金型。
プラスチック射出成形金型を作っていました。
主力なものは、写真にあるようなボールペンなどです。
一本100円のボールペン。
例えば、キャップだけ作るとして、色の変化している部分はそれぞれ別パーツの金型として組み立てているとすると
透明と、赤や緑の色の表示部分。の2色。
つまり2つの金型を使って作った後に誰かがはめ込む作業をしている、という事になります。
今でこそ知らないかもしれませんが、昔はボールペン組み立て内職。一本3円とか。そういうお仕事を主婦の人がしていたりしましたね。
金型というもの、実はそんなに安いものではありません。
細かい仕様は省きますが、上の2つの金型の注文をセットで同時に受けたとして
2つで1000万円以上になる金型を作っていたりします。
それでも大手さんはその値段で注文をします。
なぜか。
それは、たくさん作るからに他なりません。
1000万円の金型から1000個作る→1個1万円
1000万円の金型から10万個作る→1個100円
1000万円の金型から200万個作る→1個5円
全体で100円で売っていて、その一部の部品の値段なので
どの程度の金額設定にしないとダメなのか、なんとなく分かると思います。
1日に生産する量は、数千個になったりします。
昔は日本はこれが主力な生産現場として国内外で活躍していました。
なぜなら、10万回以上使える金型は、そう簡単に作れませんでした。
海外で作る金型は、1万回使うと壊れてしまうようなものだったからです。
どんなに海外で生産拠点を置いても、正直言って一つ言えることがあります。
「絶対に日本のレベルに、どれだけお金を海外に投資しても同じ品質の金型は出来上がりません」
これは自信を持って言えます。
その理由としては、「過剰品質」だったからです。
「お客さんの仕様書の要求レベルはこのあたりだけど、あとあと文句言われるのも面倒だし、文句言えないレベルに仕上げておくか。」
それが日本の金型業界の人が考えることだからです。
海外では、「仕様書通りに作ったのにどうして文句言うの?」となります。
この仕事をする人の気持ちの圧倒的な差が、お金ではどうしようも出来ないものです。
それゆえ、日本のものづくりの人達は、それなりの自信を持っています。
そして、それは決して、過大評価しているわけでなく
最低ラインの仕事で終わらせられるものを、みんなの笑顔のために自分の出来る範囲で品質向上を心掛けているからに他なりません。
具体的に言うと、その寸法精度は0.002〜5mmです。
そしてその寸法精度はどう管理しているのかと言うと、気持ちと経験です。
ちなみにそれは、現在ある光学測定器で確認が出来るような数値ではありません。
測定で使うパウダーが0.002mmだったりします。
PCでは誤差として修正をかけられてしまう範囲の仕上げになります。
でも実際のところ、本当にその品質が必要かと問われれば、
正直必要ないかな、と思うところもあります。
だけれど、昔の良品をチェックしている大手の品質管理の人からすれば、
最近の金型の出来上がりはイマイチだし、日本にこだわる必要もないかもな、と言う気持ちも生まれてきます。
ただ、その金型を作り上げる人達の生活はどうなったのかと言うと
今のフリーエンジニアのような。
昔は、本当に今のITのフリーエンジニアのような生活を、金型やっている人はしていました。
その人達は今は、一般サラリーマンのような、むしろ給与水準は低めの金型の世界で、今も仕事をし続けています。
そのくらいの変化がありました。
金型作れれば、日本どこへ行ったって食べていける。
昔はそんな時代でした。
今は昔作った金型のメンテナンスをしてあげたり、もちろん新作もありますが
昔ながらの作り方で、中途半端な仕事は自分の人生の傷になるような気持ちで
今でも一生懸命作っているような。
そんな世界です。
でもきっとそれは、どの業種でも同じなのかもしれません。
そこからどう変わっていくかを考えたときに、気付いたことがあります。
それはまた次の記事で書きますね。
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