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40年たっても解らないことがある脳みそ

庄司薫「ぼくの大好きな青髭」を約40年ぶりに読んでみた。
なんて理屈っぽく回りくどい文章なんだ‼‼(笑)

そっか、庄司さんの文はこうだった。こんなのホントに読めてたのかなぁ、自分。
たぶん、途中何回も止まっては文節の最初に戻って、頭の中で「まあこんなところで手を打とう」みたいな感じの納得で消化して読んでったんだと思う。
だから作者の言いたい事を正しく理解したのかあやしいし、いや、きっと半分も解っていなかった。
だって、万人に(というか私にも)ハイハイ、ウン、そ~ねと解るような説明も謎解き?もない。自分で解釈するだけ。
そういうもんだと思いながら読んでいた。それとも解らないのは私だけだった?
このころの小説ってこういう、文章が難解で取っつきにくくて「読んであとは勝手に考えてくれ」みたいな感じの本が多かったのかもしれないけれど(個人的な思いでです)、
その中で、庄司さんの文章がかなり独特だったことも確かかもしれない、という気はしてくる。

でも、この読んでいて頭がこんがらがるような面倒くさい筆運び(やたらとカッコ書きが多くて『つまり』が何回も出て来る)が、大して回転の良くない私の脳みそを良い加減に刺激していたことは確かなのだ。
そして私が書く文章に今もカッコ書きが多いのは、もしかしたらこの時の庄司薫さんの影響だったの?とまで思えてきたおこがましさ。

確かに、庄司さんの本を初めて読んだ時には(「赤頭巾ちゃん気をつけて」だった)その一見親しみやすい文体が結構衝撃的だったし、親しみやすいくせに解りにくいというトンデモナイ文章にも、慣れると次第に魅了されていった。
一小節ずつ確かめるように読んで、解らない所もそれなりに自分の中に好きな形で伝わって来た。
つまり、その文章自体がキライにならないのだ。
だから薫くんを始め登場人物のことがすごく気になり、物語をどんどん追いたくなる。

もしかすると私が解らなかったのは、書かれているその時代背景だったのかもしれない。

赤頭巾も青髭も、舞台は1969年の東京。
まだ小学生だった私でも、東大のキャンパスで物々しい大放水をやっていたりヘルメットの大学生が機動隊と揉み合っているテレビ画面を見てたので、この時代の何かよくわからないけど若者達がまとまった凄いパワーとか、それが良いのか悪いのか、なんの為なのか意味も知らずにカッコいいような気がしていた。
それは中学生くらいになっても、世間ではシラケ世代と言われていたらしい自分たちとは違う、何か団結力みたいなものがあの時代の若者にはあったように思えて、漠然とわけもなく憧れたりした。

丁度その頃、私の学校に新卒で入って来た先生達がまさにその世代だった。
自分達と親世代の間にあるその世代(まだ団塊という言葉は知らなかったけれど)は、頭のカタイ年配の先生達とは違う親しみやすさがあって、それまでの苔むす?ようなお行儀の良い学校の雰囲気が少しずつ風通し良くなっていく感じがした。
その先生達が学生時代に特にヘルメットかぶってたわけでもないけれど、私が知らなかった頃の世の中の色々な風景や動きを目の当たりにして、一時代の移り変わりをくぐり抜けて来たのは確かで、その世代にしかわからない時代のうねりというか風?(うーん、こんなふうに書くとわけもなくカッコよくなってしまうんだけど)を身にまとっているような気がした。

ほら、なんか文章が庄司薫っぽくなって来た…(笑)。

まあ、あくまでも私の気のせいで盲目的な憧れだったかもしれないけれど、あの先生達が持っていた雰囲気には1人1人違うけどそんなバックグラウンドがあったのかもしれないと、今なら思う。

そして「ぼくの大好きな青髭」は、その、私が実際どんなものだったのか全然わからない頃の東京「新宿」を象徴としての時代や人達の変化を背景に描かれている。だから、初めて読んだ時から40年たっても解らないところは解らないのは、しょうがない。
解らないということが解っただけでも進歩かなと思う(ほんとか?)、40年後の脳みそで。

そして団塊の世代の親しみやすさとか優しさとか(あくまでも私の主観で語弊があるかもしれないけど)を通して、それはあの先生達だったり青髭に出て来る薫くんだったりするんだけれど、私が少しあとの世代として「たぶん自分にしか解らない何か」を少しでも受け取れたことがよかった。

…こうやってあいまいにボヤかすところも庄司薫っぽい。


「ぼくの大好きな青髭」を初めて読んだ時から40年以上たって、やっと自分の感じた事や考えてみた事を書いてみました。
なんか無意識にすごく庄司節を意識?しちゃってるのか知らないけど、にわかにリクツっぽくて解りにくいのは、書いてるのが私の脳みそだから所詮こんなものなのでしょう。しょうがない。
でも20歳の時の脳みそに、知らないうちにこんなにも庄司節が刷り込まれいたことが1番のビックリでした、とかはおこがましくて庄司薫さんやファンの方々に申し訳ないので、言わない。

庄司薫の薫くん四部作は
「赤頭巾ちゃん気をつけて」「ぼくの大好きな青髭」(この2つは再読してみた)と、あと黒と白「さよなら怪傑黒頭巾」「白鳥の歌なんか聞こえない」があるんですよね…
家には見当たらないんだけど、この際探してまた読んでみようかな。