スイス金融界の大混乱!アーキェゴスとグリーンシルの破綻でクレディ・スイスが危機に

スイス金融界で起きている大きな動きについてお話ししたいと思います。最近、アーキェゴス・キャピタル・マネジメントとグリーンシル・キャピタルという2つの企業が相次いで破綻しました。これらの企業はどちらもクレディ・スイスと密接な関係にありました。そのため、クレディ・スイスは巨額の損失を被り、経営不振に陥っています。そこで、同じくスイスの金融大手UBSがクレディ・スイスを買収する計画を進めているというニュースが飛び込んできました。この記事では、アーキェゴスとグリーンシルの破綻の原因や影響、そしてUBSとクレディ・スイスの買収交渉の内容や見通しについて解説します。

アーキェゴスとは?

アーキェゴスは、ビル・ファン氏が2013年に設立したファミリー・オフィス(個人資産管理会社)です。ビル・ファン氏はかつてタイガー・マネジメントというヘッジファンドで働いていましたが、2008年にインサイダー取引で有罪判決を受けたことで業界から追放されました。その後、自分や家族の資産を運用するためにアーキェゴスを立ち上げました。

アーキェゴスが破綻した原因

アーキェゴスは、自分や家族の資産だけではなく、多くの銀行から借り入れた資金も使って株式やデリバティブ(派生商品)などの投資を行っていました。特にデリバティブ取引では、自分が持っている株式よりも多くの株式を売買することができる契約(エクイティ・トータルリターン・ スワップ)を利用しており、高いレバレッジ(借入比率)をかけて巨額な利益を得ていました。
しかし、2023年3月末ごろから米国や中国などで上場しているメディア関連企業(バイコムCBSやBaiduなど)の株価が急落し始めました。これらの企業はアーキェゴスが大量に保有していた銘柄でした。株価が下がるということは、アーキェゴスが契約した銀行側から追加的な担保(マージンコール)を要求される可能性が高まることを意味します。
実際にそうなった場合、アーキェゴスは自分が持っている株式や現金などを売却して担保不足分を補填しなければなりません。しかし、アーキェゴスは複数の銀行と同じような契約を結んでおり、それぞれの銀行がマージンコールを出した場合、アーキェゴスはそのすべてに応えることができませんでした。そのため、銀行側はアーキェゴスが保有する株式やデリバティブのポジション(売買契約)を強制的に解消することにしました。これにより、市場に大量の売り注文が出され、株価はさらに暴落しました。これがアーキェゴスの破綻の原因です。

グリーンシルとは?

グリーンシルは、レックス・グリーンシル氏が2011年に設立した企業間金融(サプライチェーン・ファイナンス)を手掛ける会社です。レックス・グリーンシル氏はかつてモルガン・スタンレーとシティグループで働いていましたが、自分のビジネスモデルを実現するためにグリーンシルを立ち上げました。

グリーンシルが破綻した原因

グリーンシルのビジネスモデルは、企業間で発生する未払い債権(インボイス)を買い取って現金化することでした。例えば、A社がB社から商品やサービスを受け取った後、B社からA社に送られる請求書(インボイス)には支払期限が設定されています。しかし、A社はその期限までに支払うことができないかもしれません。そこでグリーンシルはB社からインボイスを買い取ります。そしてB社に現金を支払います。その代わりにA社からインボイスの額面よりも少し多くの金額(手数料)を受け取ります。
このようなビジネスモデルでは、グリーンシル自身も資金調達する必要があります。
そこでグリーンシルは自分が買い取ったインボイスや将来発生するインボイスを証券化(パッケージ化)して、投資ファンドに売却することで資金調達を行っていました。特に、ドイツの金融大手ガンマ・バンクが運営するファンド(ガンマ・サプライチェーン・ファイナンス・ファンド)はグリーンシルの最大の顧客でした。このファンドはグリーンシルから証券化されたインボイスを買い取り、その利回りを投資家に還元していました。
しかし、2023年2月末ごろからグリーンシルのビジネスに疑問が持たれ始めました。まず、オーストラリアの保険会社がグリーンシルのインボイスに対する保険契約を更新しないと発表しました。これは、グリーンシルが保険会社に提出したインボイスの一部が偽造されている可能性があるという疑惑が浮上したためです。次に、英国の監査会社KPMGがグリーンシルの財務報告に不正な点があると指摘しました。これは、グリーンシルが実際に存在しない未来のインボイスも証券化して売却していることが発覚したためです。
これらの事態を受けて、ガンマ・バンクはグリーンシルから証券化されたインボイスの買い取りを停止することを決めました。これにより、グリーンシルは資金繰りが悪化しました。
そのため、グリーンシルは英国の裁判所に自己破産を申請しました。これがグリーンシルの破綻の原因です。

クレディ・スイスが危機に陥った理由

クレディ・スイスは、アーキェゴスとグリーンシルの両方と深い関係にありました。アーキェゴスに対しては、エクイティ・トータルリターン・ スワップの契約を結んでおり、グリーンシルに対しては、証券化されたインボイスを買い取るファンドを運営していました。しかし、アーキェゴスとグリーンシルが相次いで破綻したことで、クレディ・スイスは大きな損失を被りました。
まず、アーキェゴスの場合、クレディ・スイスは他の銀行よりも遅れてポジションの解消を行ったため、市場価格が下落した後に売却することになりました。その結果、クレディ・スイスは約50億ドル(約5500億円)の損失を計上しました。次に、グリーンシルの場合、クレディ・スイスは自分が運営するファンドからグリーンシルから証券化されたインボイスを買い取っていたことが判明しました。これは、ファンドの投資家から信用問題が発生したインボイスを隠すためだったと見られています。

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