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すわ、万引き!?

こちらの語学学校通い始めの頃よく、フランスに来て一番びっくりしたことはなんですか、日本とはここが一番違う、と思ったのはなんでしたか? というような内容の質問を結構された。違い、はあるのが当たり前で、どれをどこを何をもって「一番」とすればいいのかわからない、というのが私の答えだった。びっくりしたこと。これも、「一番」ではないけれど、とにかくびっくりした。それは、フランス到着間もない頃のある日、大型スーパーの店内で起こった。地下の食料品売り場、一番奥の売り場に缶詰コーナーがあり、よく慣れていない私は、欲しいものが一体どこに陳列されているのか、とうろうろしていた。と、目の前に一人の若い女性が現れた。片膝をつき、大きなリュックの口をがばっと開けて、棚の缶詰をパカパカとリュックの中に詰め込んでいるではないか!! 店の奥の奥、辺りには私以外誰もいない。やばい、万引きだ。どうしよう。店員さんに言うべきか! しかしどのように告げればいいのか? そもそも私、話せないぞ。どうするどうする。見てみないフリをしていた方がいいのか? 自分が買うべきものそっちのけで、悩みまくっている間に、件の女性は立ち去ってしまった。もやもやしたまま、私は自分の買うものを手に、レジに向かった。「あっ」すると、件の女性、普通の顔で(当たり前か)リュックの中から缶詰や、他の商品を出してコンベヤーに並べているではないか。
そうです、リュックはただのエコバック。おかしな想像で、勝手に女性を悪人扱いしていた自分が恥ずかしい。でも日本にいた時は、仮にエコバックは持って行ったとしても、買い物かごかカートに入れてレジまで行って、そのあと自分のエコバックに入れ替える、と言うのが普通だと思っていたし、当時はまだまだ日本はレジ袋大国だったし、私には買うものを自分の持って来た袋に入れてレジまで行く、と言う発想が全くなかった。だから、あれは本当にびっくりした。そのあと、あちこちで観察を続けるにつれ、いや、皆さんのやっていることは非常に理にかなっているではないか、と思うようになった。自分の持って来たものに買うものを入れていけば、入るだけのものしか買わないし、結果、本当に必要なものだけを選択することになる。ふむふむ。と驚きは、納得に変わったのだった。
今ではすっかり慣れ、件の女性のように持って行った袋にぱかすか商品を入れている。

写真は、旅先で撮った、石で作られたチーズ。本当においしそう。








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