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2021年5月23日のこと:ルールからの解放とルールの失念 (スウィング・木ノ戸)

コロナ禍に入り長らく中断していたのを、ヤン・ソルさんらが「やれる人だけでやりましょう」と呼びかけ、今年3月に再開した東九条・高瀬川清掃。その2回目となる5月23日、ゴミブルー一同、前日までになんとか(川に入るための)長靴を揃え、初参加した。

……いや長靴を揃えるのはそれほど難しいことではなかった。呼びかけて、持っている人に持ってきてもらうだけだったから。それよりも日曜日の出動だったこともあり、京都市内各地に散らばる(つまりいろんなところに住んでる)ゴミブルーたちをピックアップしながら東九条に向かうという、沼田君による事前のスケジュール作成がとにかく難航したのだ。チェック、修正、チェック、修正の繰り返しで、僕も彼もへとへとになってしまった。

沼田君は人に分かりやすく書面化することやスケジューリングが、その資質として苦手なようだ。でもそれくらいできるだろう、いややって欲しい、それもやらなけらばならないとなると僕の仕事量が更に増えてしまう……といった思いから担当してもらっていたのだが、東九条でのプロジェクトも2年目に入り、いい加減「苦手は苦手」と諦めなければいけない。じゃあ、やはり僕がやるのか。辛いな。沼田君が素案を作成、そして間に西川君のチェックと修正を挟んで僕に……という流れができないだろうか。一度相談してみよう。

そもそも「各自○○を持って、○時に○○集合!」で通れば話が早いのだが、ゴミブルーたちにはそれが難しいのだ。増田さんも、京一さんもあちゃみちゃんも、ひとりで東九条の特定の場所にやって来るのは無理だろう。それはもう備わった能力の問題だから、人間の善し悪しとはまったく関係がない。でもだからこそ、何時に、どこでピックアップするか? という入念なスケジューリングが肝心になる。これはスウィングという組織の持つ、特徴的なアレだと思う。

さて、観測史上最速という梅雨の中休み。久しぶりの好天に恵まれたその日。
E9の楽屋をお借りして着替えを済ませ向かった集合場所、北岩本児童公園には想像以上の人がいて驚いた。はじめてお見かけする方も多く、東九条に関わる人の多様さにあらためて感じ入りつつ、「こういうものです」とゴミブルー名刺を配って回った。

日曜日に、たくさんの、いろんなところから人が集まって、ひたすら川のゴミを拾う。

「川を綺麗にする」というと地域住民で、というのが通常だと思うのだが、ぜんぜん通常ではない僕たちですら何事もないかのように一員にしていただき(自己紹介タイムすらない!)、その自然さに、あれ? 僕たちはなぜこんな格好をしているんだろう、素顔だったらもう少し話しやすいのに……などとぼんやり根本的なことを考えてしまった。

川に入ってじゃぶじゃぶ歩くのなんて、子どもの頃以来だ。
よく家の近くのドブ川に意味もなく入って遊んでたな。
川下の方に流れてしまっているのか、前回の清掃で粗方拾ってしまったのか、思っていたよりゴミは少ないが楽しい。遠いあの日の、ウキウキする感じはまだ死んでいない。うっかり転んでびちょびちょになるのもありだな。子どもの頃なら泣いちゃうところだが、もう大人だしヒーローだし、みんな笑って盛り上がるだろうから。

他の参加者の方のゴミ袋の中身が何となく気になり見つめているうち、あ! と気がついたことがある。そこには落ち葉や木の枝がゴミとして当たり前に拾われ、収まっていたのだ。

12年間、150回に渡り、地元・上賀茂でゴミコロリをしてきた僕たちにはいくつかのルールがあり、そのひとつが「落ち葉は拾わない(ゴミとみなさない)」である。それは落ち葉を拾い始めるとキリがなく、一向に前に進めず他のゴミが拾えないという経験を何回も積み重ね、これじゃあかんなといつしか定められたものだ。

そのルールが見事に染みついてしまっている僕たちは、高瀬川に浮かび流れる落ち葉も当然のごとくスルー。ルールって怖い。それが当たり前になってしまうと固定化されて動かなくなってしまう。いやいや、ここは上賀茂ではないし、東九条だし、何しろ川の中だ。拾おう、みんな! 落ち葉や木の枝も拾って普通に川を綺麗にしよう!

それは長年のルールから解き放たれた瞬間だった。

ともあれ見た目とは裏腹にシャイなゴミブルーたちは、やはり目を皿のようにしゴミを探し、拾っているときがいちばん楽しそうである。そうそう、そうじゃなきゃ続かないんだよなあ。

心地よい疲労感に包まれながらの帰り道。
「自己紹介なかったの良かったよねー」と、沼田君としきりにうなずき合う。初対面の自己紹介は当たり前に緊張するし、できればナシでいければそれに越したことはないし、今日も何のストレスもなく、自然とはじまってさすがだったよねーと。

けれどその夜、そんな気持ちをFacebookに書きとめたら、ヤン・ソルさんからメッセージが入っていた。

「今回、自己紹介を完全に失念しておりました。次回は必ず!」

まさか忘れていただけだったとは。
でも猶更ステキである。

2021年5月24日
木ノ戸昌幸


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