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アリスのティンカーベル

谷村新司さんの訃報を知った時に、
真っ先に高校時代の友達2人のことを思い出した。

彼女達は中3の頃からまだブレイク前のアリスが大好きで、よく教室でハモっていた。
「明日への讃歌」「走っておいで恋人よ」「青春時代」や「愛の光」「星物語」「走馬灯」「さよなら昨日までの悲しい思い出」、、

それらは、フォークとも歌謡曲とも違う初めて聴く曲ばかりだったけれど、
いつの間にか、私もこっそり真似して口ずさめるくらいお馴染みのメロディーになっていた。

誰かが教室に持ち込んだラジカセを囲んで、休み時間にワイワイとみんなで聴いていた「セイヤング」の録音テープからは、昨夜の『天才秀才バカシリーズ』が流れていたし、
私がそろそろ深夜放送に目覚めるのも、このころの「チンペイさん」こと谷村さんのラジオが最初だったんだけれど、
アリスの曲は、アリスで聴くよりも先に彼女達のきれいなハーモニーとちょっとアリスっぽい?歌い方で、記憶の中に刻み込まれていった。

その2人、MちゃんとFちゃんは高校生になるとギターを弾いてフォークデュオを組み、アリスや赤い鳥、シグナルなどの歌を引っ提げて文化祭デビューした。
グループ名は「ティンカーベル」。
アリスの楽曲名「ティンカベル」から2人がつけた。

私は、白熱した後夜祭の体育館ステージの真ん前に、自前のショボいカセットテレコをデンと置いて録音係に徹し、アンコールのサクラになりみんなと盛り上げて、
演奏する2人を尊敬とあこがれのガン見で、いつもそのギターと美声のハモリに酔いしれうっとり聴いていた。
最後は卒業式の謝恩会で2人が歌い終えるまで。

数十年後、コロナ蔓延ステイホームの最中にその頃の録音テープが出て来た。
こんな貴重なもの、私だけが持っているより彼女達に返さなきゃと思い、早速2人に連絡してCDにして送った。

MちゃんとFちゃんからは嬉しいLINEがすぐに来た。

「ハズかしかったけど家族みんなで聴きました。またギターが弾きたくなったので、今度はサイレントギターを買ってしまおうかな、、」

「夜中にひとりでこっそりと聴きました。もうギターはすっかり忘れてしまって指が覚えているかもわからないけど、あの頃は練習し過ぎて指が切れて血が出てもまだ弾いて指紋が無くなってタコが出来て、、」

時を経て大人になった2人から、私の知ってる2人と知らない2人の面影が伝わってきて、少しキュンとした。

時に私は、友達も巻き込んで時空を飛びたがる。
でも、みんなにはみんなの尊い歴史と時間があるのだな。
私には計り知れないそれぞれの道が。(私にもある?)
そして、今もその道の続きにいるということが、当たり前だけれど何だかみんなウツクシイと思えてしまう。

長い時の経過の中で、
一瞬でも2人と共有出来た時間は大切な思い出なのだ。
それは今この時間にあっても。

彼女達がいたから、私はアリスの曲をたくさん知ることが出来たし、
Fちゃんが昔、
「ギターのコードを変えるときのネック(弦)がキュッ、キュッと鳴る音が好き」
と言ってたことを私は今も思い出せる。

あの頃の2人のギターには未だに到底追いつかないし、今も全然ぺーぺー(初心者)のポコポコ(弦の音)だけど、私も40周回遅れくらいで今ギターを練習してるよ。笑
そしてたまぁにネックの弦がキュッと鳴ると嬉しくなります。



谷村新司さんのご冥福をお祈りいたします