を振られるとギャモン負けをすることにあり、相手に4点取られて敗北することになる。後付けなら何でもかんでも言いたい放題だが、この瞬間、相手は1ゾロを振るだろうと感じた。こういう私の感覚はそこそこ当たる。そして・・・。
信じるかどうかはあなた次第。
そして、面倒なことにまだデュース。6-7で今度はこちらが不利になってしまった。
嫌な感覚を埋めつけられた9ゲーム目
6-7。私はあと3点、相手はあと2点で勝利である。
3手目にこの5ゾロ。そして私の手番で次の局面に。
喜んでダブルを打った。一応自戦記なのでまじめな話をしておくと、2a3a(あと2点対あと3点)のときの3a側のダブルはかなり打ちやすい。この局面は勝率56%しかないので、普通の点差ならダブルを打つことはない。ダブルを打たないと98点のエラーだ。
そして相手もさすがにテイク。
ヒットもできないし、あまりやれることがない。明確に悪い目である。とりあえず、陣地を作っておけば、ギャモン率も上がるだろうということで、あまり悩まずに4メイクをした。解析的にもまぁ問題無いだろう。
そしてこのゲームは最終的にランニングになり・・・
怒涛のゾロ目4連続での勝利。実はこの勝ち方、非常に良くない。ランニングの勝負にしたときに勝ててしまうという感覚が植え付けられてしまう。ピップ逆転などそうそう起こらないことに、期待してしまうのだ。ランニングの50%に勝てるかもという甘い気持ちが頭の隅に植え付けられてしまった。
実際この植え付けられた感覚により、次のゲームを落としてしまうといっても過言ではない。
甘すぎる10ゲーム目
8-7。こちらはあと1点で勝利だが、相手は2点取らなければならない。ちなみに、どちらかがあと1点の状態になったゲームではダブルを打つことができない。つまり、相手には2連勝またはギャモン勝ちが必要なのだ。私にとって、このゲームはギャモン負けしないように、なおかつ勝率を高めることを意識しなければならない。
ただでさえギャモン負けしたくない状態で迎えた相手の6手目。ピップは151-136でこちらが15負けている。
割とまずい目を振られてしまう。一気にこちらのギャモン負けが現実味を帯びてきた。そして、次の私の手番。
かなり難しい。オンザバーの駒を1で出れば、一瞬の安全は確保できるが後が怖い。ということで、とりあえず、オンザバーの駒は3で出ることにした。
問題は残りの1の使い道だ。6の駒を使ってヒットする手か8から7に安全に進める手の2択である。私の第一感はヒットして攻撃する手だった。ここでヒットすると被ギャモン率が上がってしまうことはわかっていたが、それ以上に私の勝率があがる。重要な局面なのでさらに思考する。
ここで頭の隅に植え付けられた、悪のささやきが私を誘惑したのだ。現局面はピップが負けているがせいぜい15ピップである。無理をしなくても、もしかしたらランニングで逆転できるかもしれない。ここを1点負けにしておけば、次のゲームで50%で勝つだけだ。
9ゲーム目に植え付けられた私の甘い気持ちが、8/7という安全策を選択させた。解析は次の通りだ。
そもそもヒットしても被ギャモン率はそこまで変わらないのに、勝率を大きく落としてしまっている。これは精神的な弱さからくる明確なやらかしだ。観戦枠のいぺさんもほぼ一目でヒットを考えていた。アカギと戦った時の浦部のようなものだ。ギャモン負けが見えるともう戦えない、トイツ落としで保留したのだ。
結果的にこのゲームは1点負けしてしまい、最終ゲームにすべてがゆだねられた。
勝利がかかったラストゲーム
8-8。お互いこのゲームに勝てば、マッチに勝利する。もう最初から1ポイントマッチでよくないかな。
そして私の3手目。
難しかったが、5ポイントは大事なのでとりあえず取っておく手( 13/9*/5(2) )を選んだ。観戦のいぺさんは4の駒も打ってしまいたいとのことだったが、ほぼ差はなかったようだ。
しかし攻めは決まらずアンカーを取られてしまった。そして次の局面に。
このとき私には攻めっ気があった。8に駒を残しても大丈夫だろうと、後ろの駒を飛び出した。解析的にも正解。
そして次の1手でも、似たような思考で、8に駒を残した。
序盤優勢だったこのゲームも苦しい局面を迎える。相手に次の2ゾロを振られてしまう。
このレベルの対戦相手になると、重要な局面で間違えることはない。ここで私は間違えてくれと願ったが、その時点ですでに負けているのである。
当然のように最善手を選ばれてしまった。かなり苦しくなってしまった。
そして終盤の終盤。私にチャンスが訪れる。
2を振ればほぼ勝ちである。そしてダイスが振られた・・・。
外してしまう。実はこのときかなり外す予感がしていた。ただし、次のチャンスでは相当ヒットできそうだと感じていた。これも後付けなので言いたい放題だが、考えていたこと自体は事実である。
そして4手後・・・。またもチャンスが訪れる。相手の手番で、ブロットができる展開になったのだ。
対戦相手のえいささんが、残った時間をかなり投入したのが印象的だ。私はその時間の間、次の出目は23か2ゾロか3ゾロだろうと考えていた。どうか23であってくれと願ったが、なかなかそうはいかないことも知っている。私が持っているかどうかだけの勝負になったのだ。
えいさんは時間を投入して、6を5に寄せた。私もその手で来るだろうと思っていた。解析的にも正解手である。
そしてこの盤面で私のダイスが振られる。
そして出た目は・・・
3ゾロ。残念ながら2は出なかった。ここでの最善手は22を逃げた方がわずかに勝率が高そうだということだけ判断し、私は投了ボタンへと手を伸ばした。これにより私の魔王戦敗退が決定した。
投了が早すぎではないかということについては、次の章で述べようと思う。
雑談
私が負けたことがネタバレにならないように、タイトルは雑談にしておこう。ここでは早めの投了について書こうと思う。
何故早めに投了するのかということについてここで述べようと思う。日本バックギャモン協会のルールでは、勝率がある状態でのセトル(投了)は禁止されているが、INBCでの大会では禁止されていないという点は知っておいてもらいたい。
まず先ほどの局面の私の勝率は2.2%であった。これはエラーに換算すると44点のエラーになるという点も知っておいてほしい。
第一に、私がギャモンをやっている理由は気分よく勝つためである。勝つためではない。たとえ話だが、順位しか意味がない麻雀があったとしよう。そこで、1000点あがったらトップの局面で、役満を狙うとトップが遠のいてしまうのは認識しつつも、無理に役満を狙った人がいたとしよう。その人は間違っているのか??間違っていないと私は考える。何を目的として、そのゲームをプレイするかは人によって大きく変わってくるからだ。その人が役満を目指して、仮に100%あたる牌を切ったとしても、トップを逃したとしてもその人の自由ではないだろうか??
上の画像の局面から勝利しても私はなんの喜びも感じないし、快くも思わない。こんなところから勝ってもなぁくらいの気持ちになる。これに関しては、私と勝負事の親和性が恐ろしく低いのだろう。
第二に、私のギャモン観だ。第二というより、こっちが本当の理由といったところだろうか。私はギャモンでの勝率がそこまで高くない。まじめに取り組んでいるバックギャモンエースでの勝率は半分を切っている。私はギャモンが弱いのだ。そんな私が、勝率が高い大会形式がある。それは、スイス式(いっぱい対戦する)や、ダブルイリミネート(2回負けたら終わり)の試合だ。何故勝率が高いのかは、負けてもいい試合だからだ。一回負けてもいい、この試合は負けてもいいと思いながらギャモンをしているからこそ、こういった試合は気楽にできるのでミスが少なく、勝率が高いのだろう。
実際に魔王戦の予選は7回中4回抜けている。これほど予選抜けしている人は他にはあまりいない(数えていないからわからないが)。大盤双六というリーグ戦では11勝4敗の成績を収めた。
もちろん短期の成績でしかないが、結果をほとんど残したことのない私にとって、「負けてもいい試合の勝率」が私のバックギャモンの唯一の記録といってもいい。この結果こそが私にとっての石なのだ。それほどまでに私の心は弱い。『世の中には結果より努力が大事って考え方もあるが指導者にも生徒にもそれは本当は苦しいんだ 「がんばった」も「きつかった」も風のように流れていってしまう 「結果」は石なんだ 「がんばった」を留めておいてくれる石』ちはやふるより
負けてもいい精神が無ければ、私の唯一の強みがなくなってしまうのだ。PRなんて所詮はどれだけ鍛えようとも、自分より上の人がたくさんいる。3点や4点とかを切らない限り、上には上がいて、自分自身だけの強さとはなりえない。負けてもいいから、2.2%くらいなら投了してもいいだろう、と考える。44点エラーなんて、ほとんど気にしないレベルのエラーだ。この44点のおかげでもっとでかいエラーを回避できていると考える。この気楽さを捨ててしまったら、私にどんな強さが残るのだろうか・・・。強みである予選抜けもできなくなってしまうだろう。そして、石を無くした私は、練習試合もせず、適当にギャモンをやって、本当に勝てなくなってしまうのだろう。
と書いては見たものの、おそらく論理的でもないし、科学的でもない。ただ、あくまで人間がゲームをやっている以上、その人の感情的な面や心の弱さが反映されるのは当然ではないだろうか。
最後に
ここまでの文章を読んでくれてありがとう。今後も機会があればこのような自戦記を書こうと思う。記事はすべて無料で書こうと思っている。本当に価値があると思ってくれて、なおかつお金を持っている人がサポートをしてくれれば十分だ。
それではまた会いましょう。
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