所沢市まちづくりセンター設置条例(案)第7条第2号を追う
例によって9月13日(金)の本会議に間に合わせるつもりで書いているので、記事のクオリティについてはご容赦いただきたい。
この記事で話題にする「所沢市まちづくりセンター設置条例(案)」(以下「まちセン設置条例(案)」または単に「条例(案)」という。)は、現在開催されている所沢市議会2024年9月定例会に上程されている議案第92号「所沢市まちづくりセンター設置条例制定について」にて新たに制定が提案されている条例案だ。この案には旧条例と比較して、市の公民館やまちづくりセンターの使用が「政治的活動又は宗教的活動に使用するおそれがあるとき」には不許可になる、という旨の条項が追加されている。
本題に入る前に筆者の意見を述べておく。広範に解釈可能な今回の権利制限の条項について、私は反対である。民主主義社会においては、我々の生活も、言動も、一挙手一投足も、そして存在自体も、政治とは不可分である。ここにおいて「政治的活動」とは何を指すのか? 市の総合計画でも踏まえられている SDGs を学ぶことは「政治的活動」か? 市に所縁のある人物について知ることは「政治的活動」か? 町内のゴミ問題を議論することは「政治的活動」か?
また、我々の生活にはよかれあしかれ、意識するとしないとにかかわらず、濃淡の差はあれど、宗教的な事物や作法が潜んでいる。ここにおいて、やはり「宗教的活動」とは何を指すのか? 習字クラブで般若心境を写経することは「宗教的活動」か? 食育講座で「いただきます」と言ったら「宗教的活動」か? 和歴だろうが西暦だろうが特定の暦を使うことは「宗教的活動」か?
これは言葉遊びでも冗談でもない。「政治的活動」や「宗教的活動」はかように広範に解釈されうる曖昧な文言だ。時の政権(現在かもしれないし未来かもしれない)によって恣意的に運用されるおそれがある。
せめて上位法である社会教育法の第23条に沿う範囲のみに権利制限を限定するべきではないか。そのような修正は技術的には可能なはずだ(現行の条例のように上位法を参照すればいい)し、またその程度の修正なら動議も可能ではないだろうか。
まちセン設置条例(案)第7条第2号
まちセン設置条例(案)第7条第2号および関連する条項の内容は次のとおりである。
「所沢市立公民館設置及び管理条例」における規定
現行の条例における公民館の使用の制限に関する条項は「所沢市立公民館設置及び管理条例」の第9条(および第5条)だが、同条にはまちセン条例制定案第7条第2号と同様の規定は存在しない。しかし同時に「法(注:社会教育法)において、使用を制限されたものと認めるとき」は使用を制限できる旨も書かれている。
社会教育法における規定
「社会教育法」第5条第3項は市町村の教育委員会の事務のひとつとして「公民館の設置及び管理に関すること」を行うものと定めている。そして同法第5章(第20条~第42条)は公民館について定めている。
公民館の使用の制限に関する同法の規定で最も近いものは第23条(公民館の運営方針)だろう。同条第1項第2号には「特定の政党」、第2項には「特定の宗教」といった文言があらわれる。
ただし、少なくとも同条第1項第2号は公民館を政党または政治家に利用させることを一般的に禁止するものではない。これは国会における質問で明らかになっている。
パブコメ手続きで示された市の考え方
まちセン設置条例の素案は市のパブコメ手続きが実施されており、その結果が市サイトにて公表されている。ここでも市の考え方の中に「特定の政党」という文言があらわれている。
「活動支援」をどう解釈するかにもよるが、「配慮」するというのなら条文に反映すべきだ(そうする時間も十分にあったはずだ)し、その内容は控えめに言っても国会における質問と答弁の内容を踏まえたものにすべきだろう。
条例(案)に対する態度の考察
今回のまちセン設置条例(案)に対しては、例えば次のような態度がありえるだろう。筆者の態度は太字にした。
原案反対 ― 議案第92号に反対する。
廃案 ― 制定を認めない立場で、執行部には現行の条例を引き続き運用させる。
再考 ― 執行部には第7条第2号を再検討させ、修正させた条例案を次回以降の議会に提出させる。
修正動議 ― 今定例会の本会議にて第7条第2号に関する修正動議を提出し、これに賛成する。
第7条第2号を削除する。
第7条第2号を修正し、法第23条を参照するようにする。文言は現行の条例を踏襲して「社会教育法において、使用を制限されたものと認めるとき。」などとする。
第7条第2号を修正し、法第23条の規定と同等の不許可条件を条例として明記する。
付帯決議 ― 議案第92号に原案どおり賛成するが、第7条第2号に関して何らかの付帯決議をする。
原案賛成 ― 議案第92号に原案どおり賛成する。