タイムディレイションコンボの可能性を探る ― イジンデン デッキ紹介
前書き
先日参加したイジンデンの非公認大会「川越夜戦」は、公開された第3弾カードのプロキシカードを使用した構築戦だった。その中で参加者・ポプノオーさんのコンボデッキが話題を呼んだ。「キーカードを集めると、相手のターンが無くなるデッキ」ということで、いわゆる『ずっと俺のターン』的な発想に、私も驚いて興味が沸いた。コンボの中核となるカードは第3弾の新カード《タイムディレイション》(後述)なので、ここではこのデッキを「タイムディレイションコンボ」と呼ぶことにする。
この記事ではタイムディレイションコンボを解説(と言うほど大それたものでもないが)しつつ、その可能性を探ってみたいと思う。第2弾までのカードはイジンデン公式サイトのカードリストを参照し、第3弾の新カードはイジンデン公式ツイッター (@ijinden100) の画像や、第3弾の体験会に参加されたちょくはちさん (@choku_hachi_918) の写真投稿を参照した。
コンボの核となるカード
タイムディレイション(第3弾カード)
タイムディレイションコンボは、第3弾の新カード《タイムディレイション》を相手のメインフェイズ開始直後に発動させ、相手のターンをほぼまるごと飛ばしてしまうコンボデッキだ。このカードは冥府発動持ちのため、何らかの手段によりそのタイミングで墓地に置く必要がある。また、発動後はウラ向きで魔力ゾーンに置かれるので、これを回収する必要もある。
商館並ぶ人工島(第3弾カード)
相手のメインフェイズに自分が能動的に動くための手段は極めて限られているが、これは第3弾の新カード《商館並ぶ人工島》で実現できる。このカードのルールテキスト「メインフェイズが開始したとき」は自分とも相手とも限定されていないため、相手のメインフェイズが開始したときにも発動できる。元々のカードデザインとしてはおそらく、相手にカードアドバンテージを与える代わりに厄介な緑や航海持ちのイジンを寝かせて無力化する、というのが使い方のひとつとして想定されているのだろう。
安倍晴明型
現在、タイムディレイションコンボには大別して「安倍晴明型」と「孫権張角型」がある。安倍晴明型では、あらかじめ魔力ゾーンに《タイムディレイション》がウラ向きで置かれている状態にしておく。また、後述する《チンギス・ハン》によって戦場に出る分も含めて、自分の戦場のガーディアンが4体以下になるようにしておく。
コンボパーツの詳細に入る前に、コンボ全体の流れを確認しておこう。手順は次のとおりである(項番は図中の丸数字と対応している):
自分のターンのメインフェイズ中に、手札の《チンギス・ハン》を戦場に出す。
《チンギス・ハン》の能力で、魔力ゾーンにウラ向きで置かれている《タイムディレイション》がガーディアンになる。
相手のターンのメインフェイズが開始したとき、《英傑集う大河》で緑を得ている《曹丕》を、《商館並ぶ人工島》の能力で寝かせる。
《曹丕》自身の能力によって得た「寝たとき~」能力で、《安倍晴明》を破壊する。
《安倍晴明》の「破壊されたとき~」能力で、ガーディアンの《タイムディレイション》を墓地に置く。《安倍晴明》は破壊されていない状態になる。
戦場から墓地に置かれた《タイムディレイション》を冥府発動させ、相手のターンを飛ばす。《タイムディレイション》は魔力ゾーンにウラ向きで置かれる。
自分のターンのメインフェイズが開始したとき、《阿弥陀堂》の能力で、戦場の《チンギス・ハン》を手札に戻す。
1に戻る。
コンボパーツは《タイムディレイション》《商館並ぶ人工島》を含めて7枚である。
チンギス・ハン
魔力ゾーンの《タイムディレイション》をガーディアンにするために必要となる。
英傑集う大河
《曹丕》に緑を与えて《商館並ぶ人工島》で寝かせられるようにするために必要となる。
なお、安倍晴明型では、《英傑集う大河》は次のいずれかのカードでも代替できる:
《足利義満》 ― 《曹丕》に航海を与えて《商館並ぶ人工島》で寝かせられるようにする。
《陳寿》― 《安倍晴明》に黄を与えて《曹丕》による「寝たとき~」能力を得られるようにする。これを使用する場合、コンボの手順3で寝かせるイジンは《安倍晴明》になる。
曹丕(第3弾カード)
《商館並ぶ人工島》から連鎖して、《安倍晴明》を破壊するために必要となる。
安倍晴明
自身の破壊から連鎖して、ガーディアンの《タイムディレイション》を墓地に置くために必要となる。1つ目の能力と《曹丕》の能力の兼ね合いによりパワー4000以下である必要があるため、自分の戦場のガーディアンが4体以下でコンボを回さなければならないことに注意せよ。
阿弥陀堂
戦場の《チンギス・ハン》を回収するために必要となる。
リスト例
この記事の冒頭にツイート埋め込みしたポプノオーさんのデッキは安倍晴明型であり、勝利手段には《アイザック・ニュートン》が採用されている。色付与に《英傑集う大河》と《陳寿》を両採用したり、イジンを横に並べてビートダウンもできるように《徳川家光》がいたり、ドロー加速のために《ハリエット・ピーチャー・ストウ》が入っていたりする。ツイート埋め込みを再掲する。
孫権張角型
孫権張角型では、あらかじめ手札に《タイムディレイション》がある状態にしておく。コンボの手順は次のとおり:
相手のターンのメインフェイズが開始したとき、《英傑集う大河》で緑と赤を得ている《孫権》を、《商館並ぶ人工島》の能力で寝かせる。
《孫権》の「自分の戦場の赤のイジンが寝るたび~」能力で、手札の《タイムディレイション》を墓地に置く。
《張角》の能力で、墓地に置かれた《タイムディレイション》を冥府発動させ、相手のターンを飛ばす。《タイムディレイション》は魔力ゾーンにウラ向きで置かれる。
自分のターンのメインフェイズが開始したとき、《阿弥陀堂》の能力で、魔力ゾーンにウラ向きで置かれている《タイムディレイション》を手札に戻す。
1に戻る。
コンボパーツは《タイムディレイション》《商館並ぶ人工島》を含めて6枚である。
英傑集う大河
《孫権》に緑を与えて《商館並ぶ人工島》で寝かせられるようにするため、また赤を与えて「自分の戦場の赤のイジンが寝るたび~」能力を発動させられるようにするために必要となる。
なお、孫権張角型では、《英傑集う大河》は次のカードでも代替できる。
《藤原純友》 ― 赤で航海持ち。これを使用する場合、コンボの手順1で寝かせるイジンは《藤原純友》になる。
孫権
《商館並ぶ人工島》から連鎖して、手札の《タイムディレイション》を墓地に置くために必要となる。
張角
手札から墓地に置かれた《タイムディレイション》を冥府発動させるために必要となる。
阿弥陀堂
魔力ゾーンの《タイムディレイション》を回収するために必要となる。
なお、孫権張角型では、《阿弥陀堂》は次のカードでも代替できる。
《朱舜水》(第3弾カード) ― 自分のターンのメインフェイズが開始したとき、《商館並ぶ人工島》で《朱舜水》を寝かせ、「能力によって自分の戦場のカードが寝たとき~」能力で魔力ゾーンの《タイムディレイション》を回収する。
リスト例
筆者によるリスト案。勝利手段はやはり《アイザック・ニュートン》である。ハイケイが多めなので、ドロー加速のために《ハリエット・ピーチャー・ストウ》を採用している。
また、こちらのリスト案はコンボを無限に回すのではなく、自分が《アイザック・ニュートン》を出した次の相手のターンだけ発動させることを狙ったものである。回収のための《阿弥陀堂》が不要になるため、黄単に寄せたタッチ緑で考えてみた。黄単義政ニュートンのフィニッシュを確実にするためにコンボを1回だけ利用するデッキと捉えるのがいいだろう。
可能性を探る
一人回ししてみた所感
コンボを無限に回す安倍晴明型や孫権張角型を組んで一人回しして感じたのは、パーツがなかなか揃わないことだ。6~7枚は決して多すぎる枚数ではないと思うが、次の要因がそうさせているように思える。
部分的・段階的にではなく、全て揃えてやっとコンボが始められる
レベルが高めのイジン(レベル5のチンギスや孫権)が必要になる
ドロー加速はあっても山札やガーディアンを引き切る手段がない
また、各コンボパーツ自体のカードパワーがあまり高くない点もつらく、揃えるまでの過程で相手の攻撃を受けきれないまま負けてしまうおそれがある。特に《タイムディレイション》はコンボを決めるとき以外にはほとんど役に立たないにもかかわらず、墓地から回収する手段がないのでどうしても2枚投入したくなり、デッキを圧迫してしまいがちである。
無限コンボを早期に決めるためにはパーツをもっと少なくしたいが、今のところ適したカードはなさそうに見えるので、第3弾の未公開カードに期待したい。都合よく想像するなら、寝たときに手札を墓地に置ける緑のイジンがいれば、《英傑集う大河》と《孫権》の役割を一手に引き受けられるので、コンボパーツが減らせて嬉しい。その分だけ《メロウ》などの除去を投入できる余地が生まれて、中盤をしのげる可能性を高められる。
勝利手段にはニュートンの他に《三層の舎利殿》を利用したライブラリーアウトも考えられる。デッキをハイケイに寄せられるのでストウをより強く使えるようになるだろう。相手が舎利殿を出していたとしても、エンドフェイズが飛ばされていて発動しないため、キッチリと決め切れる。ただし相手がニュートンを出している場合だけは敗北パターンなので、これだけは諦めるしかない。[5月16日追記]《商館並ぶ人工島》や《孫権》によりドローしてしまうため、《三層の舎利殿》によるライブラリーアウト戦略は怪しそうだと気づいた。安倍晴明型なら2枚、孫権張角型なら3枚、山札に必要になる。[追記ここまで]
現時点で公開されているカードで組むなら、無限コンボではなくなるのでインパクトは薄れてしまうが、《阿弥陀堂》なしの黄タッチ緑のリストが現実的に思える。中盤に《劉備》や《足利義政》で一気にドロー加速してコンボパーツを揃えつつ手札を増やすことができるので、噛み合いが良いように感じた。
その他の候補カード
ホムンクルス(第3弾カード) ― 5色付与。大河や陳寿の代替として。一時的ながらもレベル条件が下がる点に難あり。
ジャンヌ・ダルク ― ETBで切削3、破壊時に1ディスカード。人工島→曹丕能力による破壊から連鎖させて手札のTDを捨てて張角能力で冥府発動させる流れを作れる。墓地からのジャンヌ回収が課題。
ミケランジェロ ― TDを墓地に落とせさえすれば、これによりガーディアンとして回収できる。TDをいかに落とすかが課題。
李成桂(第3弾カード) ― TDを墓地に落とせさえすれば、墓地→山札トップ→ドローという回収の流れを作れる。やはりTDをいかに落とすかが課題。
ライセンス表示
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graveyard by Daniil Churakov from Noun Project (CC BY 3.0)
Hand of Five Cards by Daniel Solis from Noun Project (CC BY 3.0)
clouded orb by Imogen Oh from Noun Project (CC BY 3.0)