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ねぇ マリコ


2022/11/09 映画観賞。
『マイ・ブロークン・マリコ』を、
大好きなあの子とふたりで観に行った。
今回は作品の感想ともあの子への思いともどちらともつかない文章をここに残そうと思う。

私はシイノじゃなくてよかった。
あなたがマリコじゃなくてよかった。

シイノが話す言葉のひとつひとつが、あまりにも私から出てくる感情そのままで、だから私はとても怖かった。

わかるからこそ、痛いほど共感してしまうからこそ、「泣いてはいけない」と思った。共感してはいけない。そう思いながら、ぼろぼろに泣いた。

死なないで、お願い。
私の大好きなあなた、あなたはマリコじゃないから、死なないで。


私のこころがシイノに共感するたび、
わかる、苦しい、痛い、つらい、と思うたびに、
隣のあの子がマリコに近づいてしまうんじゃないかと思って怖かった。生きてずっとそばにいてほしい。

実際の私達はもちろん、シイノとマリコよりだいぶんマイルドでリアルで、どうしようもない。
(まぁ私達は架空の人物ではないから、リアルなのは当たり前だ)


私はシイノほど優しくもなく、強くもなく、クールでハードボイルドな彼女と違い、どちらかというとヘラヘラとしていて甘ったれだ。家族間の関係も良好、タバコなんて吸ったこともない、ただのサブカル好き、それが私。

あの子だってマリコより全然壊れてはいなくて、あの子の彼氏は暴力はふるわないし、家庭環境だってマリコよりマシ。

私達の関係だってマリコとシイノの年季の入った深くて強い絆…とかでは全然なくて、

大学の隅で出会って、そこからなんとなく一緒にいるような、きっとお互いに唯一無二なんかではないはずの、
少なくともそんなフリをしている、そんな二人。それが私達。


だから違う。違うから死なない。
私達はこれからもずっと、一緒に笑っていられる。ねぇ、そうだよね?


だって怖いのだ。
「ずっと一緒にいたい」「大好きだよ」
そのどうしようもなく甘ったるい言葉を受けとって、
「彼氏かよ」って笑ってしまうような、その気持ちに見覚えがある。

「あんたにはどうだか知らないけど、私にはあんたしかいなかった」
"大好き"って言葉の一つも返せやしないくせに、
自分は一人でもなんとかなるみたいな顔をあの子の前でするくせに、
本当は私のほうがあの子がいないとなんにも無くなってしまうと感じてる、その感触を知っている。

「私なんかを好きになってくれる人」
あんたには私がいるのに、どうして、そんなに寂しいんだって、何度思って何度こころの中で叫んだか、
男に振り回されるあの子の行動にびっくりしたり諦めたりして、でも気まぐれに戻ってくるのを笑って受け入れるあのぬるい空気に何度出会ったか、

「どんなに心から心配してみせたって、どうしようもならないところにあの子はいる」って、
何度自分の無力さに悲しくなったか、
どうしようもないと分かっていても
「なんでそんなことするんだよ!ちょっと考えれば分かるでしょ!?」と怒鳴ってしまう、まぁ私の場合は怒鳴れなくてひとり泣いてしまうのだけれども。

その全てがあまりにも馴染みのある感情で情景で、
だからこそこれからの顛末まで一緒になってしまうんじゃないかって怖い。



怖いという感情の原因はそれだけじゃない。

そう、それだけじゃないんだ。

私の馴染みある感情の数々を、私は『第三者が作った作品』として、映画館で浴びてしまった。
あの子と一緒に浴びてしまった。

私があの子に対して抱く感情の数々は
それを見るまでは私だけのものだったはずなのに、
「映画でみたようなこと言ってるな」と思われてしまうこと、自分自身が思ってしまうことが怖い。

一緒にみないほうがいいかもと思いながら観に行ったけど、やっぱり一緒に観に行かないほうがよかったのかもしれない。

そんなことを考えながら、
でもたしかに「一緒に見てよかった」と思えるのだからこの作品は私達にとってきっと大切だ。


「あんたの周りのやつらがこぞってあんたに自分の弱さを押し付けたんだよ」
だからあんたは悪くない、とシイノはマリコを抱きしめる。

私はその台詞をきいて、『私があの子に言いたかった言葉だ』と心の底から思った。

私の中には確実にない言葉。言語化できなかった、あの子に伝えたかったこと。

そう、あなたは悪くない。きっとそうだから。


そしてシイノは言う。
「マリコ、あんた変わんない。
キラキラして、つかめなくて、風に流されて」

「そして、重力に逆らえない」

私の中のあの子そのままを言い当てられた、とその言葉をみて思った。


私の中には無い語彙で、大好きなあの子を綺麗に表現したその言葉をきいて、私は

あの子がこの言葉を自分へのものだと思ってくれたらいいなと心から願った。

私は綺麗じゃないし捻くれてて、ほんとどうしようもないけれど、
あなたは私にとっていつも、キラキラ、だから。


私が自分で見つけてあの子に伝えられたら良かった言葉たち。でも見つけられなかったし、もし見つけても私には言えなかったと思う、だって私は映画じゃなくて現実だから。

私は、架空の世界にいる人間よりも何倍もかっこ悪くてそのくせカッコつけだから、きっと照れて言えなかったよ、こんなにきれいな言葉は。

だからやっぱり、一緒にみれて良かった。

マリコとは同じだけど違うあなたと一緒に、
この作品をみれて良かった。

私達は現実だから、
架空の人物とは違って都合よく生きよう。

これからも一緒に、歩いていけますよう。


大好きなあなたへ 私より

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