ケースレポートを英語で書く
作成日:初版2022年6月28日 最新アップデート2023年7月10日
Take Home Message
論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ を読む!
症例報告を書くことへの「モチベーション」を増やす
めんどくさいを減らすために「テクニック」を活用する
ケースレポートを英語で書くための流れ(実践編)とそれを成し遂げるための土台(モチベーション/テクニック編)に分けて記載しました。
実践編
1)下記の必読書を読む。症例報告の書き方からその意義までわかりやすく網羅されています。これだけあればいけるんじゃないかという最強の一冊です。症例をどのように選択するのについても記載されています。
他の参考資料
・どんな専攻医でも1年以内にアクセプトされる症例報告への取り組み方
単なる書き方だけでなく、書き上げるまでの戦略的なアプローチが記載されています。
・【若手医師向け】はじめてのCase Report投稿(投稿先など)
2)症例報告に関するガイドラインを読む(英語ですが、目を通しておく必要があります)。
3)症例報告の同意書を得る
例:精神科の場合ですが、日本精神神経学会のサイトが参考になります(同意書の書式もあり)
4)論文作成
・先行研究等を調べる:
上述の「どんな専攻医でも1年以内にアクセプトされる症例報告への取り組み方」のPhase2の図が参考になります。
・先輩たちに「こんな症例を経験したんですが、経験されたことありますか?」と聞いてみる。
・投稿先ジャーナルを決める:ジャーナルのホームページで症例報告が投稿できるか確認し、指導医と一緒に決定(後でも良いですが、先に決めておくとフォーマットや字数制限等が決定できます)
・前述の「論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ」も参考に、全体的な論旨を決めて、書き始める。論理構成等も同書が参考になります。
・指導医に原稿草案を見せる:スペルミスやtypo等がないかしっかりと確認してから見せましょう
・カバーレター作成し、投稿
*参考資料
Manuscript と Cover letter テンプレート(グーグルドキュメント)
Cover letter作成用のChatGPT(GPT-4)のプロンプト
*精神科領域のターゲットジャーナルの例(症例報告に関して)
PCN Reports
BMJ Case Report
Clinical Psychopharmacology and Neuroscience
Asia-Pacific Psychiatry
Journal of Autism and Developmental Disorders
他にも、Letter扱いなら受け付けてくれる雑誌もあるようです(例:Journal of Clinical Psychopharmacology)
モチベーション/テクニック編
人間心理として、新しいことを自分で発見し発信するというのは好奇心が刺激されて面白いです。症例報告もその一つです。しかし、症例報告を英語論文で書くことのプラスよりもマイナスが多いと、書く気が失せてしまいます。ですので、症例報告を英語論文で書く、という事に対する自分の中でのプラス面を増やし、マイナス面を減らすことが大切だと思っています。
プラス面を増やすとは、自分なりのモチベーションを上げることと同義だと思います。初めは上級医に言われて書き始めることも多いと思いますが、やらされている感じが強すぎると受動的となり、モチベーションもあがらず、ただの「作業」になってしまいがちです。
自分なりのモチベーションが高まってくると主体性が出てきて、「やらされている」から「やってみたい」に変わり、面白みが出てきます。そうなると、結果的にプラス面が増えます。
次に、マイナス面を減らすことを考えます。マイナス面も人それぞれではあると思いますが、一言で言うと、英語論文書くのが、めんどくさい、です。自分にとって、何がめんどくさいかを因数分解して突き止め(自分に正直になる必要があります)、そのめんどくさい原因をなるべく減らすためのテクニックが必要だと思います。
個人的なモチベーションとめんどくさいことを減らすテクニックやツールを以下にご紹介します。
モチベーション
1)臨床面
報告症例の理解が深まる
報告症例そのものだけでなく関連事項について知識が増える
社会貢献につながる
2)研究面
英語論文の書き方を学べる
論文検索方法が学べる
論文が書ける
今後の研究のヒントに出会えることもある
3)その他
次は、自分が後輩指導できる
英語の勉強になる
経験値が増える
CV(履歴書)が強くなる
論文書いてます、という響きがかっこいい
永遠に功績が残る
テクニック
1)英語で書くことに関して
これが日本人にとっては大きなハードルになると思います。ただ、2022年11月にChatGPTが使えるようになってからこのハードルも少し下がった気がします。
*英文執筆時の有用ツール*
ChatGPT
有料版のGPT-4がオススメです。
DeepL
言わずとしれた翻訳ツール
Grammarly
無料のスペルチェッカー
Academic Phrasebank
Manchester大学が提供するアカデミックライティングで使えるフレーズ集
ライフサイエンス辞書
その単語や言い回し、本当によく使うフレーズなのかを調べられるツール
*使い方の説明はこちらのnoteも参考になります。
2)文献検索に関して
PubMed
王道の文献検索ツール
Connected Papers
関連論文を可視化してくれるツール
Connected Papersの使い方の参考資料
<図解>関連論文を可視化するCONNECTED PAPERSの使い方
*無料版は月での使用回数に制限あるのでご注意を。
3)動画を倍速で観る
YouTube動画などを2倍速以上で観るツールとして下記がオススメです。
Video Speed Controller
4)習慣化する
症例報告作成は慣れてしまえば膨大な時間はかからないですが、最初はやはり時間がかかると思います。英文を書くに関しても、それを習慣化するくらいの気持ちで臨むと進捗が捗ります。
習慣化の方法についてのオススメは以下です。
小さな習慣(書籍):
【ベストセラー】習慣が10割|習慣化できないのは、〇〇を知らないから(YouTube動画)
5)共著者を巻き込む
共著者は指導医だけであっても良いと思いますが、もし一緒に症例を経験した同世代がいたら、一緒に書くのもアリだと思います。ただし、指導医以外の共著者を入れる場合は、相談しやすい、同じモチベーションがある、などの条件を備えた人がいいと思います。
6)指導医との人間関係を大切に
指導医との人間関係も大切です。原則、指導医はべらぼうに忙しい、という前提に立つことで、指導医の立場に立った対応ができます。その気配りが人間関係の潤滑油になります。
報・連・相、するときは事前に要点をまとめる
原稿草案を送る時はスペルミスなどないかはチェックして見せる
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